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埋蔵文化財行政の仕事ー文化財調査員のしごとvol.2―

知られざる「文化財調査員」の世界を3週に渡りたっぷりお伝えしていく本シリーズ。
今回は土の中から発掘される「埋蔵文化財」の仕事を紹介します!
(➤先週は世界遺産登録に向けた仕事をご紹介
土の中から歴史的な文化財が発掘されるかもしれないなんて、なんだか夢を感じます!
ではでは、そんな埋蔵文化財の仕事を文化課のAさんから紹介してもらいます。よろしくお願いします!



■はじめに

はじめまして!文化課の埋蔵文化財係の文化財調査員Aです。出身は、街中に火焔土器があふれている長岡市というところで、自ずと考古学の道へ進み、好奇心から関西の大学へ進学。卒業後、新潟へ戻り採用されて今年で2年目になります!
そんな私が、何しているの?とよく聞かれる文化財調査員の仕事についてご紹介します。

■文化財調査員について

現在、新潟県の文化財調査員は19名です。そのうち、県庁の観光文化スポーツ部文化課に11名、新潟県埋蔵文化財センター((公財)新潟県埋蔵文化財調査事業団派遣)に8名が配置されています。

■埋蔵文化財係の仕事

文化財に関する業務は文化課の中で分担しており、私が所属する埋蔵文化財係は、新潟県内に所在する埋蔵文化財(地下に埋蔵された文化財:遺跡や出土品のこと)の保護(保存と活用)を主な業務としています。新潟県内には13,000か所をこえる遺跡がありますが、新たに発見されるたびに追加登録を行います。しかし、工事中に発見されることも少なくないため、未発見の遺跡を開発工事の前に把握することが重要となります。

■発掘調査とは

埋蔵文化財係では、国道や高速道路など恒久的な構造物を建てる前の発掘調査(試掘調査と呼びます)を行い、遺跡の有無を確認します。調査は、重機で慎重に土を剥ぎ取っていき、「トレンチ」と呼ぶ試掘坑を複数あけます。その後、土器や石器の有無とともに、土の堆積状況や土質・土色、石や炭化物などの包含物等も確認し、記録を残します。また、土地の地形も考慮しながら、どこにどんな遺跡が立地するのかもを検討しなければなりません。

(土質や堆積状況、包含物を確認しています)

掘削する面積が限られ、得られる情報も少ないので、遺跡の有無の判断がとても難しいですが、掘るたびにワクワクする業務です。また、新潟県は広いので、地域により土層の堆積状況や地質がガラッと変わるところも、興味深いポイントです! たまに、近現代のゴミ捨て場なんか当たっちゃったり・・・。(シジミの殻や少し古いラベルの胃薬空箱など一緒に出てきました。)
この様な調査を行い、遺跡があると判断されたときは、地図・台帳・カードに記録を残し、データとして蓄積します。県では市町村が発掘調査した遺跡もすべて集約し管理しています。遺跡地図と遺跡台帳を文化課HPで公開していますので、見てみて下さい☆

■出張のお昼ご飯

県内の北から南まで広く出張して調査します。ほとんどの調査は移動時間も含め丸一日かかります。そんな時の楽しみはお昼ご飯です!私は食べ歩きするほどのラーメン好きで、調査へ行くたびに各地域のラーメンを食べています。
しっかり食べないと午後も頑張れないので、毎回大盛り注文は欠かせませんッ!
試掘調査へ一緒に行く先輩と競って食べています(´~`)モグモグ。

(村上市の定食屋さん、ラーメンセット)(胎内市のお寿司屋さん、冷やしラーメン)

■活用業務 

遺跡から出土した遺物の活用業務として、高校出前授業を実施しています。授業では、県内で出土した文化財を通して、地元への愛着や価値を再発見するきっかけとなれるよう、私たちが講師となって新潟県の歴史・文化を分かりやすく解説します。本物の土器や石器にも触ってもらいます。毎年学校から申し込みがあり、希望する時代に沿った授業を行うので、そのたびにどの子(出土品)を持っていこうか悩みます・・・。また、生徒さんたちのアンケートを見て、興味をもってくれたことに感動しています😭

(高校出前授業の様子、興味津々で見てくれました)

■さいごに

文化財調査員の仕事は、文化財の保護から活用まで幅広い業務に携われることが魅力で、とてもやりがいを感じます。また、先輩方の出身大学や専門分野は様々で、日々、多くのことを学ばせて頂き、成長を実感しています。
文化財調査員を目指している方へ。新潟県は広い県域の中で複数の文化が交差し合い、独自に育まれた文化財が数多くあり、興味は尽きません。そのため、仕事で様々な経験を積むことができるだけでなく、「新潟県考古学会」や「新潟考古学談話会」等の研究会も盛んに行われており、調査研究をガンガンやりたい人にとっても恵まれた環境です。
文化財保護を通して、文化財に触れながら自身の可能性を伸ばしたい方にとてもおすすめです。新潟県の文化財のために、一緒に働きませんか?


今回のブログも最後まで見ていただきありがとうございます!最後にAさんからお話しを聞くと、発掘調査では新たな遺物が出土するかもしれないという期待感がある一方で、その遺跡をどのように保護していくのかという想いも聞くことができました。手放しに喜んでばかりはいられないのですね!
執筆いただいたAさんありがとうございました!文化財の保護から活用など仕事内容は多岐に渡りますが、これからの活躍を応援しています!

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