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科学捜査研究所化学科8年目"科捜研の男"の仕事とは(令和5年11月10日)

こんにちは!私は科学捜査研究所化学科8年目の“科捜研の男”です。
皆さんは科捜研と聞くとどんな仕事をイメージしますか?「科捜研の女」というドラマがあるのでそのイメージが強い人が多いのではないでしょうか。

ドラマとは違ったところもあるかと思いますが、科捜研の仕事をイメージしていただくために、“科捜研の男”が社会の治安維持をするために立ち向かったある一日をご紹介します。

ある日某署から上司の電話に連絡が入りました。「挙動不審者に職務質問したところ、被疑者が大麻らしき植物片を持っていたので至急鑑定を依頼したい。鑑定結果が大麻であれば、その事実で逮捕する予定である。」
その日は、私が大麻の担当であったため、上司から鑑定人として私が指定されました。そして鑑定資料が持ち込まれるまでの間に準備を行い、その後、鑑定資料が持ち込まれ、鑑定に着手しました。現場の警察官は1分1秒でも早い回答を待っています。私は、焦る気持ちを抑えつつ、深呼吸をしてから鑑定を行いました。そして鑑定終了後、某署に「鑑定資料は大麻と認められる」と電話で回答を行いました。ここで私の役割は終了です。その後、警察官が被疑者を逮捕して、所定の捜査を行った後検察庁に送致します。

なんとなく科捜研の仕事をイメージできましたか?科捜研は、主に犯罪捜査の支援を行います。それでは次に科学捜査研究所化学科の仕事の紹介をしたいと思います。

1 科学捜査研究所化学科の仕事

(1) 薬毒物鑑定

薬毒物と言っても色々ありますが、覚醒剤、大麻、麻薬、指定薬物などの規制薬物、医薬品などの一般薬物、アルコール、一酸化炭素なども分析の対象となります。基本的には、資料について、前処理を行い分析機器に導入できる状態にしたものを分析します。写真では、ガスクロマトグラフ質量分析計と液体クロマトグラフ質量分析計を使用しています。鑑定は基本的に一人で行いますが、分析結果などでわからないことがあれば気兼ねなく科員に相談できます。

資料を前処理しているところ
ガスクロマトグラフ質量分析計で分析しているところ
分析結果について相談しているところ
液体クロマトグラフ質量分析計で分析しているところ

(2) 工業製品鑑定

繊維、塗膜、油類などの工業製品の鑑定を行います。繊維及び塗膜は、現場に残された資料と対照資料が同種のものか分析を行います。油類は、火災現場でガソリンや灯油などの揮発成分が使用されていないか確かめるために分析を行います。写真ではSEM-EDS(走査電子顕微鏡にエネルギー分散型X線分析装置を接続したもの)と偏光顕微鏡を使用しています。

SEM-EDSで分析しているところ
偏光顕微鏡で観察しているところ

(3) 研究・学会活動

日々の鑑定の中で出会う追及したいテーマについて研究も行っています。また、常に新しい知識・技術を取り入れるため、各種学会に参加しています。現在は、日本法科学技術学会、日本分析化学会、日本法中毒学会に参加しています。

2 科学捜査研究所化学科のメンバー

現在、科学捜査研究所化学科は6名です。化学科で扱う業務の範囲は多岐にわたるため、それぞれ出身大学での学部は理学部2名、薬学部2名、工学部2名と個性豊かなメンバーがそろっています。

科学捜査研究所化学科の集合写真(筆者は中央下)

3 仕事に対する思い(ポリシー)

(1) 広い視野

常に新しい情報にアンテナを張ることを心がけています。分析手法が開発され、今までできなかった分析ができるようになることもありますし、分析機器が新しくなることで感度が上がり、今までできなかったような微量な物質も検出できるようになったりします。

(2) 証人出廷を見据えた鑑定

鑑定結果を記載した鑑定書を証拠として採用してもらうため、裁判に証人として出廷する場合があります。その際に、正しく鑑定を行ったことを証言できるように準備しています。

(3) ワークライフバランス

仕事だけではなく、私生活も充実できるようにしています。休日は子供と一緒に公園に遊びに行くことや、趣味のサッカー、フットサルなどをして過ごしています。サッカーは新潟県庁のサッカー部に入れてもらって汗を流しています。

県庁サッカー部の写真(筆者は右下15番)

また、科員でお互いに協力して有給休暇を計画的に取得しています。夏休みには連続して休暇が取りやすいので、それを利用して海外旅行や国内旅行に行く人もいます。

4 最後に

科学捜査研究所化学科の仕事は薬毒物鑑定から工業製品鑑定まで幅広い範囲が分析対象となっています。その分使用する機器の種類が多く、慣れるまでは大変かもしれません。しかし、科学捜査研究所化学科の仕事は社会の治安を維持するためには必要な仕事のため、やりがいを感じることができると思います。興味のある方は一緒に科学捜査研究所化学科で働いてみませんか?

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