地域の課題を、地域にいながら解決し続けることで価値を創造する 〜Jスタ新潟・起業家インタビュー② 株式会社クーネルワーク〜
「J-Startup NIIGATA(以下、Jスタ新潟)」は、地域に根ざしたイノベーティブなスタートアップ企業を新潟県と関東経済産業局等が選定し、公的機関と民間企業が連携して集中的に支援することで、選定企業の飛躍的な成長と、新潟のスタートアップエコシステムの強化を目指す取り組みです。
Jスタ新潟には現在20社が選定されており、その事業内容もメーカー・農業分野・Webサービスなど多種多様です。
①成長性
②新規性・独創性
③優位性
④社会性
以上の4つの観点から選定された、新潟から全国・世界へはばたくロールモデルとなるスタートアップ企業で構成されています。
▼設立趣旨などについては、こちらの記事もぜひご覧ください。
今回は、注目のJスタ新潟認定企業の中から、株式会社クーネルワーク(以下、クーネルワーク)で取締役を務める坂井 俊さんのインタビューをお届けします!
(坂井さんは新潟市出身:写真右)
株式会社クーネルワークについて
クーネルワークは、2016年1月に設立した新潟発のデザイン&マーケティング企業です。産直ECサイトである「新潟直送計画」、注文住宅のWebプラットフォーム「MOCK HOUSE(モックハウス)」を主力としたWebプラットフォームサービスの開発・運営のほか、Web・デザイン・PR・SNSなどのソリューションワークと幅広い事業領域を手掛けています。
▼クーネルワークのコーポレートサイト
事業で心がけているのは“点と面の戦略”
ーーJスタ新潟に選定されているWebソリューション系の企業の中でも、クーネルワークは「地域」というマーケットに特化しているように感じます。どういった事業構想をお持ちなのでしょうか。
弊社は「点と面の戦略」を常に意識しています。具体的には、いわゆるクライアントワークやソリューションワークのような「点」としてのWebソリューション提供だけではなく、新潟直送計画やモックハウスのように、プラットフォームを構築した「面」での事業展開をしています。
プラットフォームでは、数多くの地域の生産者さんや企業にECやWebを通じた販路の拡大という方法を提供しています。
Webに詳しくない生産者や中小企業の方でも参加しやすい直感的なプラットフォームを構築することで、現在では771社(新潟県721社、山形県50社)もの方々にパートナーとして登録していただき、プラットフォーム上で商品を販売していただいております。
オンライン上でのユーザーニーズをしっかりと捉えることで、より高い付加価値を商材に付与できる仕組みを構築できていると自負しています。
数多くのパートナーに恵まれることは、プラットフォームのSEO対策としても有効です。例えば、直送計画のサイトは「新潟 食材名」のキーワードで検索結果の上位に表示されます。
「面の戦略」を通じパートナーとなった生産者さんや企業に対して、商材のリブランディングやリデザイン、WEBマーケティングやWEBサイトの制作といったソリューションワークで新しい風を入れる「点の戦略」により、地域全体を巻き込んで世界や全国と戦えるようにしていきたい、という構想を持っています。
▼県内最大級の産直お取り寄せ・通販サイト「新潟直送計画」
コロナ禍でリアル店舗の出店をした理由とは
ーー新型コロナウイルスの影響で店舗ビジネスが全国的に厳しい中で、御社が新潟市のDEKKY401にリアル店舗「KITAMAE」を出店されたことに驚きました。なぜ、このタイミングでこのような展開を行ったのでしょうか。
「KITAMAE」は飲食・物販店舗という形態を取ったため新規事業のように思われがちなのですが、実は直送計画の一施策という位置付けです。
もともと実店舗の展開は行いたいと考えていたのですが、お付き合いのあった(DEKKYの施設管理をしている)株式会社廣瀬さんよりお声かけがあり、出店のご縁をいただきました。
社会との関わりで言うと、コロナ禍ではオフラインでのコミュニケーション取りづらい分、「相手にモノを贈ることにより、自分の想いを伝える」ことの重要性が高まったと私たちは感じています。つまり、コロナが逆にこのタイミングで実施する背中を大きく押した形なのです。
直送計画では、新潟にゆかりがある首都圏在住の方が、自分のために食材などを注文してくださるというパターンが多いのですが、私たちは「新潟在住の方が新潟のものを人に贈る」という行動をもっと増やしたいとずっと考えていました。
新潟の人は、意外と新潟のいいもの・すごいものを知らないこともあるのではないかと考えており、それを知るためのきっかけのひとつとして、新潟にリアルな店舗を持つ、というソリューションを考つきました。
KITAMAEの利用を通じ、新潟在住の方に新潟の誇るべきものを知ってもらい、地域の誇りを醸成していきたいと考えています。
KITAMAEは、弊社の専門分野であるWebソリューションの仕事と比べ、お金の流れや収益構造が大きく異なり、日々試行錯誤しながら進めていますが、現在のところ、出店の効果はかなり出ています。これまで届かなかった層のお客様への認知のきっかけが増えることで、新規のお取引先も増えました。広報活動としても、このタイミングで店のオープンに踏み切った意義は大きかったと考えています。
家づくりの当たり前を変えるモックハウス
ーー一方、今年4月にローンチされたモックハウスは、住宅業界向けのソリューションの提供というサービスとのことで、全く毛色が違うように思えます。どのような想いがあって立ち上げたのですか?
住まいに関する情報収集が紙媒体中心で時間がかかることに疲弊して、大切な住まい選びで妥協をしてしまう方もいることを知ったのが、大きなきっかけです。
実は、新潟で注文住宅を建てようと思ったら、一次情報を得られるのはほとんど情報誌のみなんです。詳細を知るためには工務店へ資料請求をする必要があり、それも紙の資料が郵送されてくるんですね。
そんな状況をITの力で改善し、納得のいく家づくりを通して新潟での暮らしの満足感を高めてほしいとの想いを込め、家づくりの情報を集約するプラットフォームを新設しました。
▼新潟の家づくりをサポートするモックハウス
ーー建築業界という新しい分野に進出するにあたり、(株)新潟家守社で代表を務める小林 紘大さんなど、外部の人材をパートナーとして登用していますよね。ベンチャー企業の拡大フェーズにおいては内製化で全てをこなすことがしばしばあると思いますが、クーネルワークさんはパートナーとの事業づくりが非常に上手な印象です。事業パートナーと一緒に取り組んでいくメリットは何でしょうか?
新規事業をスピーディーに立ち上げるためには、実は内製化だけではたりません。内製故にどうしても進捗管理が甘くなりがちだからです。しかし、そこにパートナーを入れお互いに補い合うことによって、スケジュールや成果が出やすくなります。常に社内で抱えることが困難な高度な専門人材でも、パートナーとしてであれば中長期的にお付き合いできます。第三者の視点で、エンドユーザーに近いフィードバックをいただけることで、自社に良い価値を付与してもらえるという副次的な効果もあります。
(株)新潟家守社の小林 紘大さんから見たクーネルワーク
(外部パートナーとして活躍する新潟家守舎 代表の小林紘大さん)
(2021年度移転したばかりの風通しのよいオフィス)
新潟の若者が働きたいというシンボルに
ーー採用戦略や人材戦略についてこだわっているポイントを教えてください。
新潟の若者にここで働きたいと思ってもらえる、シンボルになれるような会社づくりをしています。弊社では、自社のミッション・ビジョンへの共感を重視すると同時に、成果を出して早く帰ろうという姿勢をメンバーに浸透させています。現在、正社員50名弱、パート・アルバイトの方も含めて90名近くの方に働いてもらっていますが、離職者は比較的少ない方だと思います。
スタッフの出入りが多いとお客さまに余計なコストをかけてしまうことにもなりますし、会社の歴史や文化を知った上で働いてくれる人が多いと、コミュニケーションロスも少なくなります。長く働いてくれる方が増えるということは、それだけの価値がある会社だと考えています。
入社前に会社が求める人材像と社員のニーズとの間にズレが生じないよう「クーネルパスポート」という資料を作り、明文化しています。せっかくのご縁で入社いただいた以上、社員全員が活躍できる場所をにしていきたいと考えています。
(クーネルパスポートより一部抜粋)
例えば、直送計画でぽっぽ焼きを購入したお客様が「地元を離れて食べられないと思っていたぽっぽ焼きをサイトで見つけて思わず注文。10年ぶりに食べて涙が出そうになった」という口コミをサイトに掲載していただき、それを見た生産者の方のモチベーションが上がるといった形で、弊社のサービスを通じて地域の誇りを生み出すことが企業価値の向上につながっています。当事者意識を持って働くことや、お互いの仕事に敬意を払うことができる方と働いていきたいと考えています。
▼クーネルワークで働きたい方はこちら
クーネルワークのこれから
ーー最後に、クーネルワークは今後、どのような形で進んでいくのでしょうか。
私たちは、地域の課題を、地域にいながらにして解決している会社だと自負しています。
直送計画やモックハウスのようなプラットフォームをつくるビジネスモデルがそのアプローチとして正解なのであれば、他の地域にも展開し、その地域に沿った課題解決の形にアジャストし続け、結果として市場から評価されるというプロセスで成長していきたいと考えています。
ーー2021年5月には、山形県でも直送計画をオープンさせましたね。
ローカルビジネスの未来をつくる会社として、山形県ならではの地域の誇りを醸成しながら、山形県の課題を解決できるような展開をしていきたいと思いますね。
ーーJスタ新潟に選ばれて変わったことはありましたか?
行政機関とのつながりやコミュニケーションの機会が持てることを価値として実感しています。例えば、ストックオプションに関するセミナー情報をいただくなど、会社の成長ステージに応じた情報を提供していただくことで、経営の視座が上がりました。
最後に
常に新しいチャレンジをし続けつつも、全ては「ローカルビジネスの未来をつくる」ために地域から価値を作り続けているクーネルワーク。仲間や共感者を広げ、多くの方を魅了している会社だと改めて感じるとともに、急成長ベンチャーの裏には、確固たるポリシーや経営哲学が存在していることがわかりました。
今後もJスタ新潟選定企業である「クーネルワーク」の躍進が非常に楽しみです!