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【後編】佐渡のさまざまな起業・創業を深堀り ーあなたにとって佐渡での起業とは?ー

新潟県

「起業の島」として注目を浴びている佐渡島。なぜ、今、佐渡島が注目されているのか。なぜ、佐渡島が起業・創業に向いているのか。

前編では、島外から移住し島薬膳レストランと島でのウエディング事業を手掛けるメレパレカイコ 舘 恭志さん・倫子さんからお話を伺いました。

後編では、佐渡で初めてクラフトビールを造る『株式会社ビアパイント』藤原 敬弘さんと、D2Cのウェルネス事業に挑戦する『株式会社antead』代表取締役の 板垣 佑弥さんから、佐渡でのそれぞれの起業の形をお聞きします。



人と食文化も繋げるクラフトビールを佐渡で【株式会社ビアパイント藤原 敬弘】

藤原 敬弘 (ふじわら たかひろ)
1986年生まれ。北海道出身。国立苫小牧工業高等専門学校卒業。日立製作所を経て、2011年11月フラー株式会社を共同創業、 取締役CTOに就任。2020年11月に株式会社ビアパイントを創業、代表取締役に就任。その後、佐渡島にクラフトビール文化を輸入すべく、月100L近くのクラフトビールを島外から運び続ける。2020年にオーナー兼ヘッドブルワーとしてt0ki brewery (トキブルワリー)を設立。

佐渡から広げるクラフトビールファンの輪

ーー2020年に佐渡で起業された藤原さんですが、はじめに、株式会社ビアパイントの事業内容について教えていただけますでしょうか?
藤原さん:
ビアパイントでは両津の加茂歌代にあるt0ki brewery(以下トキブルワリー)でのクラフトビールの醸造と、醸造管理のソフトウェア開発を中心に醸造家をサポートするためのサービスの提供を行っています。

ーー佐渡は酒蔵も多いので需要が高そうなサービスですね!ところで、藤原さんは起業の場所としてなぜ佐渡を選ばれたのでしょうか?
藤原さん:元々のクラフトビール好きが高じてビールを自分で造りたくなったタイミングで佐渡で人の縁に恵まれたことが大きいですが、一言で言えば佐渡にクラフトビールの文化が無かったので面白そうだと思ったからでしょうか(笑)

触れたことが無いものや新しいものって面白いじゃないですか。うちのクラフトビールを飲んで、ビールってこんなに違いのある飲み物なのかと感じてほしいですね。最近うちに来られたお客さんから『トキブルワリーのビールを飲んでみて、他のクラフトビールも飲んでみようと思った』と言われたことは印象深いです。


ーーこれからトキブルワリーをどんなブランドにしていきたいですか?

藤原さん:価格が高いのは自覚していますが、地元の人に飲んでもらえるようになって欲しいですね。その土地で造っているのにその土地で消費されないと、そこで造っている意味が無いと思っているので、最近は地元向けのイベントを日本酒の酒造とタッグを組んでやってみようと考えています。月に一度開催している『トキと酒』のイベントも、観光のお客様用ではなく、地元向けに開催しています。

今年のお盆期間には「美味しいから」「面白いから」と、佐渡に帰省中の友人や家族を連れてきてくれる方もいらっしゃいました。
クラフトビールに馴染みが無い人が佐渡に訪れた際にクラフトビールって美味しいんだなと思ってくれると、もしかしたら進学先や就職先の場所に戻った時にクラフトビールが飲めるビアバーなどを訪れてくれるかもしれない。そうやってクラフトビール業界自体の伸びに繋がると良いですね。



起業=新しい経済圏を作るということ

ーー最近佐渡では移住者が増えたり新しいお店がOPENするなど盛り上がりを感じているのですが、これについてどういう印象をお持ちですか?
藤原さん:正直、それを盛り上がりというのか?という疑問があります。移住者が開いたお店で地元の人たちが食事や買い物をすることは新しい刺激という意味ではいいのかもしれません。

しかし、本当の意味で地域が活性化するということは、そこにお金がついてこないといけない。つまり島外からお金を地域に落としてもらうことが必要になってきます。これから人口がどんどん減っていく佐渡で本質的にやっていかなければいけないことは、この状況でどう経済圏を成り立たせるのかを考えることだと思いますね。

ーーたしかに佐渡の人口は今年には5万人を切ると言われていますね。藤原さんにとって起業とはどういうことでしょうか?
藤原さん:
自分にとって起業は、『新しい経済圏を作ること』だと思っています。そもそもそこに無かったはずのお金を持ってくる、あるいはそれが循環するような仕組みづくりをするのがスタートアップ企業でなければいけません。

テック系のスタートアップ企業に投資が数億円という話もありますが、それはそこに経済圏ができることに対して投資しているから。そして、その経済圏が生まれることでその市場が成長していくから、投資金額が大きくなるんです。新しい技術ができると新しい市場ができるので、その可能性を作るテック系の企業にお金が集まるのは当たり前ですよね。

ーーなるほど。都市部において『新しい経済圏を作る』ということはイメージできるのですが、地方においてはどういった形になるのでしょうか?
藤原さん:
地方で考えると、新しい経済圏を作るってそんなに難しくないと思っています。前述したような新しい技術を導入する必要は無くて、新しいイベントを開催したり、地元向けの新しい祭りをするのも『新しい経済圏』と言えます。

その新しい経済圏に落ちたお金を使ってまた新しいことを始めることは、佐渡島内での新しいお金の流れを作ったと言うことですよね。実際に、地元や島外の事業者が出店する『トキと酒』のイベントでも、クラフトビールを導入するだけでもお金を落とすリピーターが増えたんですよ。

佐渡島でこの『起業』の形が確立できたら、他の地方でもできると胸を張って言えるんじゃないでしょうか。地方創生を佐渡で本気でやるということは、こういうことだと思います。

ーー佐渡ビジネスコンテスト2021で入賞したSIIG株式会社の谷川さんも、大規模な釣り大会を島内で行うことで外から佐渡に関わる関係人口を増やしたいと話されていました。これも『新しい経済圏』のひとつですね!



リスクを背負って考える本気の地方創生

ーー地方創生と本気で向き合う藤原さん独自の起業論を話して頂きましたが、やはり前職(元フラーCTO)の影響もあるのでしょうか?
藤原さん:どうですかね(笑) スピード感のギャップはありますが、やっていることはそんなに変わらないと思います。まずは自分がリスクを背負って何かを始めることが大事だと思っています。東京でやろうが、地方でやろうが、それが本質的なスタートアップであると考えることと、自分のスタイルを貫くということの2点はこれからも変わりません。

ーーリスクを背負うというワードが気になりましたが、例えばリスクにはどういった意味のものが含まれるのでしょうか?
藤原さん:起業家あるあるですが、リスクを背負って生きていくということは、まだ準備できていない商品、まだ未完成の商品も売らなければいけないんです。それはトキブルワリーでも行ったクラウドファンディングしかりですね。ただ、言葉が軽くなるかもしれないけれど商品よりも、まずは ”想い” が大事だと思っています。その想いをどれだけ自分事として語れるか、どれだけ応援してもらえるか、それが何かを変えたいと思った時に一番大事。

地域を盛り上げるということはとんでもなく時間がかかることですが、これからもトキブルワリーを応援してくれる人の気持ちにしっかりと応えていきたいです。


クラフトビールショップをはじめ、都内や新潟市内ではよく見かけるようなお店が、佐渡島内には1軒も無いということはしばしば。人口約5万人のこの島はいわゆる多種多様なビジネスにおいて "ブルーオーシャン" 状態なのかもしれません。

インタビュー2人目は【地域の資源】を活用して商品開発を行う起業家の板垣さんです。はたして板垣さんのお話からはどんな佐渡の姿が見えてくるでしょうか?


『兼業起業』でD2Cのウェルネス事業へ挑戦【株式会社antead 板垣 佑弥】

板垣 佑弥(いたがき ゆうや)
北海道出身。小樽商科大学卒業後、2013年NTT東日本へ新卒入社しコンサルティング営業からキャリアをスタート。その後、セールス→人事→事業開発→経営企画に従事しながら、2020年に株式会社anteadを創業した兼業起業家。代表取締役としてメンタルウェルネスブランド事業を立ち上げ、佐渡産海洋深層水を用いた自律神経を整える入浴剤を企画開発中。

新たな選択肢『兼業起業』

佐渡での1枚(1番左が板垣さん)

ーーそもそも板垣さんが起業したきっかけはなんだったのでしょうか?
板垣さん:
大学を卒業して就職した後、他の何かに挑戦したいという時、一般的には転職するか独立起業するかしか選択肢がありませんが、本当にそれしかないのだろうかと新しい働き方を探っていたことがきっかけでした。

ーーたしかに、働き方の選択肢が増えるのは良いことですね!ご自身は企業で働きつつ起業されていますが、どのような想いで『兼業起業』されたのですか?
板垣さん:ユニコーン企業がすべて専業で起業した企業である必要はないわけですし、私たちのような「兼業起業」という新しいスタイルを働き方やキャリアの考え方として事例を作れるといいよね、もっと自分にわがままでいいしもっと自由に選んでもいいよね、という想いで創業メンバーは集まりました。この起業のスタイルやブランド・事業を通じ、その想いをメッセージとして伝えられたら良いと思っています。

メンタルウェルネス × 佐渡の海洋深層水

ーー兼業起業という新たな起業を実践する第一人者として走ってこられたのですね。ここからは、取り組まれている『メンタルウェルネス』がどのような領域なのかお聞きできますか?
板垣さん:
皆さんも「メンタルヘルスケア」という言葉は聞き馴染みがあるかもしれませんが、海外ではコロナ禍を機に『かかってからケアするのではなく、日常的にメンタルストレス要因から身を守るライフスタイルを確立しましょう』という働きかけが強く行われるようになっていて、これがそもそものメンタルウェルネスの考え方です。実際にキャリアの考え方で精神的に追い込まれたり、ひとつの会社で働き続けないといけないというストレスやプレッシャーを感じて休職・退職した人もたくさん見てきたので、私たちはそれを確立するために施設やプロダクトなどを多面的に展開していきたいと考えています。

ーーなるほど、そもそもの予防が重要になるんですね!その事業の中でも現在、何か手掛けている商品はありますか?
板垣さん:
今年の秋から冬にかけて『液体タイプの入浴剤』をローンチ予定です。入浴剤の基本成分は佐渡の海洋深層水で、入浴剤として肌や粘膜から吸収すると女性のPMS症状緩和に繋がるなど、確かな研究結果の取得には2年以上をかけました。パッケージにもこだわっていて、入浴剤を入れるボトル自体も、ボトルを入れる箱もSDGsを考慮したサスティナブルなものにしました。液体タイプの入浴剤自体佐渡ではあまり見ない商品なので、販売開始が楽しみです。

佐渡の資源を活用しての起業から、その先へ


ーー海洋深層水のある地域は他にもあると思いますが、その中でも佐渡に注目した理由は何かありますか?
板垣さん:
佐渡の海洋深層がとれる地域は周りに工業地帯がないので、産業廃棄物の影響も受けていない品質の高いものだと知り、実際に佐渡の海洋深層水施設に足を運んでみたのが始まりです。しかもこんなに良いものなのにもかかわらず、地域の人も佐渡の海洋深層水の使い道を見つけられずにいたんです。

後に市長や商工会議所でプレゼンした時にも、入浴剤の話に対して前向きだったことから、佐渡のビジネスのタネを形に変える役割としていい連携が取れそうだと思いました。薬機法の関係などで新潟県での製造は叶わなかったのですが、今後工場を社内で保有できるくらい大きくなったら今後は佐渡で自社生産したいです。

アスリートの『デュアルキャリア』も支援

「共立テクノ杜の広場」インキュベーションセンターと、佐渡駐在スタッフの高根さん

ーー各地を精力的に飛び回る板垣さんですが、佐渡にオフィスは構えていらっしゃるのでしょうか?
板垣さん:
はい、インキュベーションセンターの「共立テクノ杜の広場」が私達のオフィスです。また、佐渡に1名だけ高根一輝という社員がいるのですが、彼は陸上十種競技のインカレに出ているアスリートでもあります。競技を続けながら会社員として勤務する『デュアルキャリア』を応援していきたいと思い、彼を採用しました。

株式会社antead 佐渡現地スタッフ 高根一輝さん
「栃木県出身で、新潟大学工学部を卒業した後、社会人1年生として佐渡で働いています。働き方としては、自社のHP制作をしたりコーディングの学習をしながら、オリンピックを目指して陸上十種競技の練習をしています。
元々陸上が好きで、社会人になっても続けていきたいと思っていたのですが、陸上だと一握りのトップ選手しか実業団に所属できないんです。悩んでいる時に アスリートの『デュアルキャリア支援』についてマイナビさんに相談したところ、競技を続けながら会社員として勤務ができる会社が佐渡にあると知ったのがanteadとの出会いのきっかけです。それまで佐渡にゆかりは無かったのですが、住みやすくて良い場所ですね。」


ーー最後に今後の展望について教えてください。
板垣さん:
研究をしている中で、メンタルウェルネスには脳神経と腸内環境が密接に関わっている(脳腸相関)ことを知りました。現在、佐渡で採れるめかぶなどの海藻を腸内環境の調整へ有効活用できないか九州大学と共同で研究を進める予定です。有効性が立証されれば、その方面でも新事業を展開していきたいです。他には佐渡の温泉施設を利活用したメンタルウェルネスツアーにも興味がありますね。

化粧品や入浴剤のOEM先として新潟県内の企業があることも認知してはいるので、パートナー的に関わってくれる企業さんがいればぜひ連携したいですね!また、起業するための素材やタネのようなものは佐渡にいっぱいあるので、起業のヒントを得たい人はぜひ佐渡に来てみてください!


前編・後編の2回に分けて『佐渡のさまざまな起業・創業を深堀り』をテーマにお届けした今シリーズ。移住者として定住を決意し、婚活事業を手掛ける夫婦、新しい経済圏を作ろうと行動する方、佐渡の素材を活用した商品の販売を通して佐渡の魅力をPRする兼業起業家など、全く異なる角度から佐渡の起業・創業にアプローチしていました。

これから起業を目指す方、また、佐渡で何かをしたいと思っている方の後押しとなれば幸いです。

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