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リアルとテクノロジーの融合で生活をより豊かに

今回は「J-Startup NIIGATA(以下、Jスタ新潟)」の選定企業である、株式会社Gugenkaの特集記事をお届けします。

Jスタ新潟
地域に根ざしたイノベーティブなスタートアップ企業を、新潟県と関東経済産業局等が選定。公的機関と民間企業が連携して集中的に支援することで、選定企業の飛躍的な成長と、新潟のスタートアップエコシステムの強化を目指す取り組み。
▼設立趣旨などについては、下記HPもご覧ください。


株式会社Gugenka 代表取締役CEO 三上昌史さん

<プロフィール>
三上 昌史(みかみ まさふみ)
1976年生まれ新潟市西区出身。長岡短期大学を卒業後、フリーペーパー制作などを手がけるベンチャー企業に入社。デザイン広告業務を経験し、2005年に起業。映画・アニメ業界を中心としたWebプロモーション事業を手がける、株式会社シーエスレポーターズを立ち上げる。2021年には事業のブランド名であった"Gugenka"に社名を変更し、XR技術を用いてリアルとアニメコンテンツの融合に注力する。また、XRプロデューサーとして初音ミク公式バーチャルテーマパークやサンリオ初のバーチャル音楽フェスなど、数多くのプロジェクトに参加。これらの経験を活かし、2023年から新潟で"初音ミク夜空プロジェクト"を企画・運営。花火や飲食店・アーティストなどとタイアップし、XR技術をより身近に感じてもらえるよう取り組んでいる。


チャレンジを重ねてたどり着いたXR技術での挑戦

ーー株式会社Gugenkaはどのような会社なのでしょうか?
アニメキャラクターのIP(知的財産)を軸に最新のXR技術を活用し、これまで画面の中にしか映っていなかったものを立体物として空間に表示するサービスを提供しています。具体的にはキャラクターのデジタルフィギュアの販売や、キャラクターを使ったメタバース上でのイベント・リアルイベントの開催です。技術的面はもちろんですが、イベントの企画から運営までほぼすべて自社で行っています。もともとは株式会社シーエスレポーターズという社名でWeb制作を行う会社としてスタートし、SNSマーケティングを含めたWebプロモーション事業を展開していました。その中で東京進出をきっかけに、海外ドラマや映画のプロモーションをお任せいただけるようになり、新潟を拠点としながら全国での仕事が増えていきました。今では新潟の本社の他に、東京、マニラに拠点を構えています。

※XR
「Extended Reality(エクステンデッド・リアリティ)」の略であり、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、複合現実(MR)を含む技術のことを指す。

ーーメイン事業がなぜ、WebからXR技術関連へシフトしていったのでしょうか?
プロモーションに関わる過程で、最新技術の活用にチャレンジしたことがきっかけでした。そのひとつがAR技術です。当時はドイツのJunaio(ジュナイオ)というAR技術を利用したサービスを展開していたのですが、会社としてARやVRに特化したブランドを作ろうと、現在の社名である"Gugenka"というチームを結成しました。このブランドが大きく成長したため、2021年に社名をこのブランド名に変更し、現在に至ります。

※Junaio(ジュナイオ)
ドイツの企業「Metaio」によって開発された拡張現実(AR)プラットフォーム。Junaioはスマートフォンやタブレットのカメラなどを使い、現実世界にデジタル情報やコンテンツを重ねて表示することができるアプリ。2015年にMetaioはAppleに買収され、その後Junaioはサービスを終了。AppleはMetaioの技術を活用し、のちに「ARKit」というAR開発プラットフォームをリリース。

ーー事業の成長はもちろんですが、ブランド名を社名にするほどの魅力がXR技術にあったということなのでしょうか?
XR技術は革命的な技術だと確信しています。Webデザインを通してビジネスを行ってきた中で、データは必ず画面の中で見てきました。身近にあるテレビやスマートフォン、タブレットも全て画面内に表示されています。しかし、XR技術を利用することでこれまで画面の中にあったものを空間に表示することができます。最新の機種では実際に触れるまでそれがデジタルなのかリアルなのかはわからないほどです。XR技術を用いることでデジタルとリアルが融合する世界を作り上げ、私たちの生活をより便利に、そして豊かに変化させられると考えています。

ーー具体的にどのような利便性が考えられますか?
例えば、Amazonで取り入れられていますが、欲しい家具を実際の空間に立体的に配置することで、大きさや雰囲気を購入前に確認することができます。
また、実際に同じ空間にいると感じられるデジタルペットも、わかりやすい例だと思います。同じように、我々が提供できるのは、好きなアニメキャラクターを飾ったり、同じ空間でアニメキャラクターが動いてくれたり、今までできなかった体験です。自分の生活空間にエンターテインメントが入り込むのです。

上司と部下という関係ではなく、同じ目標に向かう仲間

ーー三上さんが起業するまでの経緯を教えてください。
もともとエンターテインメントに興味があり、さらには新たなものを生み出すクリエイティブな仕事をしたいという想いが起業につながっています。学生の頃はバンドを結成して一からイベントを企画・運営するなど、様々なことにチャレンジしていました。その後、フリーペーパーやWebデザインを手掛けるベンチャー企業で経験を積み、前身であるシーエスレポーターズを立ち上げました。

ーー今ではおよそ80人の社員を抱える会社に成長していますが、経営者として意識していることはありますか?
「経営を意識した」というよりも、新しくて面白いことを追求したらビジネスとして成立し、今があると思っています。自分が経営者かどうかよりも、主体性を持って取り組めば何をしていても楽しいですし、人も集まってきてくれるのではないでしょうか。これだけの仲間が増えたことはとてもありがたいです。また、「社員を信頼して任せる」「必要以上に関わらない」ということを意識しています。私は自分が現場に出たいという気持ちが強く、可能であれば全てのプロジェクトに参加して自分もどんどんアイディアを出していきたいというのが本音です。しかし、経営者としてやるべきことや求められることもあるため、そこはグッとこらえてプロフェッショナルである社員に任せています。それと同時に、皆がきちんと同じ方向を向いているかどうかも気をつけています。会社規模が大きくなってきても「こまめに私の考えや意図を伝えて、理解を深める」ということを繰り返すことにより、会社全体で同じ方向に向かって突き進んでいくことができると考えています。

ーー業務が円滑に進むよう、御社ならではの取り組みはありますか?
実は、当社では役員の4人以外はあえて役職を設けていません。理由としては、年齢やスキルで上下関係を決めるのではなく、同じマインドかどうかを重視しようと考えているからです。そのため、役職はありませんが、皆を引っ張っていく存在として「隊長」というポジションを設けています。会社の役職とは異なり、その時の状況によってフレキシブルに任命していきます。我々の業界は日々技術が進化し、求められるスキルも突然変わることがあります。「年齢を重ねている人や在職年数が長い人=最もスキルがある人」ではないのが特徴です。年齢やスキルよりも同じマインドや方向性を重視して「隊長」を任せることで、円滑に仕事が進むよう取り組んでいます。この制度も会社の規模や状況により進化させていくつもりです。

Jスタ新潟の選定をきっかけに、新潟との結びつきを強めたい

ーーJスタ新潟に選定されたことは、どのような形で活かされていますか?
周りの変化としては、弊社を評価していただく1つの指標として紹介いただくことが多くなっています。Jスタブランドは新潟だけではありませんので、県外でもその評価は高いと思います。一方、会社としては新潟に本社があるものの、国内外で事業を展開しているため、これを機に新潟との結びつきをより一層強めていきたいと考えています。

ーー結びつきとは具体的にはどのようなことでしょうか?
まずはJスタ認定企業の皆さんと繋がり、新たなクリエイティブにチャレンジしていきたいと考えています。出会いというのは大きな刺激になるので非常に楽しみです。
また、今回のインタビューのように新潟の企業として話をする機会が今後も増えてくるのではないかと思います。ニュースや記事などのメディアを通して、地元である新潟の皆さんに我々の事業を知っていただける大きなきっかけになると期待しています。

自分たちのクリエイティブを通して新潟と繋がりたい

ーー新潟では2023年から初音ミクさんとのコラボイベントを主催されていますが、これはどのような経緯から始まったのでしょうか?
本社が新潟にあるということもあり、社員が働いている地域で、「自分たちが作り上げたものを発表できる場を何か作れないか」と考え始めたのがきっかけです。新潟県外から来ている仲間もいるため、地域の皆さんに自分たちの仕事を知っていただき、喜びややりがいを感じて欲しかったということもあります。そのような中で、北海道で開催されていた初音ミクさんのイベントに感銘を受け、地域の企業とも協力しながら、盛り上がるイベントを新潟で企画しようと動き始めました。

ーー初音ミクさんと新潟花火のコラボを実際に拝見しましたが、正直なところ「なぜ新潟で初音ミク?」と衝撃を受けたのを覚えています。
「なぜ?」と思っていただけたのであれば嬉しいです。国内外の仕事で培った技術やネットワークを新潟の地と結びつけることができるのは、我々だからこそだと思っています。2024年も「初音ミク夜空プログラム」と題し、3日間(8/9〜8/11)にわたって様々な催しが行われます。新潟花火とのコラボレーションでは、音楽に合わせて初音ミクさんが可憐に舞う姿を堪能できます。さらに、地元企業のご協力により、オリジナルグッズやポッポ焼きなどとのコラボメニュー販売などが行われ、イベントの規模もさらに拡大しています。
(※本インタビューは「初音ミク夜空プログラム」前に取材)

ーー初音ミクさんを通して新潟の魅力を感じてもらうことができそうですね。
新潟といえば漫画・アニメの町でもありますから、「新潟」で開催する初音ミクさんのイベントの意味合いも大きいと思います。また、(初音ミクさんの)ファンの方は国内だけではなく海外にもいらっしゃるので、イベントを開催することで新潟への経済効果も期待しています。今後も継続して開催することでより多くの企業や団体、地域の皆さんに興味を持っていただき、「ITコラボ」効果で新潟をさらに盛り上げていきたいと考えています。

オリジナルのプラットフォームで利便性とエンターテインメントを融合させたい

ーー三上さんが考える、(Gugenkaの)今後の展望を教えてください。
我々の目標は、アプリケーションを常に使っていただけるサービスを提供することです。私たちがこれから作り上げていきたいのは、さまざまなクリエイターが自分のコンテンツをアップロードして、今まで2Dだったものを3Dで空間に置ける、まるで魔法のようなプラットフォームです。こういったプラットフォームを考える方は多いと思いますが、そこに我々の強みであるキャラクターIP(知的財産)を組み合わせた唯一無二のプラットフォームを作りたいと考えています。
例えば、映画を3Dで空間に表示するだけでなく、好きなアニメキャラクターと一緒に映画鑑賞したり、アクションをしたりすることです。また、タイマーを利用する際には、時間になったらアニメキャラクターが教えてくれるなど、利便性とエンターテインメントの融合したサービスをこれから作っていきたいと考えています。

大切なのは、やりたいことを見極め、発信する力

ーーこれから起業される方に向けてメッセージをお願いします。
一番大切なことは、「自分は何がやりたいか」をよく考えることだと思います。現在は副業や業務委託など、昔と比べて選択肢がとても多い世の中になっているため、まずはさまざまな選択肢を考えてみてください。考えた結果、必要なら「起業する」という流れが良いのではないかと思います。

ーーやりたいことを貫いていくために何を大切にしていくと良いのでしょうか?
「発信」がカギを握っていると思います。どの業界も「SNSでの発信」を利用していますし、その威力は凄まじいものです。そのため、まずは発信することで自分の存在を見つけてもらい、自分のやりたいことに賛同してくれる人とのつながりを探してみてください。

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