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馬が役割を持って生きる社会を目指して 〜観光・福祉と馬を組み合わせた事業で地元に活気を〜

今回は、新潟県U・Iターン創業応援事業に採択され、新潟でUターン起業をされた株式会社ウマノバ 代表取締役 髙井 一馬さんに、Uターンに至った経緯や会社立ち上げの想い、馬や動物に興味を持ったきっかけなどをインタビューしました。

株式会社ウマノバ 代表取締役 髙井 一馬さん

<プロフィール>
髙井 一馬(たかい かずま)
新潟県湯沢町出身。高校までを湯沢町で過ごし、その後山梨県の大学へ進学。動物に関することを4年間学び、ホースセラピーを行う福祉事業などの勤務経験を経て、2024年2月に地元湯沢町にて株式会社ウマノバを立ち上げる。2頭の馬「おこめ」と「ざらめ」を飼育しながら、「馬×観光」や「馬×福祉」で湯沢町を盛り上げていきたいと、ふれあい体験や餌やり体験などの活動を行っている。


幼少期からの夢を形に

ーー株式会社ウマノバは、どのような想いから立ち上げたのでしょうか?
私は小さい頃から動物が大好きで、大人になったら動物と一緒に仕事がしたいという想いがありました。なかでも、馬は日本で毎年約1万頭生まれていて、寿命は30年と言われています。30年も生きるこんなに大きな動物が1万頭も生まれているのにも関わらず、実際に馬と関わるのは、ほとんどが乗馬クラブの会員や競馬業界の方々です。そこで私は、社会で馬が役割を持って過ごしていけたらと思い、活動するようになりました。

ーー現在はどのような活動をされていますか?
子どもがたくさん集まるようなホテルやフィッシングパークなどで、ふれあい体験や餌やり体験など、主に観光イベントに関わる活動を行っています。初めはやはり、大きな馬に驚かれますが、参加いただいた皆さんが人参をあげたり撫でてくれたりと、馬をとても可愛がってくれるので、私自身とても嬉しいです。

実際に感じた、馬が持つ力

ーー小さい頃から動物が好きだったとお伺いしましたが、動物の中でも馬とともに事業を立ち上げようと思ったきっかけを教えてください。
動物全般好きだったのですが、「一馬」という自分の名前に馬が入っているので、将来どこかで馬と関わりたいと思っていました。しかし、馬と関わる仕事は基本的に経験者しか募集がありませんでした。仕事を諦めかけたところ、発達障がいの方向けにホースセラピーを行う事業所の求人が偶然出ていたので、申し込みました。そこで馬と関わるにつれてさらに魅力を感じ、会社を立ち上げるきっかけに繋がりました。

ーー偶然が重なった巡り合わせだったのですね。今後もご自身で福祉に関わる事業を行う予定はありますか?
今はまだ行っていませんが、将来的には福祉事業を立ち上げたいと思っています。私も湯沢町に帰ってきてから毎日馬と一緒に過ごしていますが、実際に安心感や癒し効果を感じています。福祉事業のイメージとしては、あと一歩で就職できそうな方や就職に向かって頑張る方を対象とした就労支援施設を作り、馬に癒されながら仕事ができる場所を設けたいと思っています。そのために今は、関係者の方々との繋がりができる場所を探しています。

ーー実際に起業をされてみて周りの方の反応はいかがでしたか?
馬がいるイメージができず、拒否反応を示す方も少なからずいましたが、温かく受け入れてくれる方が非常に多かったです。馬を連れて散歩していると、たくさんの方が挨拶してくれたり、「人参持ってきてあげようか?」などと話しかけてくれる方、散歩がてら様子を見に来てくれる方もいて、湯沢町に馬を連れてきて本当によかったなと思っています。

髙井さんが飼育する馬「ざらめ(手前)」と「おこめ(奥)」

地元湯沢町でのUターン創業

ーーUターンに至った経緯を教えてください。
実家がもともと湯沢町の岩原スキー場でホテルを経営していて、県外に出たときからホテルを継ぐためにいずれ新潟に戻ると決めていました。30歳になったら帰ろうと漠然と考えていたのですが、やはり動物と関わる仕事がしたいという強い想いがありました。しかし、湯沢町には動物と関わる仕事がなかったため、自分で立ち上げて自分のやりたいことをやろうと思いました。

ーーUターン創業によるメリットや強み、良かったことはありますか?
湯沢町は私の地元なので、知人が多く、安心感がありました。親や親戚だけでなく、その知り合いの方も気にかけてくれるので、そこが一番のメリットだと思っています。
誰かに相談するとその知り合いの方に繋げてくれることも多く、人脈が広がっていくこともUターン創業の有利な点だと思います。新しい場所へ自分一人で飛び込んで行くより、知人から一度アプローチしてもらう方が上手くいくような気がします。

ーーそれはとても心強いですね。一方で、Uターン創業における迷いや不安、苦労したことなどはありますか?
「馬×観光」や「馬×福祉」はあまり馴染みがない形態ですし、この辺りには大きな動物もいないので、急に馬が来たらどんな反応をするのか、実際にお客様として来てくれるのかという不安はありましたが、苦労したと感じることはほとんどありませんでした。のんびりした土地柄なので話が思うように進まないこともありますが、それはどの地方に行っても同じだと思います。デメリットだと感じることはほとんどなく、私としてはメリットばかりでした。

ーー馬と暮らす上で、移住先に湯沢町を選んだのは出身地であること以外にも理由があったのでしょうか?
湯沢町は雪がとても降るので、正直、馬を飼う上でベストな選択肢ではないと思います。雪が積もると散歩の場所を確保するために除雪の手間がかかりますし、雪が降らない地域と比べるとやはり大変だと思います。しかし、地元で好きな仕事がしたいという強い想いから、湯沢町を選びました。
湯沢町の特徴を活かし、今後は馬に乗ってスキー場の中をのんびり散歩したり、冬は馬にソリを引いてもらうなど、土地の特性と上手くコラボして湯沢町で馬を飼う意味を作っていきたいです。

ざらめと散歩をする髙井さん

馬と人がともに生きる社会を目指して

ーーU・Iターン創業による補助金の情報はどこで知りましたか?
私は湯沢町の地域おこし協力隊としても活動しているのですが、そのサポートやマネジメントなどを行っている、きら星株式会社の方に教えてもらいました。
受け取った補助金はリードロープや鞍などの馬具の購入に活用しました。馬具は基本、海外から取り寄せるので、どうしても値段が張ってしまいます。事業を自分で一から始める上で、購入費用の補助をいただけたのはとても助かりました。

ーー髙井さんの夢や今後のビジョンについて教えてください。
馬が社会の中で役割を持って過ごしていく世界を作りたいです。そのために、現在は観光・福祉と馬を組み合わせる方法を模索中ですが、それだけではない他の分野でも、馬が人に必要とされる場所を作っていきたいです。

ーー起業を考えている方や、U・Iターン創業に興味のある方に向けて、アドバイスや応援メッセージをお願いします。
私も初めはやはり不安がありました。事業の方向性が固まり切っていない状態から馬を連れて帰ってきましたが、実際に動き出してみると応援してくれる方がたくさんいました。
さまざまな補助制度や地域のサポートもあるので、まずは自分のやりたいことに向かう第一歩を踏み出して欲しいと思います。



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