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起業家支援のこれから ー起業後の飛躍的成長を目指して [前編]ー

新潟県

前回は、新潟県の官民連携での起業・創業支援をする「スタートアップエコシステム」の仕組みや考え方についてご紹介しました。


今回は前回に引き続き、起業・創業支援について民間からの支援企業・団体という視点から、新潟県の民間スタートアップ拠点の中核拠点である株式会社スナップ新潟(以下:スナップ)代表取締役社長の逸見覚さんと、今まさに起業家予備軍として支援を受けている新潟大学経済科学部3年生の山田大翔さんにお話を伺いました。

まずは民間スタートアップ拠点の中でも中核拠点である、スナップの代表取締役社長である逸見覚さんに、具体的な起業支援の内容や、実際に起業した学生・起業を目指す学生がどのような考えを持ってチャレンジしているのか、といった「起業後」のスタートアップエコシステムについてお話を聞いていきたいと思います!


株式会社スナップ新潟 代表取締役社長 逸見覚さん

〈プロフィール〉
逸見 覚(へんみ さとる)
1974年佐渡市生まれ。東京理科大学卒業後、(株)けんと放送にラジオパーソナリティーとして入社、現在代表取締役社長。2019年(株)スナップ新潟を起業、代表取締役社長。100名以上の学生が登録する起業家向けオンラインサロン「SN@Pサロン」を通し、新潟県の開業率向上と同時に新潟から世界へ羽ばたくような成長性の高い起業家育成を目指す。


中核支援拠点として、大胆な「学生起業」を支援するスナップ

ーースタートアップ支援拠点は県内にも複数存在していますが、スナップがスタートするキッカケや、現在の支援内容を教えていただけますか。
逸見:起業・創業を新潟からもっと増やしたいという想いからスタートしたのがスナップです。現在はさまざまな面から起業支援を行っていますが、そのなかでも特に起業意識を持つ学生のメンタリングに力を入れています。
素晴らしいアイディアや実現したいビジョンを持っている志の高い学生に対して、我々大人が持つ経営や市場などの現場経験や、時には先輩起業家による「同じ道を少し先に歩いた目線」でのフィードバックなどのメンタリングは、チャレンジする学生が困難な壁を乗り越えるために非常に大きな手助けとなります。

ーー確かにスナップは特に学生の起業支援に対して注力されている印象を受けます。
逸見さんが考える「学生のうちに起業するメリット」を教えていただけますか。

逸見:若い学生のうちに起業するメリットは、家庭や財産など失うものが社会人に比べて少なく、大胆に挑戦できることです。社会人になった後の起業では、家族などの守るべき対象がいて大胆な起業がどうしてもしにくく、スタートアップ型や投資を受けての飛躍的な成長、どんどん雇用を増やすスタイルは取りにくいと考えます。
社会人に多い、堅実に実績を積み重ねていくという方針が悪いと言ってるわけではなく、世界に通用するスタートアップという視点に立った時に、やはり体力的にもバイタリティ的にも優れた学生の方が、大胆な挑戦が可能になり高成長ベンチャーを生みやすいんですね。それが学生のうちに起業する最大の強みですね。


官民でスムーズに連携し、起業家を支える環境をつくりあげる

ーー2019年にスナップを立ち上げてから現在に至るまで、新潟でさまざまな起業家を支援されてきたと思います。その中でも特に印象的だったことなどがあれば教えてください。
逸見:予想外だったのは、想像以上に沢山の起業家予備軍の学生がいたことです。ただし、その学生たちのコンディションは良いとは言えず、起業家予備軍の学生が「起業したい」と対外的にアピールしづらい環境でした。
スナップができる以前から、起業に対する熱を持っている学生は潜在的にいたのですが、学生の中では「起業=意識高い系の人」という周囲からの見られ方が強く、想いを行動へ移すまでに熱量が下がってしまうという非常にやるせない状況でした。冨田くん(HUB SAUNA株式会社 代表取締役)もその一人でしたね。

ーー確かに今でも起業を目指す人の数自体はまだまだ少なく、周りから理解されづらい側面もありますよね。そういった課題から、起業したい学生を支援する拠点を立ち上げたのでしょうか。
逸見:そうですね。起業を考える人は、同じように起業を目指す仲間にその志を発言することがとても重要です。そういった環境があることで学生たちが熱量をキープしながら、行動し続けることが可能になります。
それと同時に、拠点の整備が整ったからこそ、拠点に起業家予備軍の意識を持った学生が複数集まることで、起業に興味を持っている人数が可視化されるようになりました

ーー新潟県は官民連携での起業支援を推進していますが、スナップでの行政と連携した支援体制についても教えてください。
逸見:民間だけではうまくいかず、行政だけでもスムーズな支援は不可能です。その点今の新潟県は支援体制がしっかりしてきていて、起業へ理解ある状況だからこそ官民連携で良いタッグが組めていると思います。
どこまでを「起業」とするかの基準は実は難しいのですが、高成長を目指さない起業も一定数存在しています。小さなお店を、家族のために着実に経営したいというような場合ですね。このケースの支援は、これまで同様に公的機関に担ってもらい 、スナップは高成長のスタートアップを支援する拠点として注力できているので、そういった意味でも非常にうまく連携ができています。


新潟ならではの形で、人脈づくりの橋渡しをするスナップ

ーー新潟を中心にこれまで起業家の支援を行ってきたご経験の中で、逸見さんが感じる「新潟で起業することのメリット」はありますか。
逸見:首都圏に比べて、圧倒的に起業家が目立ちやすいという利点が新潟にはあります。起業して間もない時期から様々な企業の方とコンタクトが取りやすく、人脈づくりがしやすいです。起業したばかりの学生が、一部上場企業(現在のプライム市場)の社長と、フランクに面談の機会を用意してもらえるような環境はそうそう無いと思います。
スナップではそういった人脈づくりの橋渡し役を担っています。こういった支援をしているのは、既存の成長企業と、創業間もない企業がビジネスでつながることで、仕事の機会を増やせるようにしたいという私の想いがあるからです。橋渡しの結果、学生起業家の人格が既存企業にも伝わることで、若い会社にも仕事を任せられるという好循環ができていくはずです。


ーー起業直後はまだ会社としての影響力もありませんし、人脈も不足しがちですよね。その中でさまざまな企業の方とお繋ぎいただけるのはとても心強いと思います。スナップ以外にもそういった支援をしているところは県内にありますか。
逸見:他の拠点では、既存企業のさらなる飛躍を支援する新潟ベンチャー協会の存在も大きく、起業家にとって生命線である人脈を作る支援をしてくださっています。スナップは起業家予備軍の学生が、新潟の既存企業との接点を持てるハブのような拠点になってきていますね。
起業を考える上で、ビジネスモデル・事業計画ももちろん大切ですが、情報を得たり人脈を作ることは、会社として実績を作る上で非常に重要ですね。


起業の支援から”企業の支援”を目指す、支援拠点のこれから

ーー今まで数多くの起業家や起業家予備軍を輩出してきた実績がおありですが、スナップが目指す次のステップについて伺ってもよろしいでしょうか。
逸見:年々学生起業をする人も増えてきた中で、スナップも次のステップを踏み出し始めています。今後は単に起業家の輩出数を追うだけでなく、起業後の売上の部分にコミットして従業員を雇い始められるような支援を行っていきたいです。スナップ発の起業家がしっかり売上を立てられるようになり、一人前になるようなサポートをしていきたいです
スナップでの支援は、起業家を輩出するという「0→1の支援」と思われがちです。しかし0→1の「1」は起業して終わりという意味ではなく、一人前の「1」と捉えて、起業してから一人前になるまでの伴走をしていきたいですね。起業後の成長までを包括して支援できるような拠点を目指していきます。

ーー次のステップでは起業で終わらず、起業後に事業が軌道に乗るところまでを「起業支援」とされるのですね。起業後、どのくらいの規模感を目指すのかもお聞きしてよろしいでしょうか。
そうですね。もう少し具体的に表現をすると、新卒採用ができる規模感の会社を輩出していきたいです。
今は、「成長したい・ベンチャーで働きたい」と考える学生が東京に出てしまうという現状があります。今後は、東京に出ずとも、即戦力として新潟で活躍できるような流れを増やしていきたいです。


起業に向けてのヒントと、起業の意義

ーー 一般的に「起業はリスクが高い」と言われることが多いように感じますが、逸見さんが考える「リスク」はありますか。
逸見:起業のリスクというと金銭的な面を想像する人が多いですが、私は起業においてそもそも金銭的なリスクはほぼ無いと考えています。近年は大きな投資を伴わない、比較的スモールな規模での起業方法もたくさんあります。
「事業が失敗するリスク」に関しても、何をもって失敗と捉えるかは人それぞれですが、「成功するまでやり続ければ失敗ではない」というのが私の考えなので、起業してみてやっぱり会社を畳むということになれば、経営としては失敗になりますが、起業家にとって人間としての経験になります。

ーー最後にこれから起業を志す方へ一言お願いします。
逸見:起業経験は力になります。熱が無くなることが一番のリスクです。
起業に興味を持った方はまずスナップを使ってみてください!



今まさに、スナップから起業を志す学生にもお話を伺いました。

現在スナップサロンに所属し、起業家予備軍として起業を目指し活動中の新潟大学経済科学部総合経済学科3年山田大翔さんにもお話を伺いました。スナップの活用内容や新潟の起業環境のリアルな部分をお聞きしています。


新潟大学経済科学部3年 山田大翔さん

〈プロフィール〉
山田 大翔(やまだ ひろと)
2002年埼玉県吉川市生まれ新潟県新発田市育ち。新潟大学経済科学部総合経済学科3年。伊藤ゼミ所属。4歳の時、新潟県新発田市に引っ越し、大学在学中にSN@P新潟に参加し、学生起業家を目指す。「人生をより楽しく、そして豊かに」をモットーに現在は新しいファッションサービスを作るために活動中。伊藤ゼミではアントレプレナーシップ・マーケティング・経営戦略の実践的研究について学び、アートマーケティングプロジェクト・ビールプロジェクトを進行中。


起業を志すキッカケとなった、スナップとの出会い

ーー現在はスナップで起業に向けて準備中とのことですが、起業を志したキッカケを教えていただけますか。
山田:「とりあえず飛び込んでみよう」と思い、スナップ新潟に入ったのがそもそも起業を目指し始めたキッカケになっています。
コロナの影響を受け、ほとんどの授業がオンラインになり、大学1年生の頃から学校で授業を受けたという経験がほぼありませんでした。しかし、せっかくの大学生活を「このまま終わりたくない!」という想いがあり、何かできないかと考えていました。
そんな時にたまたま受けた大学の講義で、逸見さんと先輩起業家の冨田さんが「スナップ」についてお話しされていて、新潟でも起業を目指せる環境があることを知りました。話を聞く中で「まだ何ができるかわからないけど、まずはここに入ってみよう!」とスナップに飛び込みました。そこから同世代の起業を目指す学生や先輩から刺激を受け、自分も起業しようと決意しました。

ーー「やってみたい」という想いと、実際にその環境に飛び込む行動力が起業という道を見つけるキッカケだったんですね。起業を志してみて、感じているギャップはありますか。
山田:ちょっと浅はかかもしれないのですが、最初は起業家であればお金をいっぱい稼げるというイメージでした。しかし先輩起業家の背中を見続け、追いかけ続ける中で、起業は地道に一歩一歩積み重ねるような活動だと感じています。
起業までの道のり、またその後の成長には想像以上の努力や泥臭い部分がたくさんあります。
でもそこに対して「大変だな・怖いな」とネガティブな感情で悲観することはなくて、自分の力で一個一個創り上げていきたいという想いが募っています。自分にとってはそれも全部含めて楽しみにしている気持ちが大きいですね。

ーー今考えている事業について教えていただけますか。
山田:服の物々交換を軸としたマッチングサービスを考えています。このアイディアはスナップ逸見さんとのメンタリング中の他愛もない会話から生まれました。
「男女の出会いが身近にないから、最近の人はマッチングアプリを使うよね」という話から、コーディネートのマッチングもあったら面白そうというアイディアになりました。

ーースナップのメンタリングから得た発想だったんですね。なぜマッチングの中でも、「ファッション」に焦点を当てたのか気になります。
山田:自分が困っていた分野が「ファッション」だったからです。高校時代は野球部の活動に大部分の時間を注いでいたため、学生服か部活着しか着ておらず、大学入学後に私服を着る機会が増えた際に何を着たらよいかわかりませんでした。事業のアイディアはそんな自分の原体験から着想を得ています。
 
起業するなら、普段私服を着ない人にもコーディネートを提案できるサービスを作りたいと思い、自身も悩みを感じていたこの分野で起業したいと思いました。


起業のための覚悟でなく、覚悟のための起業

ーー今は準備期間とのことですが、起業に向けて具体的に行っていることを教えてください。
山田:今はひたすらメンターの方々にメンタリングしていただき、フィードバックをもらいながら事業アイディアをブラッシュアップしている段階です。
起業家の先輩から、実際に売上の目処が立っていない状態で会社を作ると「なんとかしなければと、覚悟を持って覚醒する」と聞いたこともあり、今年の9月には法人化したいと思っています。
勢いでまず起業してみるのも、逆にメリットになるのではないかと考えています。

ーー現在はスナップで準備を進めていらっしゃると思いますが、実際に起業する時も新潟で起業する予定でしょうか。
山田:生まれは埼玉ですが新潟で育ったこともあり、適度に都会で、自分のやりたいことを伸び伸びできる環境が揃った新潟に愛着があります。スナップに入って、自分のペースで納得しながら進めることができているので、このまま新潟での起業を考えています。

ーー新潟で起業する際のメリットとして感じているところはありますか。
山田:新潟は気候も様々だったり、都会と田舎の違いもはっきりしているため、日本を縮小した県というイメージを持っています。
新潟で事業を展開するためには、県内の多様性に合わせた対応が必要になります。そこを乗り越え、新潟でうまく行った実績は全国的にもサービスを伸ばす足掛かりになると思いますので、新潟での起業は非常に良い経験ができるのではと感じています。


おわりに

今回は新潟における起業支援の現状や今後について、お話を伺ってきました。
スナップ代表取締役社長の逸見覚さん、新潟大学経済科学部3年生の山田大翔さん、ご協力ありがとうございました。
次回は新潟イノベーションベース代表理事の遠山功さんと、実際にスナップの支援を受けて起業し、今まさに事業に取り組んでいるHUB SAUNA株式会社 代表取締役の冨田翼空さんに「起業してから」に視点を当ててお話を伺っていきたいと思います。
次回の記事公開まで、しばらくお待ちください!


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