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お米の国からお米を使った持続可能な社会を創る〜Jスタ新潟・経営者インタビュー③ 株式会社バイオマスレジン南魚沼〜

「J-Startup NIIGATA(以下、Jスタ新潟)」は、地域に根ざしたイノベーティブなスタートアップ企業を新潟県と関東経済産業局等が選定し、公的機関と民間企業が連携して集中的に支援することで、選定企業の飛躍的な成長と、新潟のスタートアップエコシステムの強化を目指す取り組みです。

▼設立趣旨などについては、こちらの記事もご覧ください。

Jスタ新潟には現在20社が選定されており、その事業内容もメーカー・農業分野・Webサービスなど多種多様です。 その中で、 


(1)成長性
(2)新規性・独創性
(3)優位性
(4)社会性


以上4つの観点から選定された、新潟から全国・世界へはばたくロールモデルとなるスタートアップ企業で構成されています。

今回は、そんな注目のJスタ新潟認定企業の中から、株式会社バイオマスレジン南魚沼(以下、バイオマスレジン南魚沼)副社長、奥田 真司さんのインタビューをお届けします!

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 (写真:奥田 真司 副社長/高知県出身) 

株式会社バイオマスレジン南魚沼について

バイオマスレジン南魚沼は2017年11月に設立、非食用のお米を原料に使ったプラスチック樹脂原料の製造・販売を行うメーカーです。 

主力製品である「ライスレジン」は、食用に適さない古米などを原料にして作られたバイオプラスチックで、同社が立地する南魚沼市・湯沢町エリアの自治体指定のごみ袋として採用されています。

石油系プラスチックの削減やフードロス削減などSDGsの観点からも、国内のみならず世界から注目される企業であり、2021年には初の海外進出も果たしています。

▼バイオマスレジン南魚沼のコーポレートサイト

様々な社会課題を持続的に解決するバイオプラスチック

――環境問題や、持続可能な地域づくりなどさまざまな社会問題がある中で、どういった課題に具体的にアプローチをされているのでしょうか。 

まずは地球温暖化防止への貢献です。

昨今ではプラスチックが全て悪者のように言われていますが、全てのプラスチック製品を一度に無くすことは現実的ではありません。

まずはプラスチックの割合を下げていくことが重要と考えており、その取組みのひとつがバイオプラスチックへの置き換えなのです。

当社のライスレジンでは、お米の含有量を最大70%まで上げる技術を確立しており、石油系プラスチックの使用割合を大幅に削減できています。

ライスレジンはごみ袋をはじめ、その安全性を活かして子ども向けのおもちゃや食器などの原料としても提供されています。 

また、現在開発中の非食用米を使った生分解性プラスチック「ネオリザ」を通じて、海洋プラスチックの問題にも貢献できるよう事業を進めております。

日本にはごみの焼却施設がたくさんあるのですが、アジア諸国ではごみ袋に入れたまま埋め立てされている地域がまだまだ多く、まずはアジアから事業を展開していく予定です。

主力製品の原材料であるお米は、食料自給率が低い日本において国内で自給できている数少ない農作物のひとつである一方、消費量の減少や農業従事者の高齢化による耕作放棄地の増加など様々な課題を抱えています。

私たちは、日本の基盤産業である農業に貢献することによって、お米の産地の地方経済への活性化に寄与していく側面もあります。 

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(出典:バイオマスレジンホールディングス Webサイトより) 

――ライスレジンは、他のバイオマスプラスチックと比較してどういったところに優位性がありますか? 

国内における原料調達と加工のしやすさですね。他の原材料と比較してもお米の優位性は明らかです。

まず、お米はほとんどが国内生産、国内加工であり、流通や加工の過程で古米や破砕米など非食用のものが発生するため、容易に調達できるという点が強みです。

諸外国ではサトウキビやトウモロコシを原料として作られるバイオプラスチックがありますが、原料を調達するための輸送工程などでCO2を排出してしまいますし、液化してから加工するため、製造工程におけるCO2排出量を比較しても、非食用のお米を樹脂に混ぜて作られるライスレジンに優位性があります。

また、ライスレジンには伸縮性を付与することができるので、ごみ袋のような柔らかいものの素材としての活用ができます。

他の原材料を使うとある程度の硬度となり、利用用途が限られてしまう点もありますが、伸縮性を付与できるライスレジンは加工できる製品の幅が広いという点でも優位性があります。

生産から加工、流通までを考えた事業構想

――まさにお米の国、日本ならではの優位性に着目されているのですね。
最近ではお米の生産にも乗り出しているとお伺いしましたが、古米や非食用米とは違う狙いがあるのでしょうか?

原材料としてのお米については、2020年から南魚沼で生産を始め、2021年からは福島県の浪江町にある休耕田を利用して生産しています。

東日本大震災の影響で10年もの間生産できなかった休耕田で、地域の農家さんに生産委託などをしながら進めていますが、農家さんに大変喜んでいただいており、手応えを感じています。

食用米と違って食味を気にする必要がないので、農機具の自動化・IT化など増産や生産効率化の研究も進めやすく、二期作などにも挑戦したいと考えていす。

 ライスレジンを原料とした「お米のおもちゃ」を製造販売しているピープル株式会社さんと共に、南魚沼で「ピープル農場」というプロジェクトにも取り組んでいます。

この農園では、お米のおもちゃの原料となるお米を生産しており、今後はエンドユーザー様との田植えや稲刈りなども構想しています。

基幹産業である農業から、製造やサービス、観光まで有機的なつながりをつくること。新潟発祥のベンチャー企業として、お米の国からお米を使った持続可能な社会を創ることを大事にしたいと考えています。

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 (出典:バイオマスレジンホールディングス Webサイト/ピープル株式会社の「お米のおもちゃ」) 

バイオマスレジンホールディングスとしての動き

――ホールディングス制になり、新潟市にはバイオマスレジンマーケティング、南魚沼市にはバイオマスレジンエンジニアリング、都内にはバイオマスフィルムなど機能によって分社化されましたが、ホールディングスとしての事業構想を教えてください。 

2025年までにバイオプラスチックを10万トン供給するという目標を立てています。

現在、南魚沼での生産量が約3,000tで、今後国内で10ヶ所の製造拠点を作る計画です。国内では2022年春に熊本工場が、夏に福島工場が稼動予定で、海外拠点の展開も行っていきます。

東南アジアでは、生分解性のプラスチック「ネオリザ」を中心とした技術を広めていく予定です。

環境省では、2030年までに200万トンのバイオプラスチック製品導入を目指す計画を立てています。

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(環境省:バイオプラスチック導入ロードマップより)

お米を原材料としたバイオプラスチック製品そのものの認知がまだまだ低いので、バイオマスレジンマーケティングとして分社化することで、認知度向上・シェア向上を目指しております。 

市町村の指定ごみ袋導入に向けての取組みのほか、地域のイベント時などで使われる環境美化袋への導入は新潟県内でもすでに進んでおり、長岡市・出雲崎町・阿賀町・村上市で採用いただいております。

昨年からはフジロックフェスティバルなど民間のイベントでも利用が始まり、これからの市場拡大も大いに期待できます。

――官民協働での環境への取組みや、大学との共同研究など、さまざまなセクターでコラボレーションが進んでいますが、今後どのようなところと組んでいきたいですか?

やはり、新潟発祥の企業ということで、県内企業との連携を強めていきたいと考えております。

当初は技術が追いつかずに、食品のパッケージなどは対応ができなかったのですが、直近では薄さ0.02ミリまで作れるようになりました。

昨今、企業の環境意識も高まってきており、まずはどんなことができるかといったところの検討から一緒に取り組ませていただけると嬉しいです。

地域観光との連携なども進んでおり、広域連携の観光地域づくり法人 雪国観光圏の観光プログラム内でライスレジン製のカトラリーを採用していただきました。

今後は、お米を中心とした観光コンテンツや環境教育の提供などについても、地元の事業者とタイアップしながら進めていきたいと考えています。 

志を共有できる方が集まる企業集団に

――奥田さんは2020年に証券会社からバイオマスレジン南魚沼に参画されました。この会社を選ばれたのはどのような理由からでしょうか。 

前職の証券会社では新潟支店に5年間赴任していました。南魚沼エリアの企業を担当する中で、当社と出会い、新潟の特産であるお米がプラスチックになるという技術に非常に驚きました。

地球環境保護と地域活性化の両立を実現しているビジョンに共感したことと、ちょうどホールディングス化するタイミングということで自らのキャリアがフルに活かせそうだと感じ、参画を決めました。 

――今後、どういった方に仲間になって欲しいでしょうか。

 「世の中の役に立ちたい」「新潟を盛り上げたい」という思いを共有できる方といっしょに働きたいと思っています。

地球規模の環境課題にビジネスとしてアプローチするという当社の理念、そして新潟発祥の企業として地元を盛り上げたいという思いに共感してくれる仲間が増えてくれれば大変心強いです。

事業は幅広い分野に渡るため、さまざまなバックグラウンドを持った方が活躍しております。異業種の方ももちろん大歓迎ですし、いずれは新卒の採用も検討しています。

知名度や給与だけで勝負するのではなく、社会貢献意識が高い方が活躍できるような採用を行っていきたいと思っています。 

最後に

世界的に高まる環境意識、必要とされる技術に挑戦し続けているバイオマスレジン南魚沼。その事業構想は、メーカーとしての役割だけではなく、休耕田の活用や世界での展開、観光を通じたエンドユーザーとのつながりなど多岐に渡ります。 

新潟から日本へ、日本から世界へ羽ばたくメーカーの今後の躍進に期待が高まります。ホールディングスとしての動きにも注目です!


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