🐙🚢海で働く研究員~水産研究職の仕事紹介~🐚🦀
個人的に大好きな水産職のブログ。理由は「おいしそう…」だけでなく、同じ県職員なのに一般行政職の自分とは全く違う世界でスペシャリストとして現場で活躍してくる姿がとてもかっこよく見えるから。
今回は水産海洋研究所のMさんに寄稿してもらいました!
「水産海洋研究所」って?
まだまだ皆さんの知らない組織が県庁にはあります‼
はじめに
こんにちは、水産職4年目のMです。
私はこの4月から新潟県水産海洋研究所に配属となり、研究員として勤務しています。
まだまだ分からないことも多いですが、この半年で感じた水産研究職の魅力をお伝えできればと思います!
↓水産職とは?という方は前年までの記事をご覧ください。
当所では海面を対象とした水産に関する幅広い分野の研究を行っており、私の所属する増殖環境課は主に魚貝藻類の増養殖技術、藻場(海の森)や漁場環境の保全に関する調査研究を担っています。その中から2つほど研究内容をピックアップしてご紹介していきたいと思います。
~アカモク養殖試験~
現在私は、アカモクという海藻の養殖技術開発に携わっています。
アカモクは佐渡ではナガモと呼ばれ、昔から食べられてきた海藻ですが、近年は環境変化の影響もあり天然の水揚げ量は減少傾向にあります。そのため、養殖によって得られるアカモクが水揚げの下支えになることが期待されています。
これまでの研究成果により、漁業者による養殖生産は実現しましたが、養殖に必要なアカモク種苗の生産の大部分は当所が行っています。
最終的には漁業者自らが種苗を作り、収穫まで行えるよう、技術の簡素化とマニュアル作りを進めています。
アカモク養殖では、種苗を3月から11月までの長い期間をかけて水槽内で培養して作ります。種苗の生育に悪い環境条件になっているとアカモクは何も言わずに弱っていくので(植物なので当然ですが…)できるだけ毎日様子を見て、必要に応じて光量の調整や水槽掃除などの世話をします。この世話がかなり大変なので、できるだけ培養期間を短くできるような技術を開発しています。
育てた種苗は11月中旬頃に試験のため海に出します。この時期の日本海は荒れるので、たいてい寒さと船酔いに耐えながらの作業になります…
海に出した時は5㎝ほどだった種苗も、翌年3月の収獲時期には最大で5メートル近くまで成長します。ここでは収獲量アップを目指して、養殖方法のさらなる改良を行っています。
ブルーカーボン関連技術開発
近年、地球温暖化による気候変動が顕在化してきており、新潟県内でも異常気象による災害の発生や農林水産業への影響がみられるようになってきました。これらの状況に対し、新潟県では、「新潟県2050年カーボンゼロの実現に向けた戦略」を策定し、2050年までに新潟県内における温室効果ガス排出量の実質ゼロを目標として、CO₂の排出削減と吸収量増大の2つの観点から対策を講じています。
CO₂の吸収源としては、森林などの陸上植物らにより固定される炭素はグリーンカーボンとして良く知られています。それに対し、海の中の海藻・海草をはじめとする海洋生態系を通して海に吸収・固定される炭素はブルーカーボンと呼ばれ、新たなCO₂吸収源対策として近年注目されています。
当所ではこれまで、水産業の持続的な発展を目的として前述した海藻養殖試験や、藻場回復・造成の研究に取り組んできましたが、これらの技術はブルーカーボンによるCO₂固定にもつながるため、研究の重要性がより一層増しています。
現在、当所では粟島で生じている磯焼け(藻場が消失し、回復しない状態)の原因や対策を調査し、CO₂の固定につながる藻場の回復に向けた研究を進めています。
これまでの調査の結果、粟島では巻貝類が海藻の芽を食べてしまう食害と、海藻からの胞子の供給不足が磯焼けの主な要因であることが分かりました。そこで、現在は生えてきたばかりの海藻の芽を守るため、磯焼け域に巻貝の侵入を防ぐ仕掛けを設置し、その効果の検証を行っています。調査は潜水をして行うため、相応の技術が求められるとともに、冬季の極寒期にも潜る忍耐力も必要になります。
危険も伴うなかなか大変な調査ですが、粟島の藻場を取り戻すという使命感を胸に、粟島の美しい水中風景に魅了されながら取り組んでいます。
おまけ
仕事は覚えなければならないことも多く、様々な技術の向上が必要となるため大変ですが、お休みはしっかりととれるため、充実した日々を過ごせています。
休日は映画を見たりだらだらと過ごすことも多いですが、天気のいい日には友人とキャンプに行ったり、学生時代から続けているラグビーの練習に行ったりなどなど…結局プライベートでも外に出て活動することが多いです!笑
さいごに
研究職と聞くと実験室で1人孤独に仕事をしている印象を勝手にもっていましたが、実際に働いてみると職員同士の交流が多く、のびのびと業務を進めることができています。
水産研究職はここまでお話しした通り、頭と体をフルに使って新潟県の水産業へ貢献できる、とてもやりがいのある仕事です。
当所では年に1回の研究所一般公開に加え、一般の方の施設見学も随時受け付けています。
他にどのような研究を行っているかなど、興味を持っていただけた方はぜひ直接所の雰囲気を見に来てください!
「ブルーカーボン」、初めて聞きました。県の重点政策もこんな形で水産職の業務と結びついていたのは素直に驚きでした。
研究職として、かなりの専門の高い仕事ですが、根底にあるのは行政として新潟県の水産業を守り・発展させていく使命感なんだなと感じました。
ますます水産職が好きになる記事、Mさんありがとうございました‼
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