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新潟発グローバル企業が成長するには

今年もNVSが近づいてきました。今回もディスカッションが予定されていますが、待ちきれない方のために、昨年のNVSのディスカッションをダイジェストでお伝えします。スピーカーは、株式会社スノーピーク代表取締役 会長兼社長執行役員 山井太氏、株式会社ハードオフコーポレーション 代表取締役社長 山本太郎氏の2名で、コーディネーターはエスイノベーション株式会社代表取締役CEO 星野善宣氏です。

メインスピーカー

コーディネーター


■グローバル展開のきっかけと準備期間

ーー星野:まずはグローバル進出のタイミングと、進出のきっかけとなった出来事について教えてください。

山井:
私は1986年にスノーピークへ入社しました。1988年、ハイエンド市場をターゲットにオートキャンプの商品展開を開始し、その後5年間は年率130%の成長が続きましたが、1993年をピークに売上が減少し始めました。「このままハイエンドにこだわってやっていくか」それとも「切り口を広げて売り上げを伸ばしていくか」の方針を決める必要がありました。
事業のコンセプトを変えず成長するためには、“海外の” ハイエンドマーケットへ展開するしかないという結論に至りました。日本で未来を描けなくなり、海外に進出したわけです。

山本:経営者として会社を存続させるためには、目先の利益を出せばいいわけではなく、10年後、20年後、さらには30年後と長い目で考える必要があります。ロングスパンでの成長を考えた際、今後の日本市場は鈍化するだろうと分かっていました。
そんな中、2014年に日本で最後の進出先となる沖縄に初店舗をオープンしたのですが、開店前に並ぶ数百人のうち、半数がアメリカ人でした。その光景を目にした時、「リユースビジネスは日本に限ったものではない」と気が付き、海外のためにも何かできるのではと考え始めたことが進出のきっかけです。

山本氏

ーー星野:沖縄での出来事から、実際にどのくらいの期間で海外展開まで踏み切りましたか?また、その期間で準備したことなどがあれば教えていただけますか?

山本:
そこから2年半ほど準備して、2017年に海外で初めてハワイに出店しました。海外展開に関して最初はさまざまな人に相談していたのですが、「その人たちの話を聞くだけでもいいのか?」と疑問を持つようになりました。そこで、まずは聖籠の免許センターで国際免許を取得し、実際に自分がアメリカでレンタカーを借り、1日300キロ走って市場調査しました。「自分の肌で感じてやってみること」を大事にしましたね。

ーー星野:山本さん自ら現地に赴き、市場調査を行なっていたことに驚きました。山井さんも初めはアメリカへ進出されたそうですね?

山井:
「アメリカでトップをとれたら世界でも勝てるだろう」と、売上が落ち始めた1994年にオレゴン州のポートランドへの進出を決めました。初回のアメリカ訪問時に銀行口座を作り、二回目は家を買ってそのまま会社を登記しました。ポートランドに場所を決めたのは、自分が無類のキャンプ好きで、フライフィッシングをしたかったという個人的な理由も大きいです。

山本:私がハワイへの進出を決めたのも、似たような理由です。行きたいところに出店したいと思っているので、その後はカリフォルニア、台湾、タイと私が好きなところに出店しました。

山井:これはすごく重要なポイントで、自分が好きな場所であるからこそ、力を入れられるのではないでしょうか。

山井氏(左)、山本氏(中央)、星野氏(右)

■海外展開における課題

ーー星野:実際に海外展開されてみて、想定と大きく異なったことやローカライズした方がいいと感じる部分はありましたか?

山本:やはり働き方の部分でしょうか。現地に合わせて働き方をアメリカナイズする必要があると思っていましたが、逆にそれだとうまくいかないことが多かったです。
初めは8割程度アメリカの文化を取り入れていましたが、今ではアメリカの文化は3割程度に抑え、7割程度は日本の文化やハードオフの理念を働き方に取り入れています。日本式の働き方を取り入れた方が良いなと感じた点は意外でした。

山井:ローカライズに関して言えば、日本人はマルチにタスクをこなすのに対し、アメリカではジョブディスクリプションという職務規定があり、決まった仕事しかしません。「ついでにやっておいてね」は通用しないわけです。雇用に対する文化が違うので、その部分は現地に合わせる必要があります。

山本:本当にそうですね。日本の場合、掃除やレジ打ちも1人でさまざまな仕事をこなします。一方、アメリカにマルチタスクの概念はないので、例えば「みんなで掃除しよう!」と声を掛けると「It’s not my job」と断られます。“プロフェッショナル”が文化なんですね。

ーー星野:では人事についてはいかがでしょうか。現地のスタッフに会社の”イズム”を浸透させるのはなかなか難しいと思いますが、コツはあるのでしょうか?

山井:スノーピークではイズムの浸透に関しても、基本的に現地のスタッフに任せています。直近まで日本人を派遣することもしていませんでした。「THE SNOW PEAK WAY」を現地の言葉に訳し、徹底的に企業理念を浸透させる取組みを行っています。

山本:ハードオフでは現状、現地のスタッフを採用していますが、経営メンバーは日本人です。まだ完全に現地メンバーに任せることはできていません。アメリカの現COOは私の大学の後輩で、新潟でエリアマネージャーを任せていた頃からの信頼があるので問題ありませんが、そのような人材はなかなかいません。今後、ハードオフの“イズム”を浸透させながら、もっとグローバルに展開していくのであれば、山井さんの方法は参考になると思います。

星野氏

■グローバル展開における地方発のメリット

ーー星野:グローバル展開の際、新潟のような地方発でよかったことはありますか?

山井:スノーピークの本社は燕三条にあります。海外でもローカルな場所(ポートランドやロンドン郊外)に出店していますが、地方であることはデメリットではなく、むしろスノーピークがローカル発だからこそ海外のローカルが理解できているのだと思います。

山本:私達が全国展開できた要因は「新潟の新発田に本社がある」からだと感じています。新潟県はよくどこの地域にも属していないと言われますが、色がついていないからこそ、出店の際には地元の人の話を聞き、その土地らしいお店を展開できます。そこは新潟の強みではないでしょうか。
また、本社がどこにあるかでブランドは決まらないと考えています。本社がニューヨークや東京にあるからいいというわけではなく、逆に「小さな都市に本社があった方がブランディングになるのでは」とも思っています。
例えば、シャネルの本社は人口6万人のフランスの都市にありますし、フェラーリやランボルギーニなどの有名企業の本社は数千〜数万人程度の町にあります。「小さな都市でその地域と一緒に成長したほうが、ブランディングとして良いのではないか?」と思うことはあります。

山井氏

■グローバル展開を目指す経営者へのメッセージ


ーー星野:スタートアップがグローバル展開の上で意識すべきことについて、どのようにお考えですか?

山井:私たちは、ユーザーとスノーピークの関係が国によって違いが出ないよう意識していて、そのために大きなマーケットがある場所には子会社を作っています。
スノーピークのアプリも、現在は海外と日本で共通して使え、将来的にこのプラットフォームの中にユーザー同士のグローバルなコミュニティができるように取組んでいます。これができるアウトドアブランドは、世界で見てもスノーピークだけですし、これにより5年後、10年後に圧倒的に勝っているのではないかと思っています。
コンセプトや子会社を作るかどうかなどは、海外展開をする最初の段階で決めておくことが非常に重要だと思います。

ーー星野:山本さんはいかがでしょうか?

山本:
先ほど、働き方に関しては、7:3(日本式:海外式)を取り入れたことだとお話ししましたが、経営理念については10:0だと思っています。アメリカでは英語版、台湾では中国語版の経営理念を作り、距離が離れていることで生じるズレを理念で修正しています。国内のフランチャイズでも海外展開でも同様に、「理念という一本の柱」を通すことが大切だと思います。

ーー星野:最後に一言ずつメッセージをお願いします!

山井:私は創業者ではないので、スタートアップを創業した皆さんを本当に尊敬しています。ある種の突然変異種である皆さんが、いかに頑張るかが日本の未来です。グローバル化も含めて頑張っていただきたいと思います。私も惜しまず協力したいと思います。

山本:情報が多い時代で、海外の情報も簡単に取ることができるため、理解した気になってしまいますが、実際に行ってみないとわからないことが多いです。自らの肌で感じることをこの先も大事にしてください。まずは日本でしっかり勝てるよう頑張ってください。

山井氏(左)、山本氏(右)

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