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世界遺産登録をめざしてー文化財調査員のおしごとvol.1―

少し休憩していた専門職のおしごと紹介。今日から再開です!
今回は「文化財調査員」。
文化財調査って・・・?という方が多いかもしれません。
普段なかなか目にすることのない、知られざる文化財調査員の世界をたっぷり3週にわたってお送りしていきます!
文化財調査員が所属するのは観光文化スポーツ部文化課」。ここは、事務職もたくさん活躍しているので、文化財調査員志望の方はもちろん、事務職志望の方にも県の仕事のイメージが広がると思います。
ではでは、文化課のHさん、お願いしまーす。


みなさんこんにちは!私は、大学で考古学を専攻後、新潟市と県で任期付きの文化財職として働き、今年の4月から文化財調査員として採用されました。現在は、文化課の世界遺産登録推進室で働いています。文化財調査員、そして世界遺産の仕事と聞いても、あまりピンとこない方もいるのではないでしょうか?今回は、いま非常にホットな世界遺産登録推進室での文化財調査員の仕事について紹介します。

1.世界遺産登録推進室って?

世界遺産登録推進室では、「佐渡島(さど)の金山」の世界遺産登録を目指し、国や佐渡市と連携しながら多様な業務を行っています。大きく「総務企画担当」「連絡調整担当」「調査研究担当」に分かれており、私が所属している「調査研究担当」には5名の職員が在籍しています。構成資産の調査や保存を担当する文化財調査員3名と、翻訳や海外に向けた情報発信、国外の専門家などとのやりとりといった英語が必要な業務を担当する調査員・職員で構成されています。

2.どんな文化財を担当しているの?

新潟県内の文化財に関する業務は、文化課の他の係と分担して行っています。世界遺産登録推進室では、佐渡市の文化財のうち、主に世界遺産の構成資産(相川鶴子金銀山・西三川砂金山と鉱山文化に関連する文化財)となっているものを対象とする業務を行っています。
構成資産とは、世界遺産の価値を具体的に示すものとして選ばれた文化財のことです。「佐渡島の金山」の構成資産はすべて、国の文化財として指定・選定され、文化財保護法や景観法、市の条例等によって保護されています。例えば写真のようなものがあります。ちなみに右下の写真、一見普通の山道に見えるかもしませんが、砂金の採取をするために設けられた水路跡なんです!

【左上:相川金銀山】【右上:重要文化的景観に指定されている相川の町並み】【左下:鉱山の繁栄をまつる大山祗神社と能舞台】【右下:砂金採取のために設けられた導水路 金山江】

「佐渡島の金山」について詳しく知りたい方は、ぜひこちらもご覧ください!

3.どんな仕事をしているの?

大きく分けて3つの業務を行っています。
1つ目は、世界遺産登録に関連する業務です。
世界遺産になるための「推薦書」の執筆は重要な業務のひとつです。他県や他国の似た性格の文化財と比較したうえで、「佐渡島の金山」が唯一無二かつ人類にとって重要な宝物であることを示す必要があります。世界遺産委員会ではこの推薦書の内容をもとに登録可否を決定するので、構成資産個々の性格をしっかりと把握し、価値づけていくことが重要になります。
また、世界遺産に登録されると、資産の状況の定期的なモニタリングや、資産の価値に影響が及ぶような行為や事業についてはその影響を排除・軽減していくことが求められます。また文化財は、一見わかりにくい価値を説明し、大事なものと分かっていただけないと、保存していく意義が曖昧になります。将来にわたり構成資産をどのように守っていくか。現在は、世界遺産登録後を見据え、具体的な保護の体制づくりを行っているところです。

石見銀山視察
学術委員会の様子

2つ目は、構成資産となっている個々の文化財の保存や整備に関する業務です。経年劣化や近年の自然災害により損傷している文化財は少なくありません。それらを守っていくために、どのような方法、順番で修繕していくか、修繕した文化財をどのように活用していくかを、国や佐渡市、有識者の方々と協議を重ね、決定していきます。また、それに伴う補助金事務や毀損・現状変更に関する事務処理も担当しています。

佐渡金銀山の落石対策工事前後の様子

3つ目は、文化財の活用・発信に関する業務です。一般の方を対象に構成資産の価値や佐渡の魅力について知っていただくための講座を実施しています。また、県内外で実施されるイベント等に出向き「佐渡島の金山」のPRを行うこともあります。

県市連携講座の様子。リピーターも多く、皆さん熱心に聴講されています!
東京スカイツリーでのPR活動の様子

4.はじめての佐渡出張🚢

4月中旬、現地での業務に加え「佐渡島の金山」の構成資産への理解を深めるために1泊2日の予定で佐渡出張に行ってきました。
向かった先は、西三川砂金山の水路跡です。西三川では、砂金が含まれる層を切り崩し、水路によって遠方の水源から引いてきた水で土砂を洗い流して砂金を採取する「大流し」が行われていました。江戸時代後期の絵巻にもその様子が描かれています。


【絵巻に描かれた「大流し」】『佐州金銀山之図』(新潟県立歴史博物館所蔵)

佐渡市の方や先輩職員と手分けをし、水路跡に沿って歩きながら、定期モニタリングに向けた巡見ルートの確認や倒木等の障害物がないか点検しました。

写真奥の平坦地が水路跡の一部です!

水路跡は急峻な山の斜面に作られているため、滑り落ちないよう慎重に進みました。


現地には、当時の作業小屋の石組も残っています

2日目は、佐渡市の方にご案内いただき、構成資産や文化財の整備の状況等を伺いながら、相川を視察しました。

相川金銀山には金鉱脈の掘削によってできた坑道や窪みが残っています

この2日間、実際に現地を訪れ、自分の目で資産を見たことで、個々の資産に関する歴史や特徴や保存状態、どんな立地にあるのか等を良く理解することができました。

佐渡に滞在するのは小学校の修学旅行以来でしたが、文化財はもちろん、食や自然の魅力もたっぷり感じることができました。運がいいと野生のトキを見ることもできるそうです…!皆さんもぜひ佐渡を訪れてみてはいかがでしょうか?

昼食は美味しいラーメンをいただきました!

文化財調査員の仕事は、ひとつひとつの小さな業務が、県内の文化財を将来に残していくための糧となるので、非常にやりがいを感じています。また、文化財調査員の仕事と聞くと、発掘調査のイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、配属先によって担当する文化財は異なりますし、県内の様々な文化財に深く携われることが、この仕事の魅力のひとつだと思います!
現在、世界遺産に推薦中の「佐渡島の金山」は、今夏開催される世界遺産委員会によって、いよいよ登録の可否が決定します!文化財調査員の仕事はもちろん、今後の「佐渡島の金山」の動向にもぜひご注目ください!


いかがでした?世界遺産の登録に向けての推薦書まで書いてるんですね。。。スケールの大きな仕事に携わるとプレッシャーもある分やりがいもきっと大きいんだろうなと思います。佐渡島の金山が無事世界遺産に登録されることを願いつつ、Hさんのこれからの活躍も陰ながら応援していきたいと思います。
Hさんありがとうございました!!!

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