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ドローンと人を繋ぐ、「ピース」として未来を支える

今回は「J-Startup NIIGATA(以下、Jスタ新潟)」の選定企業である、TOMPLA株式会社の特集記事をお届けします。

Jスタ新潟
地域に根ざしたイノベーティブなスタートアップ企業を、新潟県と関東経済産業局等が選定。公的機関と民間企業が連携して集中的に支援することで、選定企業の飛躍的な成長と、新潟のスタートアップエコシステムの強化を目指す取り組み。
▼設立趣旨などについては、下記HPもご覧ください。


藤本 高史(ふじもと たかふみ)
1989年北海道北見市育ち。静岡大学農学部を卒業後、東京の化学香料メーカー、大手医薬品メーカー、人材系メディア企業に勤務。3社で得た商品開発サポート・マーケティング・ノンデスクワークの現場課題についての知識を活かし、2021年3月にTOMPLA株式会社を設立。自治体と連携してドローン配送に関する実証実験や企業の新規ドローン事業の支援を手がけるなど、社会におけるドローンの可能性を探りながら事業を展開している。



ドローンと人の共生が作り出す社会を目指して

ーーTOMPLA株式会社の事業内容を教えてください。
TOMPLAの主な事業内容は、ドローン・ロボティクスに特化した現場支援です。ドローンビジネスの構想からコンサルテーションまで伴走し、事業の実現を叶えます。ドローン運行に必要なマニュアル作成などをサポートし、企業がドローンを効率的に運用できるようにするドローン運行管理業務支援ドローンソリューションコンサルティング設備の管理・メンテナンスの課題を解決する工場設備管理など多岐にわたります。創業時は街中でのドローン活用にフォーカスしていたため、ドローン配送事業も手がけていますが、現在は受託飛行業務ではなく、企業の内製化支援が主となっています。

※ドローン
無人であり、遠隔操作または自動操縦で飛行できる200g以上の重量の機体

※コンサルテーション
援助が必要な人に対して、異なる専門性を持つ人たちがより効果的な援助活動を行うこと

ーー具体的には、どのようなお仕事が多いのでしょうか?
全国の工場現場における、ドローンを活用した点検業務に関するご依頼です。高度経済成長期に建設された多くの工場は、50年近い年月を経て老朽化し、毎日のように配管や配線の不具合が起きていることが多く、不具合や故障の原因特定や点検のために足場を組んで数千万円のコストをかけていました。しかし、ドローンに可視カメラや赤外線カメラを搭載することで亀裂や水漏れの特定をすることが可能となり、ドローンを活用することでコスト削減、現場作業の迅速化、安全性の向上などが期待できるようになりました。当社は各地の現場に対応するため、全国に約50人以上いる産業用ドローンパイロットと連携し、万全のサポート体制を整えています。

自分の強みを活かせる事業を見出して起業

ーー会社員として様々な企業で経験を積んでいく中で、どうして起業しようと考えたのでしょうか?
私の周りにいる方がどんどん起業をしていく環境だったからでしょうか。最後に入社した人材系メディア企業では、私を採用してくれた上司や身近な先輩たちが続々と起業しており、自然と私も起業しようと考えるようになりました。どの業界で起業にチャレンジしていこうかと考えていた時、街中でドローンが活躍していくための法改正がなされていたタイミングだったこともあり、ドローン事業に目をつけました。その後、2020年にビジネスアイデアコンテストで準優勝を果たしたことで、ドローンビジネスのアイデアが具体化し創業に至りました。

ーーまだまだ確立されていない業界で起業することに不安はありませんでしたか?
不安よりも「新しい産業を作っていくという点が自分の性分に合っているな」という期待の方が大きかったです。様々な情報を収集しながら全体の情報整理が出来ることは自分のキャリアの強みだと思っています。そんな私から見ると、新しい産業の情報は集約されていないだけでなく何が正解で何が不正解なのか、つまり成功例と失敗例が複雑に混ざり合っていて分かりづらいと感じました。そのため、私の強みである情報整理のスキルが、ドローン産業という新しい産業で活きるはずだと確信しました。

ーー藤本さんは東京に在住ですが、なぜ新潟で起業されたのでしょうか?
"自治体とのコミュニケーションがとりやすい"と感じたことが本社を新潟に置く決め手でした。ドローンを街中で活用するには、その街を管理する自治体と連携することが必要不可欠です。自治体との実証実験を実現するために、我々の事業に最も興味を持ってくださった新潟県で起業しようと考えました。また、共同創業者の拠点も新潟にあり、信頼出来る存在がいるというのも非常に大きいです。

繋がらない情報も自分たちがピースとなって埋めていく

ーー情報整理とは具体的にどのようなプロセスで行っていくのでしょうか?
まずは一次情報、つまり現場の情報を取りに行くことが重要となります。ドローンに実際に関わっているエンジニアやパイロット、さらにはドローンを活用してくれるような企業の方々の情報を収集します。情報を集めることで、一見すると"エンジニアが出来ること"と"企業が求めていること"が一致していないように見えることも、この情報を繋げるには私たちがどう介入していけば良いのかが見えてきます。介入の方法は、情報を軌道修正する場合、間に別の情報を足してあげる場合など様々ですが、最終的に情報同士を繋げていくことに変わりはなく、この作業を情報整理と呼んでいます。

ーー情報がつながった事例にはどのようなものがありますか?
ドローンが現場で使われるために、足りないピースを埋めていくというアプローチで成功したのは新潟市との連携です。現在は新潟市と連携をして、ドローンを飛ばせるフィールドを作っています。ドローンを飛ばすには様々な規制の関係で山奥まで行かなければならない事も多いのですが、その規制自体がドローンを普及させる障害になっていて、現状の課題であることがわかりました。自治体としては、もっとドローンの活用を推進して欲しいというご意見があったため、当社は「信濃川上空であれば一定の安全配慮を図りながらドローンを飛ばせる場所として整備できるのではないか」と提案しました。その結果、ドローンを使いたい事業者と場所を貸し出せる自治体を結びつけ、ドローンを飛ばせるフィールドを用意することが出来ました。

多角的に背中を押してくれるJスタの存在

ーーJスタ新潟に認定されたことでどんな変化がありましたか?
周囲からの信頼度が格段にアップしました。Jスタそのものの知名度が上がってきているので、全国どこへ行っても「Jスタに認定されているんですね!」と言っていただけます。Jスタに認定されているということが、企業を判断する1つの指標にもなっているのではないでしょうか。
また、いろいろなサポートプログラムも心強いです。スタートアップに関するプログラムの情報が定期的に入手できますし「こんな情報があったのか」と驚くこともあります。自分でキャッチアップするよりも多くの情報を得られるので、事業の可能性を広げてくれるチャンスを逃すことがありません。
様々な角度から背中を押してくれるJスタの存在は大きい
です。

ドローンが人手不足の現場に革新をもたらす

ーー創業して3年が経過しましたが、事業はどのような広がりを見せていますか?
創業初期の2年間はノウハウの蓄積と実証実験を重ねました。3年目からは、蓄積したノウハウを活用した取り組みを開始しています。今ほどドローンが普及していない中で、特に街中での実証実験を行うというのはハードルが高く、ドローンが街中に飛ぶことに対する市民や行政の不安がありました。まずはその不安を解消して飛行許可を得るということが最初の壁でしたが、丁寧にコミュニケーションをとることで理解も得られ、乗り越えることが出来ました。
一方で、ドローンを活用したい企業と、活用して欲しいエンジニアがお互いに繋がりを求めているのにも関わらず、方向性が全く逆であるという時は悩みます。まさに今悩んでいるところではありますが、企業側から改善していくパターンもあればプロダクト側から改善していくパターンと両方あります。ただ、何が正解かはいまだに模索中というのが正直なところです。

ーー実証実験での学びはどのように事業に活かしていますか?
ドローンの事故原因を分析して改善策を提案する「事故解析サポートサービス」の展開に繋がっています。第三者の立場から分析することで公正な評価と改善策を提供できる信頼性の高いサポートであり、当社ならではのサービスです。
一方で、ドローンの機体開発や運行に必要なアプリケーションの提供など、ハードウェアとソフトウェアの自社開発を新たな取り組みとして行っています。2024年5月には飛行安定センサーを搭載し、ドローンの飛行訓練を行っていない人でも扱える屋内用機体の予約販売を始めました。価格は従来の屋内用ドローンの10分の1の価格を実現することで、より現場に取り入れやすくなるのではないかと期待しています。アプリでは、ドローンの管理やパイロットの情報を一元管理出来るような仕組みを現在構築中です。

ーー着実に進化しているTOMPLAの今後のビジョンを教えてください。
現在の日本は、現場で働くノンデスクワーカーの人手不足という課題を抱えています。2030年までに700万人の人手が不足すると予測されているほど深刻な問題です。しかし、この問題は単にDXだけでは解決しないと思います。DXはデスクワークの効率化を得意としているため、現場の人間が働く作業を完全にデジタルに置き換えるのは難しいのが現状です。そこで鍵となるのがドローンやロボティクスの活用です。私たちはドローンだけでなく、設計や製造を手がけるロボティクスの分野にも取り組んでいますので、この技術を駆使することで日常生活だけではなく、現場における人手不足の解消を目指しています。工場の整備や管理、配送などの現場において、私たちの技術は大いに役立つのではないかと期待しています。

起業をするなら環境を変えよう

ーー藤本さんから起業を考えている方へ、アドバイスをお願いします。
起業を考える人にとって最も重要なのは"環境"だと思います。周りに起業される方が多い環境に身を置いてみてください。その方たちと繋がることで、自分が繋がりたいと思っている方々と出会えるはずです。また、起業した後は事業を続けていくことが課題ですが、これには熱量が非常に大事だなと思っています。自分のやる気は自分でしか生み出すことができません。経営者は誰よりも熱量を持たなければいけない存在なので、その熱量が尽きる時は会社が尽きる時だと思えるほどの分野で起業することも大切だと思っています。
「自分の欲しい未来はこれだ!」と明確にイメージすることが熱量を保つための秘訣だと思います。私の場合は海外のSF映画や昔の映画などを観ることで起業当時のモチベーションを取り戻しています。自分にあった熱量の保ち方をぜひ探してみてください。

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