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柔道整復師から一転、ベーカリー開業に挑戦 〜新潟でUターン創業〜

今回は、新潟県のU・Iターン創業応援事業に採択され、新潟でUターン起業をされたSun Bake(サンベイク)オーナーの田中結さんにインタビューをしました。
柔道整復師から一転、新潟でベーカリーをオープンさせるに至った経緯、店舗や商品づくりのこだわりなど、田中さんの想いについてお話を伺いました。

Sun Bakeオーナー 田中 結さん

〈プロフィール〉
田中 結(たなか ゆい)
1994年新潟県新潟市出身、4人兄妹の末っ子として生まれる。専門学校卒業後、神奈川県横浜市で柔道整復師として約2年勤務。その後、ふとしたきっかけで「パン」と出会う。当時食べた「パン」の美味しさに感銘を受け、ベーカリーに転職。約4年半勤務してパンに関する知見を広め、2021年10月に新潟にてベーカリー「Sun Bake」をオープン。店舗名は、「来店される方が少しでも明るくなるように、晴れやかになるように」という想いから名付け、お店のコンセプトにもなっている。現在は口コミで人気が広がり、地域に愛されるベーカリー店のうちの1つになっている。


〜柔道整復師からベーカリーに転職〜

ーー田中さんは、以前は柔道整復師としてお仕事をされていたのですね。
専門学校を卒業してから、柔道整復師として横浜で約2年ほど勤務しておりました。当時は、新潟で就職するということはあまり考えていませんでした。
理由としては、私は末っ子(兄姉が3人)で年も離れていたため、実家から離れて自立したいと考えていたからです。また、関東圏にいた方が情報量や刺激もあるだろうと考えたことも理由の1つです。

ーーそういった環境の中で育ち、柔道整復師になろうと思ったきっかけはどこにあったのでしょうか?
高校時代、進路について考えていたとき、自身がスポーツ(水泳、サッカー)をやっていたことや、サポートする側が好きだったりしたので、スポーツに関われて、何か人の役に立てる仕事に就こうと考えたのがきっかけです。関連する仕事を色々調べていると、柔道整復師という仕事があることを知り、新しく新設された柔道整復師の専門学校に入学することに決めました。

ーー柔道整復師からベーカリーへ転職されたとのことですが、どのような背景があるのでしょうか?
実を言うと、パンを作りたいと思ったのがきっかけで転職したわけではないのです。私はもともとパンが大好きというわけでもないですし、どちらかといえば、お米派です。
転職のきっかけは、柔道整復師での仕事が結構しんどくて、退職を検討していた時に、代々木八幡(東京都)のとあるパン屋さんに出会ったことですね。
なんとなくお店に入ってパンを購入したのですが、食べてみるととても美味しくて、「これまで食べていたパンって何だったのだろう」と思うくらい感動しました。帰り道で本屋さんに立ち寄ったのですが、ふと手に取った雑誌にさっきまで居たパン屋さんが載っていたんです。本には、会社の年商が2億と書いてあり、数字の大きさとイメージしていたパン屋さんとの乖離に不思議に思ったことを今でも覚えています。
どうやったらあんなに美味しいパンを作れて、売上も伸ばせるのかと興味が湧き、オーナーの頭の中を覗いてみたいと思って、すぐに面接を受けようと決めました。

ーー思い切りの良さがすごいですね。違う世界に飛び込むのは勇気が必要だと思うのですが、田中さんはなぜ大きなチャレンジをすることができたのでしょうか?
私は守りに入るのではなく、どちらかと言うとできるチャンスがあるならやってみようと思うタイプだからだと思います。
当時は、ちょうど別の選択肢を探していたこともありますし、パンについてだけでなく、会社として社内整備を進めている姿勢なども含めて、このパン屋さんで働きたいと思いました。挑戦できる機会があるだけラッキーと普段から考えていますね。

ーー転職当時はパンの知識はなかったと思うのですが、大変ではなかったですか?
入社した当時は本当に何も分からなかったので、パンのことは初歩から教えてもらいつつ、猛勉強しました。厳しい言葉をいただくこともありましたが、従業員の皆さんは優しい方ばかりで、丁寧に教えてくださいました。
また、基本的に「どんな人でも受け入れる」というオーナーの意向がスタッフ全員に浸透していたこともあり、安心して仕事をすることができたのも大きいです。

〜新潟にUターンしてベーカリーを開業〜

ーー経験を積まれていくなかで、ご自身でベーカリーを立ち上げたいと考え始めたのはいつ頃からですか?
2020年頃ですね。新型コロナウイルスの影響で、人と会いづらくなったこともあり、世の中が閉鎖された雰囲気になってしまっていたかと思います。
都会にいても新潟にいても、情報や出会いといった新たな刺激は大きく変わらないだろうと考え、やるなら逆に今かなと思いました。
閉鎖された雰囲気の中で、新しく何かが生まれるという新鮮味を町の人は求めていると思うし、テイクアウトスタイルでパン屋さんをやろうと決断しました。
新潟へのUターンについては、高校の時にすでに考えていて、「専門学校を出たら上京して、26歳になったら新潟に戻り、27歳で起業する」というのを決めていたんです。実家が自営業だったので、小さい頃から両親の姿を見ていたこともあり、新潟で何かやってやろうと考えていました。
また、専門学校を卒業して4、5年働けば、なんとなく新潟の良さと県外の良さがそれぞれわかるだろうなと考えていましたし、シンプルに「新潟」という自分の好きな地元に貢献したいという気持ちがありました。地元の地域にGIVEできるような存在になりたいなと思っていました。

ーーお店を立ち上げるとき、ご家族や周囲の方はどのように感じられていたのでしょうか?
同僚や友人は、私がいつか何かつくるというのを知っていたので、とても応援してくれていました。
母からは、「やるなら応援するけど、本当に(起業することに対して)いいの?大変だよ?」という反応があり、賛成ではなさそうという感じでしたね。
しかし、もし大反対されていたとしてもお店は立ち上げていたと思います。その性格を母は知っているので、今は応援をしてくれています。

ーー新潟(地元)で起業するメリットや、起業して良かったことなどはありますか?
地元だと、家族や友人に会いやすいのが大きいですね。あとは、新潟という場所や特徴を知ってるからこその便利さみたいなのもありますね。
しかし、地元の安心感というのはいいなと思いつつも、関東圏に比べると情報量が少なかったり、本気で何かに取り組んでいる方や熱量がある方が少ないという印象があります。

ーーそれでも、やっぱり新潟って良い場所だなと感じる、新潟の魅力を教えてください。
新潟はやっぱり自然が豊かなので、精神面でとても助かっています。
もちろん、街の方では空いてる土地を建て直したり、マンション建設が行われたりもしていますが、農家さんや色々な人が畑や川を手入れしているのを目の当たりにしたり、触れ合えるというのがローカルメリットとしてありますね。新潟は車を走らせればすぐに見に行くこともできます。
生み出す力というか、生命力みたいなものが感じられるので、やっぱり新潟っていいなと思います。
これは、一度新潟県外に出たからこそわかる新潟の魅力だと思います。

〜ベーカリー「Sun Bake」のこだわり〜

ーー東京での経験を生かして「Sun Bake」を立ち上げたと思うのですが、どのようなコンセプトのベーカリーなのでしょうか?
新潟の天気は、結構曇りがちで、天気が良い日が太平洋側の地域と比べると少ないと思います。晴れている日はやっぱり気分が良くなったりするので、天気が良くない日でも、自分たちが作るもので少しでも気分が上がったらいいなと考えていました。
そのため、「皆さんの気持ちが少しでも明るくなるように、晴れやかになるように」という想いがコンセプトになっています。気持ちが明るくなったり、元気になれるような商品をこれからも作っていきたいと考えています。

ーー今のお店作りや商品開発などで、女性ならではの目線でうまくいったことや、活かされていることなどはありますか?
商品でいうと、ちょっとつまむぐらいのサイズやボリュームの方が、気分が上がりやすいというのを感じていて、サイズ感にはこだわり、美味しいうちに食べきれるものにしています。数種類食べたいというお客さんがたくさんいらっしゃったので、サイズ感という面ではうまくいったなと感じています。前の会社でも同じような商品開発はしていたので、そこからヒントを得たというのもありますね。
また、「美味しい」と感じるストライクゾーンは人それぞれですが、これなら絶対美味しいと感じるゾーンを狙い、「味わい・香り・ボリューム」のバランスを大切にして商品開発をしています。
ラインナップの種類やボリューム感も大事だなと考えており、いつ来ても新しい商品があるというのを目指して、毎月新商品を出したり、商品の入れ替えをしています。
新商品は、タルトのフルーツやキッシュの具材を変えたり、サンドイッチの具材の変更なども含みますが、季節に合わせた具材を使用しながら同じ商品にならないように工夫しています。女性だけでなく、男性の方も買いに来てくださり、ご自身で食べるのもそうですが、差し入れで買っていく方も多いので、とても嬉しいです。

ーーこれまでで、嬉しかったことや苦しかったことがあれば教えてください。
苦しかったのは、体力的にきつかった時期があったことですね。ご来店くださるお客様に応えたい一心で商品をたくさん作ってしまい、結果的に労働時間が長くなって体力的に厳しい状況になったことがありました。体力的には厳しかったですが、同時に嬉しいことでもありましたね。
また、このお店を拠点にして、いろんな人に出会えることも嬉しいですね。コミュニティが広がっていくような感じもありますし、声をかけてくださるとやっていて良かったなと思います。少しでも皆さんの楽しみに貢献できていると思うと、モチベーションに繋がりますし、達成感を感じますね。

〜田中さんの夢〜

ーー田中さんは過去にUIターン創業応援事業に採択されましたが、補助金関係の情報はどこで知ったのでしょうか?
補助金に関する情報は、最初は自分で調べていました。オンラインで探してはいたのですが、補助金の使い方や、自分の考えとマッチした活用方法が全然分からなかったので、お世話になっている銀行さんや、新潟IPC財団さんから教えていただいたりしました。様々な方のご協力をいただきながら、やっと踏み出せたという感じです。補助金の活用方法としては、労働環境の改善や、より安定した商品を出すためのミキサー(生地をこねるマシン)の購入費用に充てました。

ーー労働環境という言葉がありましたが、現在はどのような働き方で仕事をされているのでしょうか。
今は朝の4時に出勤し、7時半のオープンに合わせてパンを揃えています。私は大きな組織を作りたいわけではないので、従業員2人でやれる範囲で、フレッシュな気持ちでお客さんに会い、商品が売り切れるように日々調整しています。
お店の立ち上げから現在までは、唯一の従業員である阿曽なつみさんと一緒に作り上げてきました。私が新潟に戻ってお店を始めると言った時に、阿曽さんがついてきてくれて本当に嬉しかったですね。

ーー今後目指していること、やってみたいことについて教えてください。
直近のことになってしまうのですが、この夏にもう一つお店をオープンすることになりました。私一人ではなく、他で活躍されている2つのお店(コーヒー店、アイスクリーム店)と協力して立ち上げる予定です。まずはこのお店をしっかり軌道に乗せることが目標です。
私は、地元の方に信頼されて地域にちゃんと残っていくスタイルで、コツコツやりたいなというのが夢であり目標です。先の人生を考えると、「継続する」ということがこんなに大変なんだっていうのをとても実感しています。

ーー田中さんと同じようにU・Iターンで起業を考えている方もいると思います。アドバイスや応援メッセージをいただけますか。
私は、チャンスがあればぜひ挑戦した方がいいと思っています。
もちろん、どうやってチャレンジしたらいいか分からないので、踏みとどまる気持ちも理解できます。しかし、そういう時は助けてくれる人が必ずいます。NICOさんだったり、新潟県庁であったり、IPCさんだったりと、力強い味方がたくさんいるので、自分が本当にやりたいことは何なのか、やりたいと思ったらやっぱりチャレンジしてほしいなと思います。
やりたい気持ちは、思っている時のその熱量がすごい大事だと思うので、冷めないうちに一歩踏み出して、周りの力を借りながらぜひチャレンジしてほしいと思います。


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