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田舎体験事業を首都圏の方へ。仕事も子育ても充実の新潟でIターン創業。

今回はU・Iターン創業応援事業で採択され、新潟でIターン創業をした株式会社いろむすび(以下、いろむすび)代表取締役の古林拓也さんにお話を伺いました。京都府で生まれ育ち、学生時代まで過ごされた古林さんは、大学院卒業後、東京の大手情報通信企業に就職されています。そんな古林さんが「なぜ新潟にIターンをし、株式会社いろむすびを創業されたのか」詳しくお聞きしてきました。

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株式会社いろむすび代表取締役 古林 拓也さん

古林 拓也(ふるばやし たくや)
京都府出身、株式会社いろむすび代表取締役
同志社大学大学院工学研究科卒業、大手情報通信企業へ入社し法人向け国際サービスの提供に従事。妻方の実家への帰省で触れた豊かな「食」と「体験」が原風景となり、地元に眠る地域資源の魅力を伝えるべく2018年4月新潟県村上市にて地域商社株式会社いろむすびを設立。にいがた産業創造機構主催「新潟起業チャレンジ」優秀賞。修士(工学)、経営学修士(専門職)MBA、米国PMP®︎資格取得。特定非営利活動法人都岐沙羅パートナーズセンター理事、特定非営利活動法人村上ohanaネット理事、あらかわ地区まちづくり協議会理事、越後村上物産会理事、村上岩船定住自立圏共生ビジョン審議会委員。

株式会社いろむすびとは

ーーどんな事業をしていますか?
いろむすびが展開する事業は、地域商社事業、田舎体験型旅館事業、場づくり事業の三本柱です。一つ目の地域商社事業では、地域の山菜・農産物の収穫・加工・販売を行い、二つ目の田舎体験旅館事業では、実際に村上で山菜の収穫やお料理ができる古民家宿の運営を行っています。地域の持続性、地元の素晴らしいものを活かした事業を通じて社会課題の解決を目指しています。

そして三つ目の場づくり事業では、上記の二事業で現場から得た知見や実績を活かし、各地の地域や会社・団体様に地域や組織が持続可能になるためのスキル・ノウハウを提供することで、ローカル人材の育成と支援を行っています。

株式会社いろむすび


新潟でIターン起業したワケ

ーー地方での起業に興味を持ったきっかけはなんですか?
もともとは、新卒で東京の大手情報通信企業に入社し、会社勤めをしていましたが、あるきっかけから首都圏の一極集中ではなく、社会全体がローカルで活躍する人が増える分散型社会になって欲しいと思うようになりました。

その中で、自分はどんな立ち位置から課題解決しようかと考えた際に、「いつかは自分自身が地域で活躍する、ロールモデルとなるようなプレイヤーになりたい」と思い、起業時期を模索し始めました。

ーーなんで分散型社会に課題意識を持ったんですか?
東京で働いていた2011年の東日本大震災時に、帰宅難民を経験したことがきっかけです。大きな出来事、特に災害時の都市機能のもろさを実感し、このままの一極集中社会では自分自身や大切な家族のリスク回避ができないと思い、分散型社会解決に向けた課題意識が高まりました。

ーー首都圏で感じた社会課題に対する意識から、Iターン起業を選んだんですね。
そうですね。また、結婚して子育てを始めたことでますますその想いが強くなりました。首都圏で働く人は、仕事や子育てに精一杯で、歯を食いしばって生きてる人が非常に多いです。

実際に私たちも待機児童問題に悩まされました。親は共働きになるので、働きながら育てるのが難しい上に、その分稼いだお金も高い家賃や保育費に消えていきます。

人間らしい生活を送り、心豊かに子育てをするために移住を決めました。

ーー結婚や子育てなどのライフスタイルの変化も影響していたんですね。
そうなんです。実際に移住してみて感じるのは、新潟は生活環境が本当に素晴らしいということです。地域資源との接点を持ちながら暮らし、かつ子育てもできます。

また、首都圏に比べて競争に対する考え方が違いますね。東京では子育てに関しても、良い意味でも悪い意味でも常に競争心がある場所でした。

囲炉裏を囲んで話す古林さん

事業づくりについて

ーー起業しようと踏み出せたきっかけはどのようなものでしたか?
地方での起業を視野に入れ始めた時に、たまたまにいがた産業創造機構(以下:NICO)で当時は募集があった「新潟起業チャレンジ」というUIターン創業の募集のFacebookプロモーションが流れてきたんです。

当時、悶々と起業について悩んでいて、「これは起業家がどんなことを考えているのか知れる良い機会になる」と思い、思い切って応募したんです。そうして合宿やビジコンに参加することからスタートしました。

ーー地域商社事業で起業する決め手はなんだったのでしょうか?
現状を変えるために、まずは働きながら経営の大学院に通い、MBA(経営学修士)の取得を目指して勉学に励んでいて、いずれどこかしらの地方で働きたいと思っていたそんなタイミングで、たまたま山菜歴40年以上の名人(新潟出身の妻の叔母にあたる)に出会ったことが決め手だったと思います。

名人の叔母は、その当時10年間、個人事業として山菜屋さんをやっていました。「事業を始めるなら一緒にやらないか」と声をかけられ、叔母の持っていた「山菜事業の拡大」と、その事業をさらに深めた「空き家を活用した宿づくり」で実際に事業を開始しました

ーー創業する際に活用したものは何かありますか?
活用したものとしては補助金があります。そのほとんどは、いろむすびの宿の改修費用に当てました。古くなっていた一軒家をリフォームし、「帰省体験ができる田舎風の宿」にしました。他にも、ロゴマークのデザインやブランディング費用にも活用しています。

また、NICOの担当者さんと接点を持ちながらフィードバックをもらえたことで、新潟にIターンしたばかりの私と新潟県の色々な方を繋いでもらえました。

古民家を改装したいろむすびの宿

Iターン創業のメリット

ーーIターンしてきて良かったのはどんな点でしょうか?
一番はやはり、「自分らしい生き方ができる」ということでしょうか。首都圏で働いている時は、日々の暮らしに一杯一杯でしたが、今は仕事=自分自身のような働き方で、ワークとライフの境目なく仕事と生活が融合し、家族との時間も増え、質の高い生活が送れています。


ーー逆に、首都圏にいた経験が今に活きていることはありますか?
首都圏の人が抱える生活面での課題を客観的に見て、事業に活かすことができました。

例えば、いろむすびの山菜を使った事業は、自身が首都圏にいた際に陥ったコンビニなどの簡易的で生活維持のための食体験から着想を得ています。東京にいた時は、忙しさがゆえに「食事という行為が単に作業になってしまい、季節や生活のリズムを感じられない」という状態に陥っていて、そういった経験が今の事業を形作ってるんです。

ーー仕事のスキル面ではどうでしょうか?
前職で培った、ITシステム開発のPM(プロジェクトマネージャー)のスキルも役に立ちました。大企業での仕事だったので、きっちりとシステムを作り上げ、定められた期日までに現場に落とし込むスケジュール感や、東京の大手だからこそ培えた能力が様々あります。

これを地域の中で活かす際、沢山の関係者と関わりながらコラボレーションする力として、またきちんと期日までにアウトプットする力として、今の仕事に役立っていると思います。

新潟という土地ならではのメリット
ーー新潟でこの事業をするメリットは?
地域商社を展開するにあたり、新潟は圧倒的に地の利が良いです。「資源が素晴らしい・文化がある・優れたものが培われている」点は、何度も言いますが良い所です。

しかし、「新潟県はアピール下手」だと揶揄されることがあるほど、控えめな県民性を持っている印象です。この素晴らしさは県外には知られず、身内で消費されてしまっているように思います。新潟の山菜もそういった例の一つで、もっと県外の方にも届けたい。

ーー地元だけではなく、首都圏の方にこそ特に届いて欲しいということですね。
そうですね。いろむすびの行う事業は、首都圏の方向けで「欠損してしまった感覚や人間性を回復することによって、心を豊かにして欲しいと思い、立ち上げた事業」です。

この事業は、発信する側も、購入し体験する受け手側も良いことばかりだと考えています。私自身、発信を通じて地域と関わりながら、新潟の魅力を日々再発見する日々ですし、首都圏の方には山菜を楽しんでもらうことを通し、心が豊かになる体験を届けられています。

首都圏からの注文も多い山菜のお惣菜


 
ーー他にも新潟で起業するメリットを感じたことはありますか?
NICOが開催していた「新潟起業チャレンジ」への参加がきっかけとなり、Iターンした私も新潟の起業家コミュニティに入れたことです。このコミュニティでは、創業後にも助け合える起業家仲間が出来ました。

メリットとして、暮らしやすいというのは大前提です。その他にも、居心地の良さ・貢献できる伸び代・ビジョンや方向性への共感の三つが新潟には揃っていました。この三要素がそろった新潟は起業家が事業を成長させるのに、非常に魅力的な土地です。

ーーそう感じるのはどのような時ですか?
Iターンして5年ほど経ちましたが、新潟はどんどん共感や刺激が生まれる地域になっていると実感しています。新潟では魅力的な起業家と意見交換する場所や機会が築かれているため、「この人とやりたい、ここで活躍したい」と思える場の引力のようなものが、生まれてきているように感じますね。

村上名物 寒風干しの塩引き鮭のぬいぐるみ
村上の自然を感じられる昔懐かしい畳のお部屋

今後の展望について

ーー今後、新潟でどんな挑戦をしていきたいですか?
会社の展望としては、急成長ではなく質を深めて自然体に成長させていくことで、良質な事業を作っていきたいと考えています。販売の方面に関して言えば、産直セレクトショップKITAMAE様や新潟伊勢丹様のカタログギフト、上質な催事など、様々な方に届ける販路ができているので、今後もさらに伸ばしていきます。

これからも軸を固めて、深めることを大事にし、質の良い商品を作っていきます。そして、ゆくゆくは地域の観光ツーリズムにも横展開していきたいと考えています。新しい価値づくりや新しい旅の形の実証実験、デジタルとのハイブリッドなど、ローカル性の付加価値が高い展開をしていきたいですね。 

ーー起業時を振り返っていただきましたが、いま起業したい人へのアドバイスなどはありますか?
人生かけて、想いかけて取り組めばやりがいと喜びがあります。ただ、起業はもちろん大変ですし、苦難の道です。

気軽にやってみてくださいというよりは、しっかり自分と向き合って、やり切ることを大切にして欲しいですね。ノリでやってもうまくいきませんが、大変なことがあっても、覚悟をもって言い訳せずにやってみれば乗り越えられます。覚悟さえあれば大丈夫です!

ーー最後に、一言お願いします!
私自身、東京での辛い思いが原体験となり、現在の事業を立ち上げました。新潟県の村上に移住したことで、家族と共に、人間らしく働きながら楽しい暮らしを送ることが出来ています。

ぜひ、いろむすびの宿にお越しいただき、体の中に季節が巡る体験をお楽しみください。
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