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ママ達の楽しい時間と場所を提供したい 〜移住がもたらしてくれた、子育てと仕事の両立〜

今回は、新潟県のU・Iターン創業応援事業に採択され、新潟でIターン起業をされたピクニックボックスオーナーの諸橋陽子さんにインタビューをしました。
新潟に移住した経緯や移住後に起業をされるに至った背景、お店のコンセプトなどについて、諸橋さんの考えや想いについてお話を伺いました。

ピクニックボックス オーナー 諸橋 陽子さん

〈プロフィール〉
諸橋 陽子(もろはし ようこ)
神奈川県出身。服飾専門学校を卒業後、ドレスのお直し縫製に携わる。その後、ペット業界に転職。ペット用品の買い付けや複合施設の運営、保険業務などを経験し、キャリアを積む。結婚後、子育てをきっかけにパートナーの実家・長岡市へ2022年2月にIターン。これまで培ってきた経験を活かし、移住先の住居内にミシンのレンタルスペース・子供服のセレクトショップを併設した「picnic box(以後、ピクニックボックス)」を開業。店内ではキッズスペースを設け、子供との時間を大切にしながら営業をしている。


伸び伸びと子育てをできる場所を求めて

ーーIターンのきっかけをお聞きしても良いですか?
子育てがしやすい環境を求めたこと
です。第一子出産後にコロナ禍となり、マンションの一室という限られた空間で、初めての育児に奮闘しました。慣れない育児に加え、出かけられない、人とも会えないという状況でどんどん息が詰まっていきました。そんな中、第二子を妊娠し、これからの子育ての環境について改めて考えるようになりました。この状況を改善できないまま、「育児と仕事の両立が出来るのだろうか」と悩んでいたところ、ふと長岡にいる義両親の「戻っておいで」という言葉を思い出したんです。「長岡に行けばもっと広い場所で子育てができる。周りには手を差し伸べてくれる方がいる」と考え、長岡に移住しようと決断してすぐに主人に相談しました。

ーー突然の相談に、ご主人はとても驚いたのではないですか?
すごく驚いていました。主人は長男なので、将来的には長岡に戻るつもりでいたようですが、主人も私も、長岡に行くのはもっと先のことだと思っていたからです。
移住という選択については、私は「40歳を迎える前に新しい世界に飛び込んだ方が再就職出来るのではないか?タイミングは今なのかもしれない」と考えており、主人も私に賛同してくれました。

U・Iターン支援に背中を押され、移住を決意

ーー移住を考え始めたとき、初めにどんな準備をされましたか?
まずは金銭面が不安だったので、仕事を探すことから始めました。首都圏と地方では収入も変わってきますので、「本当に仕事はあるのか」、「移住先で今と同じような生活水準を保てるのか」をきちんと調べてから移住の最終決定をしようと思いました。具体的には、東京の新潟館ネスパス内のにいがた暮らし・しごと支援センター(以下、支援センター)に足を運び、正社員として働ける就職先を探しました。しかし、望んでいた収入を得られる仕事が見つからず、就職先探しは一旦ストップすることにしました。

ーー希望条件に合う仕事がなかなか見つからず、諦めてしまったということでしょうか?
仕事を探すためのアプローチの方向性を変えたのです。仕事を探すより先に、どれだけ稼げばいいのか検討しようと思い、お金のプロであるFP(ファイナンシャルプランナー)さんに相談しました。その結果、夫婦ともに理想とする生活を保つための給料基準等が明確になり、やみくもに仕事を探すことを止めました。
また、子供を預けて外に働きに出ることも気がかりであったため、「子どもと一緒にいながら何かできることはないだろうか」ということも考えるようになりました。正社員という雇用形態にとらわれず、自分のキャリアや特技を活かせる仕事をしようと新たに考え始めました。私の出来ることは"ミシン・ペット業界で得た仕入れ管理、施設の運営・子育て"なので、この集大成のスキルを活かせる仕事を探しました。

ーーしかし、諸橋さんは移住と同時に起業されていますよね?起業をされたきっかけは何だったのですか?
補助金の存在が大きいですね。支援センターでは移住支援金の他、NICO(にいがた産業創造機構)さんの「U・Iターン創業応援事業」について教えてもらいました。
また、5つ(以下に記載)のことがパズルのピースのようにはまり、私の頭の中に「起業」という2文字が浮かびました。

  1. 正社員という雇用形態にこだわらずに仕事を探しても生活は崩れないこと

  2. 子供に合わせて、時間の確保ができること

  3. 自分の特技を活かしたいと考え始めたこと

  4. 自営の義父が、必要なら(義父の)倉庫を使って良いと言ってくれたこと

  5. 移住者が起業するための補助金があること

それから、起業したらどのくらいの売り上げが見込めるかシミュレーションを始めましたね。

ーー具体的にどのようなことをされたのですか?
義実家から長岡駅までの大きな通りにある、すべての保育施設の園児数を調べました。その結果、この地域に約800人の園児がいることが分かったのです。子供はいない地域だと聞いていたので、家族も驚いていました。実際にリサーチをすると、ハンドメイド作家のママさんや、ママだけのイベントなどが長岡では多く、ママで活躍されている方もいました。
実際に事業計画を書き出してみると、起業して生計を立てることが可能と分かったのですが、少しも不安が無かったわけではありません。
長岡が「ママ起業」に優しい土地であることや、「U・Iターン創業応援事業」が大きな後押しとなり、「きっとやっていける!」と自信を持つことができました。

子育て中のママ達の輪を広げるお手伝いをしたい

ーー「ピクニックボックス」とは、どのようなお店なのでしょうか?
ピクニックボックスはミシン事業とアパレル事業の2つの柱
で成り立っています。ミシン事業は、ミシンのレンタルスペースで、お子さんのよだれ掛けや保育園入園グッズなどをハンドメイドしたいママたちにミシンをお貸ししています。とはいえ、ただ場所とミシンを提供しているだけではありません。私が提供するレンタルスペースの強みは、年間200着以上のウェディングドレスのお直しをしていた経験をもとにした、製作アドバイスをさせていただいていることです。訪れていただく方は「ミシンは普段使わない」、「裁縫は苦手だけど子供のために自分で作りたい」という場合がほとんどですが、ママたちのお子さんへの愛情を形にするお手伝いをさせていただいています。
また、アパレル事業はペット用品の買い付け経験を活かして子供服などを販売しています。現在は8ブランドを扱っていて、長岡では初めて上陸するブランドもあります。長岡市内外を始め、県外から帰省の際にわざわざ立ち寄ってくださる方もおり、嬉しい限りです。
店内は「子育てが出来るお店」をコンセプトに設計しました。営業中、自分の子供達と一緒にお客様をお迎えできるように、子供達がどこにいてもわかる間取りにして、キッズスペースも設けています。我が子のために設計したのですが、結果的にお子さん連れのお客様が安心して製作に打ち込んだり、お買い物を楽しんでもらえたりできる環境になりました。

店内には子どもが遊べるブランコがある
キッズスペースもあり、お子様連れのお客様も安心できる

ーーピクニックボックスの今後の目標を教えてください。
今以上に、ママ達がワクワクするものが詰まった場所を提供していきたいと考えています。今までは、ミシンのレンタル貸しと外部の講師をお招きしてお花のワークショップを行うなど、お子さまと参加できるイベントを開催してきましたが、今後はミシンのレンタルスペースでお子さんの大切なロンパース(トップスとボトムスがつながった服のこと。おむつ替えをしやすいつくりになっている)を使って人形を作るイベントなどを構想中です。
また、少しずつ子どもと一緒に外出する機会も増えてきていますので、今後の夢としては、お洋服を選びながらおいしいものを食べられるようなカフェなどをやってみたいと考えています。起業したことで、子育て中のママ達と関わることが多くなり、移住して出来たお友達の存在はとても心強いです。そのため、今度は私が子育て中のママ達の輪が広がるようなお手伝いができたらと日々考えています。

Iターンをしたからこそ実現した、子育てと仕事の両立

ーー移住をされてから、子育ての環境にどんな変化がありましたか?
想像していた通り、のびのびとした環境で子育てが出来ています。
まず、行動範囲が広がったことは大きな変化です。移住前は車が無かったので、近くの公園に出かけることが多かったのですが、今は車で気軽に遊びに行くことができます。少し足を伸ばせば、体験できる内容もガラリと変わるので、子供も大人も刺激をたくさん受けています。
また、義両親をはじめ、関わってくれる周囲の方々がとても増えました。子供達も色々な大人と触れ合うことで人との関わり方や礼儀などを学んでいます。成長する上での大切な刺激になっていると思います。

ーー移住して良かったなと思う瞬間はどのようなときですか?
子育てと仕事の両立をしながらでも、穏やかな気持ちで過ごせている時ですね。
移住前の仕事は朝早くからフルタイムの勤務だったので、もしそのまま育児と仕事を続けていたら、気持ちに余裕が無くなってしまっていたと思います。移住を考えたからこそ、起業しようと奮起し、子供のために時間を確保できる仕事を得ることができました。
"移住"をキーワードに、色々なことが好転したと感じています。

ーー移住を考えている方へ、アドバイスやメッセージをお願いします。
もし移住に興味を持っている、悩んでいる方がいたら、まずはその移住先をよくリサーチしてみてください!情報を得ることが選択肢の幅を広げてくれるカギになると思います。
また、私のように仕事の不安を解消するためのアプローチも大切ですが、一方で「行ってみたい場所はあるかな」とワクワクするようなアプローチもぜひ実施してみてください。
自分とマッチするポイントを見つけることで、移住先での生活をより豊かなものにできるのではないかと思います。

お子さんと一緒にインタビューにご協力いただきました

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