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世のため、人のためのテクノロジーを 〜Jスタ新潟・経営者インタビュー⑤ 株式会社KUNO〜

今回は前回に引き続き、「J-Startup NIIGATA(以下、Jスタ新潟)」の選定企業である、株式会社KUNO(以下、KUNO)代表取締役社長の佐藤 傑さんにお話を伺いました。

Jスタ新潟
地域に根ざしたイノベーティブなスタートアップ企業を、新潟県と関東経済産業局等が選定。公的機関と民間企業が連携して集中的に支援することで、選定企業の飛躍的な成長と、新潟のスタートアップエコシステムの強化を目指す取り組み。

▼設立趣旨などについては、下記HPもご覧ください。

KUNO代表取締役社長 佐藤傑さん

<プロフィール>
佐藤 傑(さとう すぐる)1974年、新潟県生まれ。株式会社KUNO代表取締役社⻑。Happpy-Happyをモットーにドラえもん創りを目指し日々楽しく活動中。


Jスタ新潟について

ーーJスタ新潟に選ばれてから変わったことはありましたか?
佐藤:
僕がJスタ新潟に入ったのは、新潟VCの星野さんからの推薦でした。Jスタ新潟に選ばれてから少し経ち、他の選定企業と『Jスタ新潟仲間』として親近感が出てきたなというのが今の率直な感想です。Jスタ新潟をきっかけに、選定企業同士でコラボしたこともありましたね。

ーーJスタ新潟メンバーの特徴はありますか?
佐藤:
メンバーからは『新潟という看板を背負っている』という雰囲気を感じます。新潟という名前のついた背番号を頂いた感じですね。

新潟で限ったことではないかもしれませんが、新潟県民はチームワークやバランスの取れる人が多いと思います。東京で起業家のコミュニティを作ると、皆我が強いからだいたい喧嘩してしまう(笑)
他人の心を慮ることができる人が多く、コミュニティを利用して、チームを組んでしっかり進めていくことは新潟人の得意なところ!これが新潟の起業家コミュニティが上手くいく理由だと思います。


新潟ならではのビジネスモデル

ーー長岡に注目した理由を教えてください。
佐藤:
僕としては、まず日本を良くしたいという気持ちが根底にあります。だけど日本と言っても広いし、ある程度地域を限定して日本を活性化した方が良いよねということで、色々探したけれどやっぱり生まれ故郷の長岡を選びました。

長岡のDXを通して、社会や生活を便利にすることで日本全体を変えていきたいですね。まずは第一段階として長岡市から始め、その長岡市をモデルケースにして新潟県へ展開、そして新潟県をモデルケースにして全国へ広げていきたいと思っています。『地域』ってそういうことなんじゃないかな。

ーー現在はどんなことに取り組んでいますか?
佐藤:
基本的に場所(ハコ)があるだけでは人は来ません。「長岡(新潟)には場所があるので来てください」「さあ何をやりますか?」では順番が逆!なので今はプロジェクトや事業を立てたり、業務提携を結んだりしてから人を呼ぶようにします。

あとは、東京の仕事を新潟でやるだけでは意味がないので、「新潟ならではの事業を一緒にやりましょう」「他の地方にはない、横展開が可能で、実証も兼ねたトライアル的な取り組みを長岡(新潟)でやりませんか?」というように進めることで、新しいビジネスやマーケットが生まれるよう繋げています。小さなところからしっかり階段をのぼって、ひとつずつ着実にやっていきたいですね。

ーー具体的なプロジェクト内容をお伺いできますか?
佐藤:
現在、DX人材育成には特に力をいれていて、東京にある株式会社トップゲートと提携し、Google Cloudエンジニアの人材育成を、長岡の美大生や高専生などを対象に始めています。

CTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)を学生層から生み出すことを目的のひとつに、早いうちからGoogleの技術に接してもらっていますね。他には自動車の自動運転の実証実験も、新潟県で行う予定です。


ーーAIそのものの活用ではなく、まずは人材育成を重視しているんですね。
佐藤:
依頼を受け、開発までやりきるというビジネスモデルなので、そもそもAIのマーケットが無いところでは、このモデルは成り立たないですよね(笑) KUNO自体はAI開発をやっていますが、長岡や新潟というマーケットにも仕事を生み出すため、総合商社のように色々なことに取り組む必要があると思っています。

そういった取り組みの中から、新しいビジネスモデルとして生まれたものとしては、アルビレックス新潟のバスケットボールチーム向けに行っている「顔認証のソリューション」です。AIと地方はまだやはり少し溝が深いので、その前段のDXやIT化などの部分を進めていきたいと考えています。今はその前段を耕している状態ですね。


地方の課題とテクノロジー

ーー東京に本社のある株式会社KUNOですが、佐藤さんが地元長岡に戻ってきた理由を教えてください。
佐藤:
同じものを食べて、同じ場所で育ってきた人は経験が似ている。経験が似ているということは、感覚が似ている。共通点が多い人と事業をした方が、高い共感性が生まれると僕は思っているからです。つまり新潟や長岡で、同じものを見て同じことを感じてきているので、想いの伝え方がショートカットできる。そしてなにより住みやすいという理由で長岡を選びました。

ずっとどこかの地域にフォーカスした方が良い、とは思っていたんです。それと併せて、感覚が近い人とチームを組んでやっていく方が色々と上手くいくのは確実だと思っていて。

あとは、このタイミングで熱量のある人達がこの地域に多かったというのもあると思います。フラー株式会社の渋谷会長を始め、Jスタ新潟メンバーで繋がった人たちは全員熱量がありますね。

ーー今回のシリーズのインタビューでも『人』が理由で新潟を選んだと答える方が多かったのですが、やはりきっかけを深堀りすると人との共感に帰着するのでしょうか?
佐藤:
どうでしょう(笑)
地域を人として捉えるか、場所として捉えるかということもあるでしょうが、やっぱり全員『課題を解決したい』という気持ちがあると思います。

お金になる仕事が多い東京で ”小さな課題” を解決していくのか、お金にはなりにくいが地域全体を巻き込める ”大きな課題” に取り組むのかという話。正直、地方の方が課題は多いし、やるべきことも多いということ自体が地方の魅力かなと。

僕は起業家なんだけど、起業家じゃないというか… こういう考えを共有すると驚かれることが多くて。『課題を解決したい』『便利にしたい』ということが目的であって、その手段が会社であり、起業だったというタイプの起業家なので、周りにも起業家じゃないとよく言われます(笑)

ーー地方における具体的な課題とはなんでしょうか?
佐藤:
課題というのは、"目標と現状の差分"だと思っています。目標のレベル感にもよりますが、「こういう風に生活したいという気持ち」と「現実にそう生活できていないということ」が目標との差分です。こういった差分は地方の方が多くて、東京の方は『もっと便利にしたい』という課題が多いと思います。地方には、一方でもっと切実な少子化や高齢化などのタイムリーな課題が多いと感じています。

そういった意味で、テクノロジーを何に用いるのかというのは、本当に大事なテーマだと思っています。僕は世のため、人のためにテクノロジーを使いたいです

東京で働いていると、「テクノロジーが本当に必要とされている方へ還元できているのか」とすごく疑問になるんです。それよりやはり地方の方が、本質的に解決すべき課題が多いんじゃないかなと。ただお金を儲けるだけの時代じゃなくなってきているということには、皆もう気づき始めていて。そうなると地方の方が、正しいことにテクノロジーを使えるなという想いがあります。これが僕が地方にいる意味でもあります。


今後の展望

ーー今後の展望の中で難しいと感じている課題はありますか?
佐藤:
僕は古いものを大事にしつつ、新しいものを導入するDXによって課題解決していくということが地方だと思っています。そのバランスが難しいし、こういう想いを理解してもらうのに時間がかかるのが課題かなと。

啓蒙活動をすることで少しずつ変わってきてはいますが、「東京のルールではこうやってるんだ!」というのを、地方に輸入しようとはひとつも思っていなくて(笑) 昔からあるものをすごく大事にしています。

ーー東京と新潟以外での展開は考えていますか?
佐藤:
まず東京で仕事をする理由としては、一番水準レベルが高い東京や、全国レベルのものを新潟に持っていかないと意味がないと思っているからです。東京でも活動するということは今後も変わらないです。

他拠点という話でいうと、まずは長岡で結果を出した方がいいなと思っていた半面、全国の自治体から「長岡でやっているような活動を他でもやってほしい」というようなお誘いがきています。新潟以外の地方都市からのお話も来ていて、地方創生の市場は小さくないんだなと改めて思いました。

ーー最後に、伝えたいことを教えてください。
佐藤:
長岡にいても長岡だけを見ない、新潟県だけを見ないということは意識しています。長岡に限らず、新潟県はオープンさが足りないと思っていて。オープンにすることで、外にいる有望な人材を新潟に引き入れることができ、そこから色々なことが生まれる。

あとは「好き」をロジカルに言語化して、外へ魅力を発信する必要があると思います。発信も新潟県内のみに向けたものでなく、全国に届くような発信が大事だと思っています。



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