農業から加工・流通・販売事業への第二創業~ベジタリアフードテック新潟株式会社~
こんにちは、公益財団法人にいがた産業創造機構(NICO)です。当機構は「新潟県の産業をもっと元気に」を使命に、チャレンジする県内企業を応援しています。
今回は当機構の機関紙「NICOプレス」より、ベジタリアフードテック新潟株式会社さんの取り組みをご紹介します。
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甘さを引き出す「焼き」の技術で
新潟産サツマイモの産地化を目指す
2021年11月に設立されたベジタリアフードテック新潟は、新潟市西区で栽培されたサツマイモを「焼き」に特化した加工で差別化し、流通・販売を行っている。砂丘地サツマイモの産地化を目指そうという事業には、代表がIT業界で培ってきた視点が生かされている。
砂丘地の耕作放棄地を活用した
サツマイモ栽培から始まった
新潟市西区にある「ぼくのさつまいも」は、ベジタリアフードテック新潟が運営する直売店で、焼き芋や焼き芋クレープ、焼き芋アイスなどを製造、販売。そのおいしさが評判を呼び、連日多くの人が買い物に訪れている。扱っているサツマイモは、新潟市西区の砂丘地で栽培されている「べにはるか」が中心だ。
ベジタリアフードテック新潟は、新潟市でサツマイモ農場を経営しているベジタリアファーム新潟からの第二創業という形で設立された。さらに、ベジタリアファーム新潟は、スマート農業を支援するベジタリア株式会社の子会社にあたる。会社を立ち上げた長井代表は、ベジタリアが提案する営農支援システム「アグリノート」の開発者であり、IPA情報処理推進機構がソフトウェア関連分野で優れた能力を有する若手の人材を認定する「未踏スーパークリエータ」でもある。
IT技術者としてキャリアを重ねてきた長井代表が農業に興味を持ったのは、アグリノート開発の頃から。「農業のそれぞれの作業には必ず理由があり、農機を自分でカスタマイズするなど、農業者は技術者なんだなと感じたんですね。そういう意味でITと農業は親和性があり、農家の人とIT技術者はすごく話が盛り上がるんです」。
そんな中、新潟市が農業特区に指定されたタイミングで、西区四ツ郷屋の耕作放棄地をどうにかできないかという話が持ち上がる。長井代表は「せっかくやるなら、産地と呼べるものになるような作物を作りたい」と思案。「消費者に注目されやすく食事にもスイーツにも使えて、体験が伴うものがいい。作り手視点としては砂丘地に向いていて、素人でも作りやすいもの。その方が、今後の拡大もしやすい」という観点からサツマイモを選んだ。
「焼き」で強みを作るため
化学反応が起きる温度帯を探る
ベジタリアファーム新潟で栽培を始めたサツマイモを3~4年スーパーで販売し、その間、長井代表は「素材の魅力をどう高めればよいか」ということを追究した。「焼き芋はスーパーなどでも売っていますが、焼き方にこだわっておいしさを引き出せば強みになる、と考えました」。専門書籍や論文を読み、オーブンでひたすら焼き方を研究。「焼くときの温度によって甘さは変わります。その化学反応が起きる温度帯を見つけるため、センサーを使ってイモの中の温度を測りながら試作を繰り返しました」。
こうして、誰が焼いても最もおいしくなる焼き方のマニュアルを作り上げ、加工・流通・販売を手掛けるベジタリアフードテック新潟を創業した。会社の一部門としてスタートする方法もあったが、オーブンや冷凍庫などの設備導入、家賃、人件費などスタートから多くの費用がかかることから、「新潟県企業内起業・第二創業推進事業」の支援を活用することにした。また、その後に企業と取引する際においても、新たな法人であることで話がスムーズに進むというメリットもあったという。
そして2021年、「ぼくのさつまいも」をオープンし、甘さを引き出した濃厚な味わいの焼き芋を提供。規格外品は焼いてペーストに加工し、クレープやアイスなどの加工品も作っている。こうしてまずは個人消費者向けに販売を始めたが、最終的に目指しているのはBtoBだ。「産地化するには、やはり需要が必要です。クレープなどの加工品を作っているのは、サツマイモの活用例を模索し、取引先に見せるためでもある。将来的には加工品を広く全国に販売していけるようになればと考えています」。
産地としての文化が
育っていくことを目指して
販路開拓は長井代表が担当。店のオープン前からSNSを使い、農場なども含めて情報を発信してきた。そして「ぼくのさつまいも」オープンがネットメディアに取り上げられたことをきっかけにテレビなどから取材が相次いだ。そこから企業からの引き合いも舞い込むようになり、ペーストが大手乳業会社のデザート商品に採用されるほか、11月からは地域の名産品を集めて販売している「わくわく広場」(本社・千葉県)が展開する約50店舗で、冷やし焼き芋、焼き芋クレープ、焼き芋アイスが販売開始となる。
ベジタリアファーム新潟では現在1ヘクタールでサツマイモを栽培しているが、半年で使い切ってしまうことから、来年度は倍の2ヘクタールでの栽培を計画。
「砂丘地で作られる野菜はどれもおいしくて、砂丘地は新潟の農業の宝でもある。その力を発揮させていくのに、サツマイモはとてもいい素材で、“焼き”という加工によって付加価値を高めていきたい」という長井代表。ここまで順調にステップを上がっているが、ここまでの戦略づくりはIT企業で培ってきた、データを蓄積し、分析しながら手法を作り上げていく経験にあるという。「新潟産サツマイモを全国へ発信していく中で、産地としての文化が根付いていってほしいと思っています」。
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終わりに
いかがでしたでしょうか?
NICOプレスでは、今回ご紹介したベジタリアフードテック新潟株式会社さん以外にも、毎号様々なテーマで県内企業の取り組みをご紹介していますので、ぜひご覧ください!
https://www.nico.or.jp/syuppan/