スタートアップ支援のエコシステムで新潟を活性化 J-Startup NIIGATAの全容と顔ぶれ
スタートアップ支援拠点や行政と民間が連携する新潟ベンチャー協会(NVA)が相次ぎ立ち上がるなど、新潟発のスタートアップをめぐるムーブメントが活性化する中、あらたなスタートアップ支援の枠組みとして2021年春に創設された「J-Startup NIIGATA」。認定企業として20社が選定されました。
”ユニコーン企業”の創出を目指し経済産業省が2018年に開始したスタートアップ支援の枠組み「J-Startupプログラム」の新潟版というだけではない、J-Startup NIIGATAの取り組みの背景を解説するとともに、認定を受けた企業の顔ぶれにも迫ります。
J-Startupが生まれた背景
「2023年までにユニコーン等を20社創出する」との政府目標を達成するため、経産省は2018年6月、J-Startupプログラムを開始。合計で138社をJ-Startup企業に選定し、集中支援しています。
スタートアップ企業へのグローバル展開支援でユニコーンの創出を目指すとともに、ロールモデルを生み出すことで起業家マインドを社会全体で醸成し、日本のスタートアップエコシステムのさらなる強化を目指すのが狙いとなっています。
地域版J-Startupの展開
ユニコーン企業の創出を目指す過程で生まれるスタートアップ起業支援のエコシステムを地域経済の活性化に活かそうと、北海道、関西、東北でJ-Startupプログラムの地域展開が2020年7月からスタート。2020年11月には中部地域でも始まりました。
自治体を中心に構成する各地のJ-Startup事務局が地域に根差した有望なスタートアップ企業を選定。民間企業とも連携して集中支援を提供することで、選定企業の飛躍的な成長を図るもので、これまで4地域で合計107社が認定を受けました。
J-Startup NIIGATAの創設
新潟でもスタートアップ企業支援のエコシステムを地域経済の活性化につなげるため、2021年春、J-Startup NIIGATAが創設。5月26日には新潟市内でキックオフイベントが開かれました。
(J-Startup NIIGATAキックオフイベントの様子)
J-Startup NIIGATAは、AIやIoT、5Gなどの分野で活躍するイノベーティブな企業を中心に20社を選定。新潟県、にいがた産業創造機構、関東経済産業局で作る事務局を中心に官民連携による選定企業を集中的に支援。スタートアップエコシステムの強化を目指します。
さらにJ-Startup NIIGATAの取り組みは積極的に情報発信し、首都圏のイノベーティブな企業や、起業家予備軍の呼び込みを図るとともに、新潟県の産業の強みでもある製造業や農業の分野のDXを推進。県経済全体の底上げにつなげます。
J-Startup NIIGATAの大きな特徴は、NVAの設立やスタートアップ支援拠点の設置をはじめとする行政、企業、起業家が一丸となったスタートアップ支援の機運が盛り上がる中、J-Startupの枠組みだけでなく、既存のスタートアップ支援のエコシステムを生かして新潟発のスタートアップのムーブメントを強化する点といえるでしょう。
J-Startup NIIGATAの選定企業の対象要件は①新潟県内に事業所を有する企業、②新規ビジネス開始から概ね10年以内の企業ーーの2点で、審査基準は①成長性(事業内容がスピード感を持った成長及び高成長が期待できるものであるか)②新規性・独創性(事業内容が新規性・独創性を持ったものであるか)③優位性(事業内容に比較優位性が認められるか)④社会性(社会課題の解決や地域貢献を理念・ミッションとして有しているか)ーーの4点です。
J-Startup NIIGATA選定企業の顔ぶれは??
2021年度のJ-Startup NIIGATA選定企業20社を一挙にご紹介します(50音順)。
株式会社アイセック
株式会社アイセック(新潟市) は、新潟県民の健康寿命延伸を目的に、新潟大学医学部内科と設立した新潟大学発ベンチャー公認第1号企業です。健康医療データ分析やオンライン健康教育事業を展開しています。
INSIGHT LAB株式会社
INSIGHT LAB株式会社(東京都新宿区)はデータ利活用プラットフォーム事業を手がける企業です。KizuKi(データビジュアライゼーション)、MatoMeru(データ分析基盤)、+One(AI、RPAなど)、KakeDashi(DX推進)などのプロダクトを展開しています。
株式会社WELCON
株式会社WELCON(新潟市)は、金属など母材の材料を溶かすことなく個体のまま接合する「拡散接合技術」を事業のコアとする企業です。微細三次元構造により、熱や流体制御部品を開発から量産までワンストップで提供しています。
ウォーターセル株式会社
ウォーターセル株式会社(新潟市)は、生産者の声から生まれたクラウド型営農支援ツール「アグリノート」を開発・提供しています。
株式会社エンゼルグループ
株式会社エンゼルグループ(湯沢町)は、リゾートホテル・貸別荘・民泊運営、管理、不動産、建設、観光、酒造等を手がける企業です。 「質・量ともにリゾートサービス業NO.1」を目指しています。
株式会社ガゾウ
株式会社ガゾウ(新潟市)は、画像処理技術を応用した検査装置、画像処理ソフトウェアの開発・販売、ハードウェア開発を手がける企業です。視線解析や眼球運動解析といったヒトの意識や行動にフォーカスした事業をコアに、世界の価値観を覆します。
株式会社クーネルワーク
株式会社クーネルワーク(新潟市)は、総合Webマーケティング企業です。デザイン・Webマーケティングを基軸に、産直ECプラットフォーム「直送計画」や、ローカル総合住宅プラットフォーム「Mockhouse」を企画・運営しています。
株式会社KUNO
株式会社KUNO(東京都港区)は、コンサルティング やシステムエンジニアリングサービス 、受託開発 、セミナー・社内研修を事業とする企業です。AI研究開発・データ活用の専門性、クラウド技術による実装力の両輪を強みとしています。
SIIG株式会社
SIIG株式会社(柏崎市)は、WEBサイト・ホームページの制作や WordPress構築、スマホアプリ開発を手がける企業です。AIとゲーミフィケーションを活用した釣果共有プラットフォーム「FishRanker」の開発・運営をしています。
株式会社ソルメディエージ
株式会社ソルメディエージ(新潟市)は、映像コンテンツ、ウェブコンテンツを主軸に展開する企業です。プロジェクションマッピングやライトアップ等の大規模な空間演出や仕掛けづくり、施設等の演出システムの設計、構築等も手掛けています。配信等にも注力し、コロナ禍における新たなエンターテインメントを生み出しています。
taneCREATIVE 株式会社
taneCREATIVE 株式会社(佐渡市)は、全国のエンジニアの分散型ワークによるWebサイト制作、Webサイトの保守・セキュリティー対策プラットフォームを提供する企業です。
ドコドア株式会社
ドコドア株式会社(三条市)は、総合デジタルマーケティング、Web開発、アプリ開発やSaaS開発を手がける企業です。ノーコードのアプリ開発プラットフォーム「applimo(アプリモ)」やクリエーターマッチングプラットフォーム「クリエタ」などを運営しています。
長岡モーターディベロップメント株式会社
長岡モーターディベロップメント株式会社(長岡市)は、電動モーターに関する受託開発・コンサルティングを手がける長岡技術科学大学発のベンチャー企業です。電動モーターの設計、試作、駆動制御やシミュレーションモデル構築とモーターに関するエキスパートとして活動しています。
株式会社バイオマスレジン南魚沼
株式会社バイオマスレジン南魚沼(南魚沼市)は、非食用米由来の国産バイオマスプラスチック「ライスレジン」の製造・販売を手がける企業です。ライスレジンを素材としたごみ袋や クリアファイル、箸・スプーンなどのカトラリー、歯ブラシ・クシなどのアメニティーの販売も行なっています。
フラー株式会社
フラー株式会社(新潟市)は、アプリやウェブなどデジタル領域での支援を展開するデジタルパートナー事業を手がける企業です。スマホアプリ分析サービス「App Ape(アップ・エイプ)」の運営のほか、デジタルに関するプロフェッショナル領域の知見を生かしてデジタル推進支援を進めています。
株式会社プラントフォーム
株式会社プラントフォーム(長岡市)は、養殖と水耕栽培を同時に行う新しい循環型農法「アクアポニックス」を活用した植物工場を全国に展開する企業です。
株式会社プロッセル
株式会社プロッセルは(長岡市)は、オンライン上のビジネスコンテスト「オンコン(Online Intern Contest)」の運営・開催・コンサルティング、それに伴うソフトウェアの開発を手がける企業です。
株式会社Matchbox Technologies
株式会社Matchbox Technologies(新潟市)は、ギグワークアプリの開発・運営、デジタルマーケティングのエージェンシーサービスを提供する企業です。
株式会社ユニークワン
株式会社ユニークワン(新潟市)は、集客⽀援、採⽤⽀援、⾃社運営メディアの三本柱で地⽅企業の課題を解決するインターネット広告企業です。
株式会社リプロネクスト
株式会社リプロネクスト(新潟市)は、「リアルを届けるWebマーケティング会社」として主にVRコンテンツを活用したWebマーケティング事業を展開する企業です。「BREAK THE WALL」をビジョンに掲げ、地域の課題を解決していく集団を目指しています。
新潟のスタートアップエコシステムの中での多様な企業の連携に注目
認定企業の顔ぶれを見ると、多様な業種の企業が新潟を起点にイノベーティブな取り組みで飛躍しようと取り組む様子が見えてきます。
今後、これらの企業が新潟のスタートアップのエコシステムの中で、どのような連携や相互作用をもたらして発展していくのか、注目です。
J-Startup NIIGATAサポーターとの連携
J-Startup NIIGATAには、趣旨に賛同し、自社リソースの提供などにより選定企業を支援する企業が「サポーター」として参画しています(現在27社)。
すでに、コーポレートガバナンスの強化やPRなど、具体的なサポートが始まっています。サポーターと選定企業との連携が生まれることで、更なる成長の促進が期待されます。
おわりに:J-Startup NIIGATAの今後の展開
8月20日には、J-Startup NIIGATA企業とサポーター・首都圏等のVC・大企業等とのネットワーキングの機会を創出するピッチイベント「地方発!ベンチャー企業ミートアップ~J-Startup NIIGATA特集~」が開催される予定です。
今後もJ-Startup NIIGATAでは、サポーター・行政の官民連携による支援を進めていくことで、企業の更なる成長を後押ししていく予定です。今後の展開にご期待ください!