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起業家支援のこれから ー起業後の飛躍的成長を目指して[後編]ー

新潟県

前回は、新潟における起業支援の現状や今後についてご紹介しました。


今回は起業・創業支援について、スナップの支援を受けて新潟県から生まれた起業家のHUB SAUNA株式会社 代表取締役の冨田翼空さんと、民間の支援企業・団体という視点から、新潟イノベーションベース(以下:NIIB)代表理事の遠山功さんにお話を伺いました。


スナップ発の起業家から、会社立ち上げのリアルなお話を伺いました。

まずは新潟大学在学時にスナップからサウナ事業で起業した冨田翼空さんに起業に至るまでの苦労や、今後の展望について詳しくお聞きしていきます!


HUB SAUNA株式会社 代表取締役 冨田翼空さん

〈プロフィール〉
冨田 翼空(とみた たすく)
1998年阿賀野市水原生まれ。在学中に複数社でのインターンシップ経験やビジネスコンテストでの受賞を経て、大学3年次にHUB SAUNA株式会社を創業。「ありのままを大切にする世界を創ること」を実現するために、テントサウナイベント、テントサウナの開発、小屋サウナの開発・販売、サウナ施設のコンサルティングなどアウトドアサウナ事業を展開。

サウナ事業で起業し、サウナを新潟で広める

ーーまずはどの領域で起業し、どんな想いを届けたいのか伺えますか?
冨田:「人類が自然体でいられる世界をつくる」をミッションに掲げ、サウナ事業を主軸として事業を展開中です。社会的評価に縛られている人が多い中、サウナという体験によって人の心を豊かにしたいという想いからこのビジョンを掲げています。

サウナ事業を通して人々の心を満たしたいという想いから、サウナイベントのプロデュースや、サウナ施設の監修を行っています。直近では燕三条の企業さんと協力して小屋サウナを制作し、その販売も行っています。


起業を決めるきっかけとなった「忘れられないサウナ」

ーー今回、スナップ発の起業家ということでお話を聞かせていただいおりますが、起業するきっかけ自体がスナップにあったのでしょうか。
冨田:そうですね。ただスナップにいきなり入ったのではなく、新潟大学在学中に所属していたアントレプレナーシップ(起業家精神)育成を目指した伊藤ゼミのつながりでスナップの逸見さんに出会いました。まだ立ち上がる前のスナップに、「おいでよ」とお声がけいただき所属することになりました。スナップに入ったことで起業に対する想いが一気に強まったのは間違いなく、スナップには本当に感謝しています。

またスナップでは先輩の起業家にも大変お世話になっていて、室田さん(株式会社Riparia代表取締役)、大塩さん(株式会社SNOWHITE代表取締役)といったスナップの先輩起業家も、起業を後押ししてくれました。先輩方と接することで良い意味でのプレッシャーを感じ、刺激を受け続けたことでスピード感を持って起業することができました。

ーー起業を決める原点はスナップの逸見さんとの出会いから始まっていたんですね。起業を決意され、そこからどのように「サウナ事業」へ領域を絞っていったのでしょうか?
冨田:起業を決意し、様々な準備をしていた時に実は精神面がすごく不安定な時期がありました。そんな時に逸見さんと丸山健太さん(株式会社ソルメディエージ代表取締役)にサウナへ連れて行ってもらったことが、「サウナ事業」で起業するきっかけになりました。

それまではむしろサウナが得意ではなかったのですが、その時に入ったテントサウナが本当に最高で今でもその体験が脳裏に焼き付いています。人生で初めて心が「ととのう」という経験をし、メンタルが落ちていた自分が心から生を実感することができ、その時に「サウナ」で起業しようと決心しました。


起業後に直面した、高成長を阻む壁

ーースナップとの出会いから起業されるまでの道のりをお聞きしました。起業された後、次のフェーズに進むために今はどのようなアクションをされているのでしょうか?
冨田:現在はどうやったら事業を成長させられるかを考えるというタイミングです。例を一つ挙げると、新規事業を始める際に、ネームバリューがある企業から似た事業がリリースされるだけで、簡単に市場が取られてしまうというスタートアップならではの課題があります。

そういった状況でも市場のシェアをキープし続けるためには、自分自身の会社のプロダクトブランディングやポジショニングをしっかり作っていくことが大切で、今はそこに力を入れているところです。

ーー実際に起業して事業を行う上での課題感も多いのですね。他にも冨田さん自身が感じた、サウナ事業を進めていく際の課題などがあれば伺ってもよろしいですか?
冨田:そうですね。サウナ業界は若いプレイヤーがまだまだ少ないのが実状です。しかし、だからこそ若い自分が参入することに意義があると思っていて、この領域でプロダクトを生み出し続けるべく奮闘しています。

ただし知識面では、サウナ施設の監修など、サウナ関連の企業の中に実際に入ることで初めてわかる情報があるのも事実です。また、内装の綺麗さや性能といったハードの面でも、悔しいですが長くサウナ事業を行っている大手に敵わないこともあります。そんな中で生き残り、事業を推進していくためにインフルエンサー的な立ち位置を模索するなどして、様々な方法を試行錯誤している段階です。

ーー現在は多面的なアプローチを行われているのですね。様々な困難へ今まさに立ち向かっているかと思いますが、今後はどのような展開をお考えですか?
冨田:テントサウナの領域に力を入れていきたいという想いとともに、やはり市場が小さいため急成長を狙いづらく、全力投球しきれていない現状もあり、その狭間で葛藤しています。

そんな中、3〜5年後の中長期的な計画も考え、サウナ事業に並行してECでの新規事業も現在企画している最中です。メインの事業に並行して新規事業を創るのは容易ではないですが、成し遂げていきたいと考えています。


起業後の成長支援にかける熱い想いを、遠山さんのご経験も踏まえて詳しくお聞きしました。

次に、「起業後の起業家支援」を精力的に行っている、NIIB代表理事の遠山さんにお話を伺いました。NIIBやEO北陸といった、起業家の圧倒的成長を促す支援拠点の立ち上げや、またその先での上場規模の会社を増やすための見解について詳しくお聞きしていきましょう!


新潟イノベーションベース 代表理事 遠山功さん

〈プロフィール〉
遠山 功(とおやま いさお)
1977年、東京生まれ。15歳から多数のプログラミング言語を習得し、さまざまなプログラム開発を手掛ける。2000年、東京電機大学を卒業後、システム開発会社に入社。その後、CRM・データベースマーケティングを支援する会社でマネジメント・データエンジニア・コンサルタントを経験。2005年、27歳でINSIGHT LAB株式会社(前身はアイウェイズ株式会社)を創業。代表取締役社長に就任。2013年より東京電機大学非常勤講師を務める。MBA(経営学修士)取得。新潟県村上市にルーツを持つ。好きな食べ物 はお米と納豆、枝豆。趣味はトライアスロン。

起業家の圧倒的な事業成長を支援しつつ、継続的な成長を可能にするスキームづくりに取り組む。NIIBから見た新潟の現状

ーー遠山さんが行っている「起業後の圧倒的な成長」を支援するという部分を早速伺っていきたいのですが、記事を読む方のためにも、まずは運営していらっしゃる起業家支援団体NIIB(読み方:エヌアイアイビー)について伺えますか?
遠山:わかりました。まず、最近は個性的なスタートアップ支援拠点が新潟にも続々と増えてきていて、前回インタビューされているスナップ新潟さんを始め、起業の「0→1の支援」を強力に推し進めてくれる拠点が多数あります。

ただしそんな中であっても1→100のような高度な成長の支援は容易ではない上に、そういった支援拠点、支援団体は現在数が少ないです。起業家の成長における1→100への成長を重点的に支援しているのがNIIBです。

ーーそんな1→100の成長支援をされている中、新潟の現状をどのようにお考えですか?また、どのようなことが今の新潟に求められていると思いますか?
遠山:2020年の夏から本格的に働く拠点を新潟にしているのですが、その中で感じたのは東京と比べ圧倒的な推進力のある経営者が新潟には多くないということです。

新潟には、個性的なスタートアップ企業がたくさんありますが、事業を成長させていくロールモデルは少なく、起業してから伸び悩む起業家が多いです。そこをサポートする必要があるわけです。他県でも「起業後のさらなる成長」というフェーズで伸び悩む起業家が多く、その層の支援をしたいと考えています。

ーーなるほど、容易ではない1→100の成長を支援するために土台を整備していく必要があるのですね。そのためにNIIBを設立されたということになるのでしょうか?
遠山:大枠はその通りです。前提としてまずは新潟の起業家に対して、外部や横のつながりから「もっとやらなきゃだめじゃん」と思えるような刺激を与える必要があると感じていました。

そこで、世界的な起業家団体の「EO - Entrepreneurs' Organization(起業家機構)」に所属する起業家が講演会等を行い、ノウハウを提供する場であるNIIBを立ち上げているわけです。新潟の起業家はNllBを通して全国の企業との交流を持つことができます。そういった横同士の刺激から、さらなる成長を目指せる環境を用意しています。


成長の歩みを止めないための「活性化の刺激」が起業家には必須

ーー1→100の成長を支えているのがNIIBなんですね。やりたい、成し遂げたいといった想いとは裏腹に、どうしても伸び悩む起業家たちがその状況を乗り越えていくために必要なモノはなんだとお考えですか?
遠山:起業家が現状を変え、地域の経済全体を活性化させていくためには「新しい産業を作ろう」くらいの熱い気持ちがそもそも必要だと思っています。ただし地域の経済に定着できるような、新しい経済・産業を一人で作ることは容易ではありません。

そのためには自分の事業にかける想いを活性化させるような、他からの刺激が絶対に必要だと思っています。「他から」は産官学全ての分野の人達が当てはまり、そういった活性化させるような刺激を与えられる環境づくりから取り組んでいこうと考えています。

ーーなるほど。遠山さんは特に刺激し合える環境やコミュニティを重視していらっしゃいますが、その理由をもう少しお聞きしてもよろしいですか?
遠山:起業したことで満足してしまう方や、起業してすごいねと周りから褒められ、そこで燃え尽きてしまう方を見てきて「すごくもったいない」と感じた場面が多々あるからです。「もっとやるぞ」という熱のある起業家に全く出会えていないと感じていました。

そもそも確率論的に母集団が多い方が成功する人が出てきやすいですが、新潟は起業家自体がまだまだ少ない。さらには起業家の数が少ないと注目を浴びやすく、注目されるとそこで成長曲線がゆるやかになってしまいやすいです

さらには事業で上手くいっていないことがあったとしても、みんなの期待を一心に背負っているから、それを周りに相談しにくくなっていくという悪循環もありえます。


伸びている起業家に共通する、互いに「ギラギラしあえる環境」

ーーここまでは、現状の新潟や起業家が成長するために必要なモノという話題で話を進めてきましたが、 ”遠山さん” が起業家支援において心がけていることをさらに詳しくお聞きできますか?
遠山:何かを支援するというよりは、成長度合いの高い人たちを仲間にするという感覚でそもそも起業家支援を行っています。

実は、「起業家は教わって伸びるものではない」というのが持論です。誰もやってこなかったことをやるのが起業のそもそもの意義だと思うんです。起業家によくありがちなのが、「〇〇さん付いていきます」という姿勢で、それでは付いて行った先の人と同じになってしまう。だから単に教えたら伸びるというものではないなと。

ーーなるほど、教え方や伝える内容に加えて、「伸びる環境」があることが重要なんですね。このような特徴は首都圏などで伸びている起業家に多いのでしょうか?
遠山:そうですね、、、東京で伸びている人を見ると、そういう考えの人が多いなと思います。教わるというよりも、他の企業の良い所を吸収し、色々なビジネスの要点を抑えて自分の形にしていく人が強いかなと。

自分で吸収して伸び切って行く姿勢」が、加速的な成長を促すエンジンになってくれるのではないかと思います。

ーー首都圏と比べ、新潟で成長への貪欲さという意識が醸成されにくいのは、地理的な要因もあるのでしょうか?
遠山:それはあると思います。新潟は農業大国で比較的恵まれている県だと言え、極端に言えば「仕事がなくても食べていける」状態だったので、新しいことをしなくても大丈夫というマインドが受け継がれているのかもしれません。

あとは、新潟の人が何か新しいことをしようとする時には、東京に出る風潮があるので、結果的に県内に向上心の強い人が残らない現状はあると思います。


年商1億円の壁突破に向けて

ーーここまでお話ししてきた点以外に、首都圏と新潟の現状を対比した際に、成長を阻害するような要因は何かありますか?
遠山:情報格差と教育格差が大きな要因としてあると思っています。1つ目は少し個人的な意見になってしまうかもしれないのですが、新潟は起業家同士の内部の繋がりが強い分、外部コミュニティの情報が受け入れにくくなってしまい、首都圏に比べて情報格差が大きくなっている気がします。

そして2つ目の教育格差とは、誰もやってない新しいことをやっていくという教育受けていないということです。真面目な県民性だから教わったことをちゃんとこなすことができ、かつ全員が同じ方向を向くことが正だという意識が共有できているのは、素晴らしいことだと思います。

ただし一方で、クリエイティビティやイノベーションのような「突出した新しいこと」を悪だと判断してしまいやすく、残念ながらこれは短所になってしまう。この2つの格差が大きいと感じています。

ーーそういった状態から脱却し、起業後の飛躍的な成長を目指すためには何が必要だとお考えですか?
遠山:1つは、年商1億円に到達する前から、県外のマーケットも視野に入れたビジネスの展開を考えることが必要だと考えています。県外のマーケットに進出すれば、そこには競合も必ずいるはずで、それらの競合に勝ちうる競争戦略の確立も平行して進めるはずです。そういった成長戦略が今の新潟には求められていると考えています。

軸足の片方は新潟に置き、新潟でなにかしらの関わりを持ち続けて成長していく内にやがては、年商1億円の壁を突破していると思います。

また、県内から一度外部へ出てみることにより、「新潟のモノ」と「外部のモノ」を組み合わせた新しいサービスを生み出すというサイクルを創ることも可能だと思います。新潟の中だけでは活用しきれない素材やリソースも沢山あります。ウチとソトのモノを掛け合わせることによってイノベーションを起こせられればさらに良いと思います。


起業家を目指す方や、起業まもない方へ

ーー新潟で起業家を目指す方や、起業まもない方にメッセージをお願いします。
遠山:利益を追求するという意味での厳しさが必要だと考えています。周りの支援が充実しすぎていると突き抜けて成長する人が少なくなってしまう可能性があると考えていて、起業家たちが今以上に売上へコミットする意識を強固にできると次のステップに進めると思っています。

CSRやSDGsなどの必要性が話題に上がりますが、会社としてそこに力点を置きすぎて、利益を上げられない状態になってしまうとただのボランティアに終始してしまい、経済の一角になることはできません

株式会社は、多くの人から株と引き換えに出資をしていただき、そのお金で会社を動かしているのだから、利益を上げることが大前提でそこを意識する起業家を増やしていきたいと考えています。

ーー最後に、一言お願いします。
遠山:是非、恥ずかしがらずに「夢」を語りましょう。

特に地方では、「自分はこういう社会を作りたい」ということを言い続けると、同志が集まってくると思います。実現したい世界、成し遂げたい想い、やりたいことを発信していくことがその夢の実現への近道だと思います。


おわりに

今回は起業後の成長支援をテーマにお話を伺いました。HUB SAUNA株式会社 代表取締役の冨田翼空さん、新潟イノベーションベース 代表理事の遠山功さん、ご協力ありがとうございました。

起業してからどう飛躍的に成長していくのか、またその成長をどうサポートしていくのかを知ることができ、ますます新潟の「起業」に熱が入っていく未来が垣間見えました。今後も起業家たちの更なる活躍に注目です!


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