第1回NVAピッチ準優勝者のその後の展開
第1回NVAピッチで準優勝された、株式会社プロッセル代表取締役の横山和輝さんに、ビジネスモデルへの想いやNVAピッチに参加された当時のことをお聞きするとともに、今後目指すことや事業の広がりについてもお伺いました。
"周りと違う"を強みに、こだわりの選択が切り開いた起業の道
ーー高専出身の横山さんですが、高専を志したきっかけを教えてください。学びたいことがあったというのはもちろんですが、「周りの人たちと違うことにチャレンジしたい」という気持ちで高専への進学を決めました。多くの人は、中学を卒業したら高校、さらには大学という進路を選ぶことが多いと思うのですが、僕はあえて"高専"を選ぶことで、「高専!?」と驚かれたいという気持ちがありました。
ーー高専在学中に留学した"フィンランド"も、よく耳にする留学先ではないと思うのですが、先ほどの考え方が影響しているのでしょうか?
まさにその通りです。元々はベタなオーストラリアを考えていましたが、「えっフィンランド!?」って言ってもらいたかったのです。長岡高専からフィンランドに留学したのは、正規としては僕が初めてでしたし、本来の留学期間はおよそ3ヶ月だったのですが、各方面にお願いをして1年に伸ばしてもらい、ビジネスコンテストに出場したりしていました。
実はこのフィンランド留学で、人生初めてのビジネスコンテストに参加したことが起業のきっかけになっています。
高専人のためのキャリアパートナー事業を立ち上げる
ーー前例のないものにチャレンジしていく、横山さんならではの選択が起業の道を切り拓いていったのですね。起業のきっかけを掴み、帰国後はどのように事業を立ち上げましたか?
2019年の夏に帰国し、すぐに起業に向けて動き出して、数ヶ月間は事業を立ち上げる準備をしていました。そして2019年11月に学生団体・プロッセルとして、コロナ禍で就活に困っている学生に対する、"ビジネスコンテストを通した就活支援事業"を始めました。ありがたいことに、少しずつ関わってくださる企業が増え、2020年6月には株式会社プロッセルとして法人化が実現し、現在は高専人向けキャリアパートナー事業として、ビジネスコンテストだけでなく様々なサポートに取り組んでいます。
ーー事業の幅がどんどん広がっていったということですね。具体的にどんなことに取り組んでいるのでしょうか?
先ほどのビジネスコンテストでの就活支援の他に、起業支援、キャリア講演会の企画・運営に取り組んでいます。講演会では僕自身が登壇することもありますし、ゲストをお呼びすることもあります。また、高専生と一緒に取り組む、企業からの受託開発も行っています。
ーー高専生と一緒に開発をされているのですか?
高専生に、今学んでいるスキルを活用して開発に携わってもらうことで、自分の可能性を感じてもらうためです。全国には現在、58※の高専があるのですが、高専のほとんどが地方の郊外に立地しています。そのため都市部とは違い、学んでいるプログラミングなどを活かせる環境でインターンシップに参加したり、アルバイトをしたりすることが難しいという課題があります。そこで、僕たちが高専生と一緒に企業のお仕事を引き受けることで、その課題を解決しようと取り組みはじめました。本来、社会人になってから経験することを在学中に実現し、現在と未来を繋げる有意義な環境を提供しています。
"素が見られるビジネスコンテスト"で光る才能を発掘
ーー高専人のために様々な支援を行っている横山さんですが、第一回NVAピッチでは準優勝を受賞されました。参加のきっかけはどんなことだったのでしょうか?
新潟で起業しているうちの一人として、「新潟を一緒に盛り上げていきたい」という想いに尽きます。NVAピッチが開催されたタイミングは、新潟県がスタートアップ企業を支援して盛り上げていこうと取り組み始めたタイミングでもありました。そんな中、新潟で起業している僕たちはまさにスタートアップ企業であったので、「出場しない理由がない!この流れに乗るしかない!」と、迷いなく出場を決めました。
ピッチでは、事業立ち上げで取り組み始めた、「"オンラインで行う"ビジネスコンテストを通した就活支援」についてプレゼンをしました。
ーービジネスコンテストは各方面で開催されていると思うのですが、"オンライン"という点が、横山さんのプレゼンでは特徴的だと思います。
まさに、"オンライン"で行うのが特徴でもあり、当社の大きな強みです。オンラインで行うことで、発表に至るまでのチーム内のやりとりが全て記録として残り、発表までの過程を運営側・企業側が確認することが出来る仕組みです。
ーー過程を見ることによって期待できるものは、どんなことなのでしょうか?
企業側が参加者一人一人の素を感じることができ、それが採用に繋がっていくと考えています。個々の性格やチーム内で担う役割などが、発表までの過程で浮き彫りになるのです。
例えば、あるチームで、
A君「このアイディアいいよね」
B君「それいいかも! ただ、もっとこうしたらより良くなるのでは?」
というやりとりがあったとします。
提案したA君に対して、B君がキラーパスを出したことでアイディアがまとまり、発表に至りました。しかし、発表当日はA君がプレゼンすることで、注目は必然的にA君に集まり、キーとなったB君は表に出てこないということになってしまいます。ビジネスコンテストは発表するまでに多くの人が関わり、意見を出し合いますが、それまでのやりとりがなかなか見えてこないのです。しかし、"オンライン"という要素をプラスして発表までの過程を記録に残すことで、参加者の個性を見つけることができます。その結果、採用する企業も求める人材を見つけやすくなるメリットがあります。過程を考慮することで、光る才能の発掘に繋がるという、今までとは違った就活を実現することが出来ると考えています。また、このビジネスコンテストの仕組みが当社の社名と繋がっています。
"過程(プロセス)"×"売り込む(セル)"="プロッセル"というわけです。
ーー社名にはそのような意味が込められていたのですね。過程に隠れている魅力を見出すという視点はNVAピッチで評価を得られたと思いますが、周りからの反応はいかがでしたか?
準優勝をいただいたことで、僕たちの事業についてより関心を持ってもらえるようになったと感じています。また、NVAピッチ準優勝により企業の認知度や実績が広まったことなどが、その後のJ-Startup NIIGATAの選定にもつながったのかなと思います。
ーーピッチから3年ほど経ちますが、事業はどんな広がりを見せていますか?
これまでビジネスコンテストは定期的に開催し、20回以上行っていますが、常に50人前後、多い時には150人ほどの人数が集まり、全国各地、海外からも参加いただいています。僕たちの取組に関心を持っていただいていることはとてもありがたいです。
また、関わらせていただく企業の幅が広がってきています。僕たちを信頼し、新たな企業の紹介につながるということも増えました。事業立ち上げ当初は、長岡の地元企業を中心にお仕事を受けておりましたが、現在では全国各地の企業と関わらせていただいています。僕たちの世界が広がると同時に、サポートする学生たちに、より幅広い選択肢を提供出来るということなので、これはとても大きな変化です。
また、僕たち自身の変化としては、仕事に対する姿勢が変わってきました。起業当初はクライアント側からの提案を待っている受け身の状態でしたが、今では自分たちから「こんな取り組みをしたらどうですか?」と提案をすることが出来るようになっています。こうした様々な変化はNVAピッチから始まり、多くの方々からの背中を押していただいた結果だと思っています。
高専人としての経験を活かし、高専人を幸せに!
ーー皆さんが支援する対象は基本的に高専人だけなのは理由があるのでしょうか?
僕が経験した歯痒い思いが関係しています。「周りの人と違う道を」と選んだ高専ですが、その世界に飛び込んでみると、色々な壁にぶつかりました。留学の奨学金の対象に高専が含まれていなかったり、高専という学校がどんなところか知らない方に偏見を持たれたりと、何だか恵まれていないなと感じることがしばしばありました。同じ高専人にはそんな思いをして欲しくないと考え、事業を立ち上げています。そのため、当社では「高専人を幸せに、そしてその周りへ」という想いを会社のビジョンとして掲げています。目標としては、高専に入学して高専人になった瞬間からその先の未来まで、可能な限りサポートしていきたいです。「高専人になったらこんな未来があるんだ」という、視野を広げるきっかけを提供することと、一度限りではなく、一人一人にその都度必要な支援を継続していきたいと考えています。僕たちの事業で、高専人の皆さんに充実した日々を過ごしてもらえたら嬉しいです。
意志を貫く強さが壁を乗り越える力に
ーーこれから起業を考えている方へメッセージをお願いします。
誤解を恐れずに言うと、僕は起業を考えている人には「起業しない方がいい」と敢えてアドバイスをしています。その理由としては、自分の強い意志を持って起業をして欲しいからです。誰かから「起業した方がよい」とアドバイスを受けたり、背中を押されて起業した人は、色々な困難に遭遇した時に後悔してしまうのではないかと思っています。
起業は「自分の意志を貫く強さ」がとても重要です。その強さがあれば、どんな壁も乗り越えて事業を継続していけると思いますし、様々な困難に遭遇した時でも後悔することがないと思います。起業は人を雇うことや会社として利益を出すことなど、想像以上に大変で、僕も起業をしてたくさん失敗してきました。しかし、なんとか乗り越えて今に至っています。自分の意志で起業したからこそ踏ん張れましたし、最初はわからなかったことが少しずつ見えてきた気がします。
起業を考えている方は、周りからどんなに反対されても意志を貫く強さを持って、チャレンジしていってほしいと思います。その意志があれば、関わってくれる仲間は増えていくと思いますし、どんな壁も乗り越えていけるのではないかなと思います!
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