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官民連携でスタートアップ支援 ー新潟県の現状とこれからー

新潟県

新潟県では官民が連携して起業家を生み出し、支援するスタートアップエコシステムの仕組みづくりが加速しています。

今回は、官民連携という視点から、新潟県創業・イノベーション推進課の田中健人課長新潟ベンチャー協会(NVA)代表理事でもあり、株式会社ハードオフコーポレーション代表取締役社長の山本太郎さんに、新潟県の創業支援の考え方やターニングポイント、そして今後の新潟の目指す姿について、それぞれお伺いしました。(以下、敬称略)

起業に関する新潟県の現状

ーー新潟は開業(起業・創業)率が全国的に低い県だと言われていますが、実際どうなんでしょうか?

田中:数字的にはやはり低いです。統計による開業率の捉え方は難しいですが、新潟県は産業構造的にも良い数値が出にくい傾向があります。

新潟県創業イノベーション推進課 田中課長


例えば他県を比較に出すと、観光業が盛んな沖縄県は飲食・理美容などのサービス業の創業が多く、開業率が高くなるとともに、廃業率が高くなるという傾向があります。それに対して新潟県は設備投資が大きくなりがちな中小の製造業が多いため、開業率が低くなりますが廃業率も低くなるという傾向があります。

そのほかにも新潟県の開業率の低さには、複合的な理由があると考えています。具体的には、平均年齢の高まりや人口減少の影響で、起業・創業に対する新陳代謝が起きづらくなっていることや、控えめな県民性などが挙げられます。

ーー山本さんはどうお考えですか?

山本:実は、新潟県の開業率が低いことは、そんなに実感していませんでした。ただ、ここ10年で全国的にスタートアップへの投資が盛り上がってきていて、そんな中で新潟県の現状に気づきました。

新潟ベンチャー協会(NVA)代表理事山本太郎さん


新潟県は地理的にも東京に近く、起業したい人が東京などの首都圏に出て行ってしまうパターンが本当に多いんです。これまでは新潟のスタートアップを盛り上げる拠点がなく、起業を志す人が集まれる場所がなかったことがその原因の一つであると思います。だから新潟を盛り上げていくためには、拠点が必要だったんです。

そういった状況の中で、「誰がどこで盛り上げるかを明確にして、起業への動きを加速させよう」という県内の若手経営者の呼びかけから新潟ベンチャー協会(NVA)が生まれました。

新潟ベンチャー協会
新潟発企業の促進と、既存企業のさらなる飛躍を」をスローガンに掲げ、
新潟県に縁のある若手経営者等が集まり、次世代の高成長なベンチャーや第二創業者等を輩出することを目的として2020年に設立。
経営者間の人的交流や連携の模索、産学官連携の推進などベンチャーやスタートアップの支援に関する活動を行う。

新潟ベンチャー協会設立のきっかけを作った中俣さんの記事▼


ーー起業支援に力を入れている新潟。その中でも特に、ベンチャーやスタートアップ支援に力を入れているのはなぜですか?

田中:新潟は、「開業率は低いですが、廃業はしづらい」、つまり新陳代謝が起きづらい産業構造なんです。だからこそ、ただ数を増やすために開業率を上げるのではなく、成長性の高いベンチャーを生み出していく必要があると考えています。

山本:NVAに関わるようになって、他県の事例を見る機会が増えました。そこで、人口の割合に対して開業率が低い新潟の現状を目の当たりにしました。

例えば新潟県の人口は15位京都府の人口は13位で、その差はわずか30万人しかありません。しかし新潟県の上場企業は37社に対して、京都府の上場企業は約70社。およそ倍ほどの差があるんです。上場するほどの規模の会社がもっと増えてもいいはずです。新潟県の現状を変えていく必要があると感じています。

起業に対する追い風

ーーそういった状況から、今の手厚いスタートアップ支援体制へと新潟県が方針を転換したんですね。     
ターニングポイントはどこなんでしょうか?

田中:やはり2018年です。花角知事体制になったことが大きな節目ですね。

新潟は関東などの都市部に比べ、スタートアップ投資の波に乗り遅れていました。そんな中、花角知事が起業・創業に力を入れ、新しい挑戦を応援する体制が強化されました。

具体的には、「新潟ブランドの推進・セールス」「活力ある新潟の実現」など、ふるさと新潟を元気で暮らしやすい県にするという方針です。トップの方の意向は大きな影響があり、例えば、花角知事体制になってから、課名に「創業」が定着し、課内に専任となる創業支援班もできています。

山本:私たち民間側の動きにも、やはり花角知事になったことで良い変化が生まれています。NVAがうまく回るようになったのも、行政と連携が取れるようになり、県の政策が後押ししてくれたからです。

民間では本業の自社事業もあり、どうしても継続的な支援を続ける事は難しいんですが、この連携のおかげで民間だけでは難しい、継続的な起業・創業支援ができています。

新潟県の起業・創業の推進事業について

新潟県内には、民間のスタートアップ拠点が8カ所(9拠点)あります。

スタートアップ拠点では、コワーキングスペースやレンタルオフィスなどのワークスペースの他に、起業・創業・支援者の方々が交流できる場を提供しています。セミナー・ピッチ等のイベントの開催や、メンターによる相談対応・伴走支援も行っています。

新潟県内にある民間スタートアップ拠点
・「taneCREATIVE」(佐渡市)
・「HARDOFF Startup Shibata」(新発田市)
・「SN@P(Startup Niigata at PLAKA)」(新潟市中央区)
・「MGNET」(燕市)
・「CLIP長岡」(長岡市)
・「asto(Art Scape of Tokamachi)」(十日町)
・「FURUSATTO」(上越市)
・「だんろの家」「湯沢きら星BASE」(湯沢町)

民間スタートアップ拠点の連携先

民間スタートアップ拠点では、4つの外部支援拠点と連携しており、様々な支援を受けることができます。4つの外部支援拠点とは、①公的機関、②先輩起業家、③県外産業支援施設、④大学・高等専門学校です。各支援先のサポート内容は下記の通りです。

4つの連携で起業家予備軍をサポート

4つの連携
公的機関との連携(NICO・NVC・地域金融機関・自治体等)
 支援内容:支援施策の活用で資金面等をサポート

先輩起業家等との連携(NVA・NINNO入居起業)
 支援内容:先輩起業家によるメンタリング

県外産業支援施設と連携(渋谷QWS・CIC東京)
 支援内容:県外との交流によって地域課題解決プロジェクト等を推進

大学・高専との連携(新潟大学伊藤ゼミ・長岡高専等)
 支援内容:起業家教育、インターンプログラム、ビジネスコンテスト等    


ーー官民連携にはどんな変化がありましたか?
田中:トップの意向により、官民が連携したサポートが可能になりました。それまでスタートアップ支援に関しては行政の運営するにいがた産業創造機構(NICO)単体だったところが、民間スタートアップ拠点も連携してサポートをすることが可能になったんです。

そのおかげで支援の幅が重層的になりました。例えば、「県」が支援可能な補助金等の資金面だけでなく、先輩起業家からのメンタリングや交流などメンタル面でのサポートも可能になった点が一番大きな変化です。

ーー民間が行政と連携するメリットはどんな点がありますか?
山本:民間の良さはやはり、フットワークの軽さです。良い人がいれば「みんなで集まって応援しよう!」という流れになり、スピーディーに支援の体制が構築されていきます。しかし親身になって話を聞くことができ、立ち上げのスピード感はある一方で、みんな自分達の会社の経営も並行して行うため継続性や安定性という点には課題が残ります。

そこに行政が入ることで、連携しながら継続的で安定したサポートができている点は、他県にはあまり例がない強みだと感じます。

NVAが開催したピッチイベント▼

起業・創業を後押しする新潟県

ーー支援する側から見て、新潟県が強いのはどんな点だとお考えですか?

田中:NVAといった経営者・起業家のコミュニティ形成が進み、官民連携の民間スタートアップ拠点が8箇所もある地域は珍しいと思います。
県土が広い新潟の各地で、起業を志す人に対しタイムリーかつニーズに応じたを支援体制ができていることは、起業への一歩を踏み出しやすいひとつのメリットだと思います。

官民で一貫したサポートを起業前から起業後まで一貫して受けることができ、その体制がしっかりと仕組み化されています。行政が出過ぎずとも、先輩経営者たちが率先して起業家を支援していく仕組みが整ってるのは新潟ならではですね。J-Startup NIIGATAが発足したことも、その一例です。

J-Startup NIIGATA

J-Startup NIIGATAとは、地域に根ざしたイノベーティブなスタートアップ企業を、新潟県と関東経済産業局等が選定し、公的機関と民間企業が連携して集中的に支援することで、選定企業の飛躍的な成長と、新潟のスタートアップエコシステムの強化を目指す取り組みです。

選定企業は、将来性が見込まれるIT 関連の企業が中心で、上場を目指す企業も多いのが特徴です。新潟の起業・創業に対する新陳代謝が上がっていくことが期待されています。

J-Startupについての詳しい記事▼

ーー新潟の立地や県民性におけるメリットはありますか?

山本:新潟県は立地面でも性格面でも標準的で、テストマーケティングがしやすい地域だと感じます。

また、真面目さと粘り強さを持つ県民性もあります。事業は決してうまくいくことばかりではないですが、そんな時でもついてきてくれるようなマインドを持つ社員が多いです。

山本さんが考える新発田モデルとは

新潟ベンチャー協会(通称:NVA)の代表理事。そして株式会社ハードオフコーポレーションの代表取締役社長も務める山本太郎さん。ハードオフは新発田に本社があるから今があると語ります。

新発田愛を語る山本太郎さん

株式会社ハードオフコーポレーション
1972年設立、本社は新潟県新発田市
県内に37社ある上場企業の一つで、日本全国そしてグローバルに事業展開する大企業。

ーーハードオフは本社が新発田だったからこそ成功したのでしょうか?

山本:「新発田で成功したら大体上手くいく」と考えています。それは、ハードオフが人口およそ10万人という決して大きくない普通の市から、上場企業にまで成長し、グローバル展開まで成功できた事例があるからです。このモデルケースは全国に通用すると考えています。

ーー起業を志す人に大切にしてほしいことはなんだと考えていますか?

山本:やはり「理念経営」だと考えています。起業を考える方と話していると、どうしてもビジネスプランやマネタイズ面を重視しがちだと感じます。しかし、いずれ上場するような持続的な経営をするには、社会から必要とされることが一番肝要です。そのためにも、まずは理念を大切にして会社としての社会的な存在意義を固めることが非常に重要だと考えています。

起業を志す人に大切にしてほしい「理念経営」

ハードオフが大切にする経営理念
①社会のためになるか
②お客様のためになるか
③社員・スタッフのためになるか
④会社のためになるか

ーーなぜ理念経営を大切にしているんですか?

山本:企業としてのあり方や事業内容を決めるのが経営理念です。ハードオフでは、まずはじめに「社会のためになるか」の問いかけを行います。

これは、新発田に本社を置く企業として「社会のため・地域貢献のために、まずは地元新発田の経済を活発化することが第一だ」と考えたからです。そうすることで、地域や社会から必要とされる企業になり、4つ目の経営理念である「会社のためになるか」という部分に辿り着けるんです。

また現在、阿賀野川以北の地域には上場企業が少ないです。そんな現状を打破し「ハードオフのように上場する会社、もしくは同等の規模の会社を増やすことで、地元を盛り上げたい」という想いから、新発田に「HARDOFF Startup Shibata(通称:HSS)」というスタートアップ拠点の立ち上げも行っています。


ーー起業を志す人に大切にしてほしいのはやはり「理念経営」なんですね。

山本:そうですね。社会から必要とされる会社になるために、まずは企業理念や文化についてもう一度、見直してみてほしいです。

起業者から見る新潟県の現状

オンライン起業コミュニティSN@P サロンに登録者は計257名、そのうち起業家予備軍は180名。7割以上が学生です(2022年3月現在)。下の図にある実際の起業者数を見てみると、順調に数が増えていることがわかります。

スタートアップ拠点からの起業者数は着々と増えている

官民で連携したスタートアップ支援の今後

ーーこれからの新潟県が目指す姿を教えてください。

田中:大きく2つあります。①起業家予備軍を生み出すこと。②今ある企業により成長してもらい、上場するなどの成功事例を増やすことです。この両輪を大切にしていきたいです。

①起業家・起業準備者の発掘と②育成支援者の増加を、両輪で強化していく新潟県
①起業家予備軍を生み出すこと。②今ある企業により成長してもらい三年前、転勤で新潟に移住した田中さん
首都圏出身であるため、
新潟はふるさとのように愛着を感じているという


今後も、県として支援のアップデートを続けます。例えば県内の上場企業など理解ある企業を巻き込んだり、首都圏のスタートアップ拠点であるCIC Tokyo(ケンブリッジ・イノベーション・センター東京)J startup との連携を深めたりすることで、支援体制を強化していきたいと考えています。

また、他の地方とも関わることで、新潟への企業誘致や投資家も巻き込むような動きも推進していきたいですね。


ーー最後に、今後の山本さんの展望について教えてください。

山本:NVAに関して言えば、他県に留まらず、今後はもっとグローバルに連携していきたいです。まだ具体的に考えられてはいませんが、巻き込めていない観光系の企業や、新潟発で世界に挑戦している企業とタッグを組み、新潟県を盛り上げていきたいです。


新潟県ITイノベーション拠点施設(NINNO)内にあるシステム開発拠点
「ハードオフ未来ラボ」

個人的な意見になってしまいますが、新潟県は起業への支援体制が手厚く、起業を志す人は早い段階からサポートを受けることができます。ですが、そこに頼りすぎるのではなく、自分から行動して広い世界を見ることが大切です。ビジネスプランやマネタイズ面だけではなく、企業理念をしっかり固めて、軸がぶれないように自走する力をつけてほしいです。


終わりに

今回はお忙しい中、新潟県創業・イノベーション推進課の田中健人課長、株式会社ハードオフコーポレーション代表取締役社長の山本太郎さん、インタビューにご協力いただき誠にありがとうございました。

新潟の過去から現在の起業創業についての動きを官民それぞれの視点から考えることができ、支援体制からもわかる新潟の起業創業支援への熱を感じることができました。

今後も、起業を志す人、また上場を目指す企業の挑戦や動向に注目です。






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