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新技術で、未来の世界に新たな価値を提供したい〜Jスタ新潟・経営者インタビュー⑨ 株式会社パンタレイ〜

 今回は「J-Startup NIIGATA(以下、Jスタ新潟)」の選定企業である、株式会社パンタレイの特集記事をお届けします。

Jスタ新潟
地域に根ざしたイノベーティブなスタートアップ企業を、新潟県と関東経済産業局等が選定。公的機関と民間企業が連携して集中的に支援することで、選定企業の飛躍的な成長と、新潟のスタートアップエコシステムの強化を目指す取り組み。
▼設立趣旨などについては、下記HPもご覧ください。


株式会社パンタレイ 代表取締役 佐藤 靖徳さん

〈プロフィール〉
佐藤 靖徳(さとう やすのり) 
1994年秋田県秋田市生まれ。秋田高専を卒業後、20歳で長岡技術科学大学へ編入。Stanford大学やインド工学大学マドラス校への留学を経て、長岡技術科学大学大学院にて工学博士を取得。卒業と同時に同大学の特任助教として研究を進める一方、2021年に株式会社パンタレイを設立。研究で生まれる様々な技術を世に送り出し、地域を支えていきたいという思いを胸に、風車技術を利用して企業と製品開発に取り組む。パンタレイが扱う最新の風車技術は5カ国で特許を取得し、世界から注目を集めている。



科学的な側面から、地域を支えていきたい

ーー株式会社パンタレイの事業について教えてください。
当社は長岡技術科学大学発のスタートアップ企業で、ハード面の取り組みを中心としています。事業内容は主に2つで、「レオロジー事業」と「風車事業」です。現在メインとなっているのが「風車事業」で、アメリカやイギリスなど風車先進国5ヶ国で特許を取得した新動力技術「縦渦リニアドライブ」を使った世界初の風車を利用し、商品開発や技術検証を行っています。

ーー風車事業は、具体的にどのような取り組みを行っているのですか?
風車を使ったエネルギーハーベスティングですね。エネルギーハーベスティングを一言でいうと、取りこぼしているエネルギーをうまく使っていこうという取り組みです。今ある再生可能・持続可能なエネルギーを取り出して、電気や動力として利用します。ひと昔前は火力に依存し、太陽光発電などもありませんでしたが、今は当たり前に再生可能・持続可能なエネルギーを利用する世の中になっています。私たちは、そのエネルギーの一つである風のエネルギーから電気エネルギーを作り出す「風車」を使って実現させたいと考えています。当社は洋上風力のような大型の風車ではなく、数十センチ程度の小型風車を利用するため、発電規模は1kW以下です。そのため、国策で進められているような大量の電気を作り出すことを目的としていません。

ーーでは、貴社の小型風車が目指すところはどこになるのでしょうか?
私たちはその場で電気を作って使う、いわば「電気の地産地消」を目指しています。家庭で使っている電線から電気を得る系統型電源ではなく、電池のようにどこでも電気を得られる分散型電源の商品開発を行っています。つまり、私たちの製品はポータブルな風力発電装置であり、離島などの離れた場所でも、この風車があればその場で電気を作り出すことができます。
「地産地消・分散型・小規模電源」を我々が打ち出す製品コンセプトとしており、現在は、商品の試作や技術検証を進めている段階です。
例えば、風車を使って気象センサーを動かすことで、任意の場所で雨・風・日射量のデータを計測することが可能になります。
他にも、ビルの屋上のような狭い設置場所においても、最大限の再生可能エネルギーを取り出せるように、太陽光発電と併用可能な風力発電モジュールを大手企業と連携しながら開発しています。

写真右:ペットボトル風車、写真左奥:基礎的データを得るための試作小型風車
風洞実験室_流速を制御して風を流し、直径30cm以下のモデルの性能試験を実施するための装置

ーー小型風車の可能性の大きさにワクワクしますね。風車以外にも事業があるとお聞きしました。こちらについても教えていただけますか?
レオロジー事業
です。この分野は私が学生時代に専門として学んだものであり、ドロドロ、ベタベタした液体やクリーム状の化粧品を定量的に評価していた経験を活かし、大手化粧品会社様に化粧品の品質管理・保存性などに関してコンサルティングを行っています。
私たちの役割は、現場の方々が職人の肌感覚で行っている作業を科学的に理解できるようにサポートすることです。化粧品をはじめとして塗料・薬品・食品など様々な産業界にある液体に対して、製品の品質向上に寄与します。

世の中を豊かにするため、「技術」のままで終わらせない

ーー大学を卒業後、特任助教として研究を続けていらっしゃいますが、その一方で起業された理由を教えてください。
当社は私の大学時代の恩師である髙橋先生(工学博士、パンタレイ取締役)と私の2人で事業を行っていますが、風車技術は元々髙橋先生が開発したものです。私は髙橋先生の研究室で他のテーマの研究を行っていたのですが、風車の技術に素晴らしさを感じると同時に、「この技術を世に出さないのはもったいないのではないか。多くの人たちの役に立つ形にならないか?」という気持ちも芽生えていました。「この技術を使って起業するなら今しかない!」と思い、大学に残りながら起業の準備をすることに決意しました。

ーー起業するのは勇気がいる決断だったのではないですか?
様々な選択肢はありましたが、私にとっては今しかないという気持ちの方が強かったです。私は、高専・大学・大学院へと進むにあたり、常に「世の中に通用するような人になりたい」という目標を掲げてきました。また、もし企業に就職して何十年も勤めた後に起業できるのだろうかと考えた時、難しいのではないかと感じたのです。「目の前には素晴らしい技術がある。この技術を世に送り出すのは自分の使命だ!」という思いも芽生え、決断しました。

より多くの技術を世に送り出す、はじめの一歩になりたい

ーー現在は製品の試作などを行われていますが、今後どのような展望を考えていますか?
分野を問わず、まだ知られていない素晴らしい技術を世の中に送り出すためのサポートをしていきたいと考えています。現在は髙橋先生が生み出した技術を世の中に還元していきたいと奮闘していますが、しっかりと確立できれば「技術を世に送り出すモデル」となります。このモデルをお手本に、全国のまだ知られていない技術に光を当て、世の中の役に立つ形として送り出すサポートをしていきたいですね。
また、私と同じように技術を世に送り出す人材を育てることも視野に入れています。私は決して特別な人間ではなく、高専時代から大学院まで、カリキュラムに沿って学び、そのカリキュラムに育ててもらいました。私が出来たのなら、同じカリキュラムで育ってきた学生たちもきっと同じように活躍できるはずです。まずは私が先頭に立って見本となり、同じように世の中に技術を送り出すことができる人材を育成していきたいと考えています。

ーー髙橋先生の「技術」と佐藤さんの「情熱」があってこそですね。追い風を受けるように、今年Jスタ新潟に選定されましたが、選定後の変化等はありますか?
Jスタ新潟に選定いただいたことで、より責任感が生まれたと思っています。"新潟"という文字がついていますので、新潟発のベンチャー企業・スタートアップ企業としてしっかり結果を残していきたいです。また、周囲からの認知度・信頼度がグッと高まったと感じています。特に自治体の方々からお声がけいただく機会や、ご紹介で繋がるご縁も増えました。
人と人との繋がりがきっかけで得られるお仕事というのは、信頼していただいていると感じますし、何より嬉しいですね。私たちが想像していなかった分野で風車技術を活かせる可能性も広がってくるのではないかと考えております。

チャンスを逃さず、選択肢が広がる選択をする

ーーこれから起業を考えている方々にアドバイスをお願いします。
チャンスが訪れた際には、必ず掴んでください!その一言に尽きます。チャンスというのは一歩踏み出すことであり、試されている時なのだと思います。覚悟して、悩まず掴む!考えてたらチャンスを逃してしまいます。細かいことは後から考えましょう。

ーーとはいえ、時には迷ってしまうこともあると思います。そんな時はどうすれば良いでしょうか。
私も留学を決めた際は、決して英語が得意だったわけではありませんでしたが、細かいことは後から考えました。もしここで、"英語ができないからやめておこう"と考えていたら、今の私はないと思います。自身の「無理かもな」という思いから一歩踏み出すことが、人生を好転させるきっかけになると思います。

ーー「まずはやってから考える」このようなマインドに切り替えることも大切なんですね。そんなチャンスを掴んできた佐藤さんが、特に意識していたことはありますか?
常に「選択肢」の広がりを意識していました。「選択肢」とは、その先の選択がどれだけ広がるかということです。例えば、大学に行くというのも、「選択肢」の広がりに繋がると思います。大学を卒業しないと出来ない仕事もありますからね。若い頃はやりたいことが見つからないという人が多いと思います。私もそのうちの一人でした。しかし、「選択肢」を広げる選択をしていたからこそ、今の状況があると考えています。もしやりたいことが見つからないのであれば、自分の「選択肢」を広げる方法を考えるのも良いと思います。本当に自分がやりたいと思った時に「身動きが取れない、その道に進めない」というのは非常にもったいないです。やりたいことを見つけるまで、選択肢の選び方を大切にしてください。
30代を目前にして思うのは、20代の1日1日というのは本当に貴重だということです。まさにゴールデンエイジです。若い皆さんは可能性に満ち溢れていますので、その可能性に蓋をせず、ぜひ多くのことにチャレンジしてみてください!


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