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意外と知らない?行政薬剤師の仕事についてお話しします!vol.1(令和5年9月1日)

「その課長が務めた地域は、向こう3年間食中毒や不良食品の騒ぎが起こらない。」
そんな逸話を聞いて、いつの日かそんな監視員になりたいものだなぁと思って日々の業務にあたっています。

こんにちは!私は保健所で勤務をしている薬剤師です。
保健所の薬剤師というのも様々で、その中でも食品衛生や生活衛生に関する業務を行っている薬剤師です。
学生の皆さまへわかりやすく説明すると、青本(参考書)の④番の分野です。
いわゆる「衛生」分野に特化した薬剤師で、衛生関連の知識もさることながら法律を武器に、人々の健康を水面下で守る専門家(私はまだまだ道半ばですが、、、)集団です。
薬剤師の資格を活用し「食品衛生監視員」・「環境衛生監視員」として様々な業務に携わっています。

最大の使命は「健康被害を発生させない」こと。
これを達成することに心を燃やしていると言っても過言ではないかと思います。

例えば普段の生活の中で、水道水を飲んだり、飲食店を利用して健康被害が出ることを通常は想定していないかと思います。
健康被害が起こらないことが当然とする考えの中で、その当然とされている安全性を守ることが行政として目指すべき姿かと思います。

ところで肝心な業務内容についてですが、日々の業務の中でも最も大きなウエイトを占めているのが、食品の営業を始めたい!という相談です。
ラーメン屋やファミリーレストランなどの飲食店営業、パン屋やケーキ屋などの菓子製造業を営むにあたっては、手洗い設備や調理台、専用の調理室などの様々な施設基準があります。
書類の審査や現地の確認を行い、保健所長に許可されて初めて営業することができます。
営業許可を取得するうえでは、施設設備の整備が一番の課題となり、ここのやり取りが非常に重要となるため、保健所と営業者でお互いに齟齬のないように綿密なやり取りがなされます。

今回は、食品営業許可を取得するまでの、とある1日の流れを私の心情(カッコの部分)とともにお送りしたいと思います。

〜新規許可取得編〜

① 新しくお店を開きたいです!相談させてください!
(最初が肝心だからご新規さんはより丁寧に聞き取りだ。案外ここが一番大事な部分でもあるから細かい情報をできるだけ拾ってと。いろんな角度から質問をしていくぞ!)
② 施設設備はこんな感じです!図面の相談をお願いします!
(んー、施設基準に合わない部分があるな、、、基準をクリアしてもらうためになぜそれが必要なのかを説明しなくては。この資料を使うとわかりやすいかも?)
③ 指摘された図面を改善しました!申請書を提出します!
(わかってくれてよかった!丁寧に説明した甲斐があった!ここまでくれば許可取得までもう少しだな。)
④ 現場立入検査
(うんうん、いただいた図面通りで間違いないな。材質もしっかり確認して。水は、、しっかり出るな!衛生的な施設かな?食品衛生のリスクになりうる場所はないかな?よし!許可しても支障ない施設だ!)
⑤ 許可書交付 
(くれぐれも事故の無いように!)

かなり大雑把ですがこのような流れになります。
この一例では相当すんなりと許可まで持って行けていますが、
中には、どの食品許可業種を取っていただくべきか(34業種あります)、その施設でできるものなのか、など判断に迷うこともあります。
そんな時は、今までの対応事例をもとに課内の先輩方と意見を交わしながら方向性を決めていきます。
その際には、食品衛生リスクや影響範囲はどの程度か、法令に違反していないか等を総合的に鑑みながら判断をしています。
ここでひとつ言い忘れていましたが、課の中には薬剤師だけではなく獣医師や管理栄養士、一般行政の方もいらっしゃいます。
薬剤師だけの知識だけではなく、あらゆる視点から物事を見つめることができるので、つい見落としてしまうようなところも、互いにケアできるようなチームとして動くことができています。

話は戻りまして、、、
許可を出したら それでおしまい!とはいきません。営業者さんとはこれから長い長いお付き合いになっていきます。
食品衛生知識の向上を目的とした講習会や、食中毒が発生しやすい時期に向けての施設巡回など様々な場面で営業者とやり取りしていくことになります。
時には事業者さんから学ばせてもらうこともたくさんあります。
できる限り良好な関係を築きながら、一方的な関係ではなく保健所と営業者が互いに食品衛生の地盤を作っていけたらいいですよね。
また、食中毒が発生すれば、課が一丸となってその調査や原因究明、再発防止にあたることになります。
食中毒に関しては、健康被害に直結するものなので、スピード感を持って対応することが非常に大切です。

【食品衛生講習会の様子】

本当に一部分ではありましたが、このような仕事も薬剤師にはあるのだと知っていただけましたでしょうか。
標題や冒頭の部分でもお話をさせていただきましたが、我々の業務は事件や事故、苦情が全くない状態こそが成果の現れだと私は考えています。
ゆえに、表立っての成果は目に見えづらく、また業務の性質上指導がメインになるので、どうしても感謝される場面はかなり少ないと思います。
そのような中でも、「丁寧に説明してくれてありがとうございました」・「とてもよくわかりました」というような言葉を頂けた時はやはり嬉しくなるものです。

ここまでは業務についての紹介でしたが、最後に育児休業を取得したときのお話で締めたいと思います。
私事ですが、昨年の11月に第一子が誕生いたしました。
新潟県では近年、男性の育児休業取得に力を入れてきているものの、人員が少ない部署での育児休業の取得に、若干の後ろめたさを感じていました。
しかしながら、当時の上司に相談したところ、「取りな〜〜!」と快諾してくれたことで、勝手に背負っていた肩の荷が下りました。
やはり新潟県は育児休業を取得しやすい環境が整っているのだということも心強く感じ、その分仕事にもメリハリがつけられるのではないかと思っています。

ここまでお読みいただきありがとうございました。少しでも行政の薬剤師について興味をもっていただけたら嬉しいです。


ありがとうございました!本日は薬剤師(行政)回でした。
ブログでも、多くの専門職の方々に登場していただいていますが、県庁では職場の中で複数の職種の方が一緒に仕事をしていることもよくあります。だからこそ、各職種の視点で多角的に見れるので、心強いですよね✨
行政薬剤師の仕事はまだまだあります、ということで次回は本庁で働く職員をご紹介します。

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